【月刊コンサドーレ12月号】浦上仁騎インタビュー「這い上がる覚悟。」《赤黒の肖像》
文=斉藤宏則 写真=溝口明日花
25日の発売前ですが、途中まで読めます
道新スポーツデジタルでは、毎月発行されている「月刊コンサドーレ」の記事の中から一部を抜粋し、発売に先がけて公開します。今回は11月25日に発売される12月号からDF浦上仁騎(29)のインタビュー「赤黒の肖像」から抜粋。記事の途中までですが、購入前の参考にしてください。
浦上仁騎が語る〝プロで生きる力〟
J3からプロキャリアをスタートさせ、J2で天皇杯優勝、そして今季途中から北海道コンサドーレ札幌へ。DF浦上仁騎は、常に「這い上がる」という言葉を胸に歩んできた。順風満帆ではなかった道のりの中で折れず、腐らず、前を向き続けてきた原動力とは。彼が語る、プロとして、人としての〝強さ〟の源に迫る。
J3から見えた景色、そして今
—J3からプロ選手のキャリアをスタートさせ、J2へのステップアップや天皇杯優勝なども含め、ここまで多くの出来事を経てきました。
常に「這い上がりたい」と思いながらサッカーに取り組んできました。そして、実際に這い上がれた時もあれば、逆もあったり。いろいろな経験をしてきました。「這い上がりたい」という気持ちはこれからも変わらずに持ち続けるでしょうし、この先、自分がどんな境遇に置かれても地に足を着けて上を目指しながら、ひたむきに戦っていきます。
—J2からJ3への降格を経験したシーズンもありました。山あり谷ありという中で、気持ちが折れそうになったことはありませんでしたか。
そうですねえ…。プロ入り前は大宮のUー18からトップチームへの昇格がかなわず大学に進学したわけですが、まずはその時の心境を例にお話しします。
当然、「悔しい」だとか、それに類する気持ちはありました。でも、今でもそうですが、僕は割と自分のことを客観視できるタイプだと思っているんです。ですので、当時もトップチームに昇格できる力が自分にはないことを前もって認識していて、そこで落ち込んだり、気持ちが折れるといったことはありませんでしたね。そして、それはプロ入り後も同様で、自分の実力や立ち位置を常にある程度、客観的に把握しながら戦ってきたつもりなので、くじけた経験はほとんどなかったと思います。
もちろん、日々の感情の起伏はありますよ。例えば、練習でいいパフォーマンスができているとの自信があっても、他の選手がメンバーに選ばれて自分が外れた時には「なんなんだよ!」とか「やってらんねえよ!」と心の中で叫ぶこともありましたし。

—プロのキャリアは東洋大からJ3の長野に加入したところから始まりました。
自分としてはプロになる以前から、「できるだけ上のカテゴリーでプレーしたい」という目標がありました。できればJ1もしくはJ2で、と。ですが、実際にはなかなかプロから声はかからず、大学の監督のツテで練習参加をさせてもらい、本当に最後の最後で長野からオファーをいただいてプロのキャリアがスタートしました。
J1やJ2を目指してはいたものの、J3からのスタート。環境的にも難しい部分は少なからずありました。でも僕としては、カテゴリーを問わずプロの世界にさえとにかく入ってしまえば、自分はそこから這い上がっていける自信がありました。
日々の積み重ねがすべて
—そして、歳月を経て実際に今季、J1昇格へのキーマンとしてコンサドーレに途中加入。「這い上がっていける」というマインドの原動力は何でしょうか
近道はない。そのことを理解していたことが原動力かもしれません。サッカーに限らずなんでもそうだと思いますが、結局はコツコツとやり続けるしかないんです。今年でプロ生活7年目を迎え、これまで多くの選手を間近で見てきました。「この選手はもっと上に行くだろうな」とか「たぶん、この選手はここから先はあまり伸びないだろうな…」といったことが、生意気ながらなんとなく分かってきたような気がしています。
その分岐点は、結局はおのおのが目標に向かって努力し続けられるかどうか。幸いにも自分は目指しているものを信じ続け、1日1日を大切に過ごすことができました。僕は才能に恵まれているわけではありませんが、目標に向かってブレずにやり続けるという意志だけは持っている。その信念が現在につながっていると思います。

—やり続けられるということ自体、一つの才能だと思いますが。
うーん、どうなんですかね…。そこはイマイチ自分でも分かりません。でも、一つだけ言えるのは、こうして今日まで地道にやってきた僕も、気持ちが腐ってしまいそうな出来事は、いくらでもありました。「今日の練習なんてもう、どうでもいいや」と思ってしまうような日が。でも、たぶんこれもサッカーに限らないと思いますが、うまくいっている時は誰でも頑張れるんですよ。本当に大事なのは、調子が悪い時や物事がうまくいかない時に踏ん張れるかどうか。そういう時は誰しも本当に苦しく、「もういいや」と投げ出してしまいそうになる。でも、そんな時でもしっかり自分のケツを叩けるか。自分を奮い立たせることができるか。それによって道は大きく変わる。僕には「自分自身と戦う」という部分を常に大切にして、今日までやってきたという自負があります。
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■プロフィール 浦上 仁騎(うらかみ・にき) 1996年11月11日生まれ、茨城県出身。身長178cm、体重76kg。大宮アルディージャ(現RB大宮アルディージャ)ユースを経て、東洋大では主将を務め、堅実な守備とリーダーシップでチームを支えた。2019年にAC長野パルセイロでプロキャリアをスタート。21年にヴァンフォーレ甲府へ移籍し、22年天皇杯で優勝を経験した。23年からは大宮で主力として活躍し、25年6月に札幌へ完全移籍。対人の強さとビルドアップの安定感に定評があり、試合の流れを読む判断力にも優れるセンターバック。自身の座右の銘に「雑草魂」を掲げ、泥臭くも着実にステップアップを重ねてきた努力型プレーヤーだ。