【月刊コンサドーレ8月号】マリオ セルジオ特集「北海道に吹く熱きブラジルの風」《赤黒の肖像》
文=斉藤宏則 写真=大橋泰之、江本秀幸

25日の発売前にチラッとお見せします
道新スポーツデジタルでは、毎月発行されている「月刊コンサドーレ」の記事の中から一部を抜粋し、発売に先がけて公開します。今回は7月25日に発売される8月号からFWマリオ セルジオ(29)の特集「赤黒の肖像」を抜粋。インタビューの途中までですが、購入前の参考になれば幸いです。
夢の先へ
幼い頃からサッカーボールとともに育ち、ブラジル北部の穏やかな街からプロの世界へ。10代で抱いた「日本でプレーする」という夢を、29歳でついにかなえた男がいる。北海道コンサドーレ札幌の新戦力、マリオ セルジオ。所属クラブ会長への直談判という執念でつかんだ移籍の舞台裏と、夢の続きにある未来を聞いた。
生まれた時からボールとともに
―来日してまだ1カ月半ほどですが、札幌での新生活はいかがですか。
すごく気に入っています。街並みがとてもきれいですし、自然の多い場所もあれば、大きな建物がいくつも並んでいるエリアもある。交通網も発達していると聞いていますし、不便さはまったく感じていません。本当に素晴らしい環境で生活できている。そのように感じています。
―マリオ選手の故郷は、どのような場所ですか。
ブラジル北部のバイーア州にあるカンデイアスという穏やかな街で私は生まれ、育ちました。ブラジルの地方都市であり、海があることで知られています。そこで暮らす人々は落ち着いた性格の人が多く、経済的には若干、貧しい街と評せるでしょう。ただし、その中で私が育った家庭は父がトラックの運転手、母が教師をしており、食べるものに困るといった状況ではなく、幸せに暮らすことができていました。
―ブラジル人選手には愚問かと思いますが、何歳頃からサッカーをしていましたか。
おそらく、生まれた直後からプレーしていたのではないでしょうか(笑)。気がついたらサッカーに熱中していましたから、記憶にありません。私に限らずブラジル国内の子供は皆、同様だと思いますよ。そうして多くの競争を経ていく中で幸い、私はプロの選手になることができて、現在に至っています。赤ちゃんの時から今日まで、常にサッカーボールとともに過ごしてきました。
日本への憧れ、10年越しの挑戦
―さすがブラジルという感じですね。マリオ選手はコンサドーレ加入時に「ブラジル国外でプレーするのが夢だった」と話していました。その背景はどういったものだったのですか。
加入時には「国外」という表現をしましたが、実際のところ私の心の中では日本への関心が最も強かったです。
私が17、8歳の頃だったと思います。日本でプレーしたことがある年上の友人たちから話を聞く機会があったのですが、とにかくみんな素晴らしい思い出を語ってくれました。そのため、私の中で「いつか日本でプレーしてみたい」「日本で暮らしてみたい」という思いが高まっていきました。とにかく日本に対する良い印象ばかりが膨らんでいったのです。こうして国外、とりわけ日本でプレーすることが私の夢となっていきました。
その後も、私の幼なじみであるユーリ ララ選手(横浜FC)をはじめ、マテウス カストロ選手(名古屋グランパス)、エウベル選手(横浜F・マリノス)、レオ セアラ選手(鹿島アントラーズ)といった親友たちが日本へと移籍し、彼らから頻繁に情報を得ることで、さらに私の夢は大きく膨らみ続けました。
―10代で抱いた夢が29歳にしてかなったわけですが、その間に諦めそうにはならなかったのでしょうか。
諦める必要はありませんでした。なぜならば、その時に所属しているチームで目の前の試合に全力を注ぐというのは、日本に行くという夢があろうとなかろうと、プロとして果たさなければいけないことです。やるべきことは、いつだって変わりません。活躍するために全力を尽くすのみです。
確かに夢を抱いてから10年を経過しても、私には日本から移籍の話は来ませんでした。その間、アジアの他国から興味を持たれたことはありました。ですが、それは気持ちやプレーの力を緩める理由にはなりません。あらゆる出来事は、全力でプレーをした後からついてくるものですし。
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■プロフィール マリオ セルジオ 1995年9月2日生まれ、ブラジル出身。身長181cm、体重75kg。ブラジル国内では、ECバイーアをはじめ、ボタフォゴPB、レモ、フルミネンセPI、ミラソウFCなど、複数のクラブを渡り歩き、近年はシャペコエンセでプレー。2024シーズンはブラジル2部リーグで30試合7得点を記録するなど、ポストプレーやゴール前での嗅覚に優れ、存在感を示していた。25年6月、北海道コンサドーレ札幌へ完全移籍。札幌移籍直後には天皇杯・大分戦で公式戦デビューを果たし、6月28日ホーム熊本戦では鮮やかなボレーシュートを放ち、来日初ゴールを決めている。