【達孝太の覚醒前夜㊦】制球力と〝リカバリー力〟向上でプロ初勝利 今季8勝も「ボールは全然だと思っている」
2024年10月3日のロッテ戦でプロ初勝利を飾り、ウイニングボールを手に新庄監督(左)と記念撮影する達
明白だった課題 制球難と少ない球種
日本ハムの達孝太投手(21)が高卒4年目の今季、8勝2敗、防御率2.09とブレークした。シーズン途中には「デビューから全て先発での連勝」を7まで伸ばし、NPB新記録を樹立。ソフトバンクとのCS(クライマックスシリーズ)ファイナルでは第1戦と、中4日で第6戦に先発し、好投を見せるなど、飛躍の年となった。
道新スポーツデジタルでは「達孝太の覚醒前夜」と題し、右腕をよく知るトレーニングジム「STEP GATE」の久下明範トレーナーの証言を元に、入団から3年目までにフォーカスを当て、躍進の理由に迫る。
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2024年11月17日、鎌ケ谷での秋季練習で笑顔を見せる達
達はプロ入り前から入念に体づくりを進めてきた。迎えたプロ3年目は、結果も求めにいく年と位置付けて臨んだ。トレーニングの狙い通り、球速は向上していったものの、「彼はコントロールがアバウトだったんですよ」(久下トレーナー)と、制球に難があった。
「変化球も、ストライクを取れるものがあんまりなかった。球種も真っすぐとフォークとカーブしか投げていなかったので。それだと的が絞られるので、コーチたちと話しながらいろいろな球種にチャレンジしていこうということになりました。その次のステップで、コントロールの向上がいるよね、という感じでやっていきました」(同)
飛躍のカギとなった股関節と体幹、そして休養
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制球力向上のため、特に意識した部位が、股関節と体幹だ。「例えば右バッターのアウトコースに投げる時は、より体をひねらないといけないんですよ。なので、股関節の内旋という可動域だったり、体幹の回旋という可動域がないと、強いボールを投げられない。そこを強調してトレーニングしていきました。それまで達は内旋の可動域が狭かったので、逆に右バッターのインコースや、左のアウトコースはボールが強かったですし、抜けたら全部そっちに行く選手でした。逆にも強い球を投げるなら、股関節、体幹の可動域、動きが大事だよと話をして、そのメニューはこれだから、これをやろうという感じで進めていきました」
制球力アップに励みながら、同時期にもう一つ取り組んでいたことがある。「(プロ)3年目はリカバリーですね。2年目に、がむしゃらにやってけがをしているので、リカバリーを意識しました。トレーニングを休んで、リカバリーに時間をかけた方が良い、という判断をできるようにしようと。その前から達が持っていた自律神経の測定器を、3年目は本格的に使って、副交感神経が下がっている時は、人間、出力を制御されていて、休まないといけない。それを基準にして、ウエートトレーニングをするのか、どういうトレーニングをするのか判断して、休むということも覚えるように。コンディショニング、大事だよねと。今までは追い込むことがメインだったのを、追い込んで、休むことが大事だと。休む大切さ、コンディショニングを学んだと思います」。休養を覚えた達は、一気に成長スピードを上げていった。
24年、鎌ケ谷でトレーニングする達
まだまだ発展途上の21歳
2軍戦で調子を上げると、最終盤の24年10月3日、ロッテ戦(ZOZOマリン)でプロ初勝利をマーク。これが、覚醒の合図だった。
3年間の〝準備期間〟を経て、今季は高卒4年目で8勝を挙げた。ただ、久下トレーナーに驚きはない。「今は結果だけは付いてきていますけど、僕はボールは全然だと思っているので。そこが、彼の強いところでもあります。今の球速帯で、今の投球術で抑えられているところが、彼の一番の武器だと思っているんです。球速もめちゃくちゃ速くはないですし、フォークはいいですけど、使える球種は多くはない中で、バッターとの駆け引きだったりで防御率を抑えているのは、取捨選択が上手なのかな」
24年10月3日、ロッテ戦でプロ初勝利を挙げた達
狙うはサイ・ヤング賞
基準は、世界トップの投手。現時点では全く満足していない。
「外国人選手によく打たれるじゃないですか。ハードヒットされている。向こうの選手たちは、(高い)身長にも慣れていますし、タイミングが合う。球速帯を今よりも5キロぐらいは速くしないとダメだと思いますし、そうじゃないと、サイ・ヤング賞、今年でいうとスキーンズとか、そういったところに届かない。達だって、サイ・ヤング賞を獲らないと満足しないと思いますよ」(同)

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