【月刊コンサドーレ10月号】柴田慎吾監督インタビュー「勝つために攻撃する」《赤黒の肖像》
文=斉藤宏則 写真=溝口明日花

10月号の発売前に〝ちょい読み〟
道新スポーツデジタルでは、毎月発行されている「月刊コンサドーレ」の記事の中から一部を抜粋し、発売に先がけて公開します。今回は9月25日に発売される10月号から柴田慎吾監督(40)のインタビュー「赤黒の肖像」を抜粋。記事の途中までですが、ご購入する際の参考となれば幸いです。
新監督が語るコンサドーレの戦い方
「責任の重さと、これ以上ない幸せを同時に感じている」。そう語るのは、北海道コンサドーレ札幌を率いる柴田慎吾監督。U-18監督からの突然の抜てきに喜びと戸惑いを感じながら、サポーターの後押しを受けて日々チャレンジしている。選手としては3年でピッチを去った男が、いま再びクラブの最前線に立った心境と「攻撃的サッカー」に込める覚悟に迫った。
就任の驚きと覚悟、そしてホームの力
―就任から数試合を経て、コンサドーレのトップチーム監督としての現在の心境を改めて聞かせてください。
トップチームの監督という立場になってみて、本当に多くの方々に応援していただいている、期待していただいている、そうした責任の重い立場に自分が置かれていることを改めて実感しています。もちろん、それはある程度予想していましたが、実際に就任してみて、「その立場になった者にしか分からない大変さというものがあるな…」と。
すみません。もっと具体的にお伝えしたいと思いながらも、こればかりはどうやっても違う言葉で表現することができなくて(笑)。そうした大変さを身に染みて感じているところです。
ただし、「これほど幸せな立場はない」という喜びも同時にかみ締めていますから、両極端な感情が自分の中で揺れ動いています。
―生活のリズムに変化はありましたか。
大きく変わりました。トップチームは午前中に練習しますが、U-18は夜でしたので。
U-18では練習を終えた後に一晩寝て、翌朝に頭がフレッシュになった状態で、その日の練習メニューを考えていました。ですが、現在は午前中に練習を終え、その日のうちに翌日のメニューを考えなければいけません。練習自体もそうですが、練習メニューを考えることも非常にエネルギーを使いますので、そのルーティンや負荷の違いにフィットしていくのは結構、大変でしたね。就任して2週目あたりからは、なんとか慣れてきましたけれど。
―トップチームの監督就任の打診が最初に届いた時の率直な感想を聞かせてください。
大前提として、Jクラブでトップチームの監督ができるJFA Proの指導者ライセンスを取得した時点から「いつかは自分もコンサドーレのトップチームの監督に」という気持ちがありました。また、その目標にチャレンジできること自体、とても光栄なことだと感じました。
とは言っても、現実問題として僕は今季からU-18監督に就任したばかりでしたし、自分の心の中ではU-18監督として指導を重ねていく中で、縁があればいつかその日が来るのかな…と。指導者としての段階を踏んでトップチームへ、という理想像を思い描いていましたので、今季途中に打診をもらったことについては、とても驚きました。もちろん、Proライセンスを取得している以上、心の準備がゼロだったわけではありませんから、気持ちは準備万端な部分が半分、驚きが半分といったところですかね。
―そして就任し、かつて選手としてプレーしたホームグラウンドで監督として戦った心境はいかがでしたか。
新たな体験でしたので、緊張しました。ですが、振り返ってみると就任初戦(ホーム秋田戦)よりも、その次のアウェー甲府戦の方が、2戦目だったにも関わらず緊張したんです。
きっと、それだけホームの雰囲気が自分にとって慣れ親しんだものであると同時に、サポーターの方々が作り上げてくれた雰囲気が緊張を取り除いてくれたと言いますか、それを上回るパワーを与えてくれたのだと思います。もちろん、甲府とのアウェー戦でもサポーターの方々からはたくさんのパワーをいただき、心から感謝しています。
それくらいコンサドーレにとってホーム戦というのは、まるで自分の家のように、持てる力をそのまま表現できる雰囲気を持っていると思います。
〝ドーハの悲劇〟が引き金に
―そんな柴田監督ですが、プロ選手生活はわずか3年で終え、すぐに指導者の道へ進まれています。この早期の転身は意図的だったのでしょうか。
いえ、まったくそんなことはありません。できるならば、もっと長く選手としてプレーしたかったですから。単純に、選手としてダメだったということですね。
当時は、うまくいかないことがあると他責にしてしまっていた。そうした自分の甘さ、弱さというものがプロ選手生活を3年で終える要因だったと思っています。
―一方で、指導者としてのキャリアを早くスタートさせたことは、結果として大きかったのではないでしょうか。
決して「指導者になろう」と思い至って指導者になったわけではありません。プロ選手を続けることができなくなった中で、色々な縁があったり、コンサドーレにもお世話になって、たまたま指導者としてのキャリアが始まったというのが正直なところです。とはいえ、指導者として早くスタートできたことが結果としてプラスになっていることは間違いないですね。
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■プロフィール 柴田 慎吾(しばた・しんご) 1985年7月13日生まれ、東京都出身。浜松大在学中の2008年にコンサドーレ札幌へ加入し、J1リーグで14試合に出場して3得点を記録。09年も札幌でプレーした後、10年にザスパ草津(現ザスパ群馬)へ移籍し、同年限りで現役を引退した。引退後は指導者の道へ進み、11年よりコンサドーレ札幌のアカデミーでコーチとして活動を開始。ジュニアからU-15、U-18まで幅広い世代の育成に携わり、クラブの次世代を担う選手を数多く育ててきた。25年にはU-18監督を務め、同年8月、トップチームの監督に就任。現役時代の経験と育成年代で培った指導力をもとに、クラブの未来を担う指揮官としてチームを率いる。