《岩本勉のガン流F論》窮地で見せたエースの危機回避能力 その姿で思い出したプロ初勝利
■パ・リーグ24回戦 日本ハム2-3楽天(9月17日、楽天モバイルパーク宮城)
勝負どころでのコントロールミス
これこそが試練だ。斎藤友貴哉が延長十一回にサヨナラ打を食らった。スプリットが高めに行ってしまった。高めに行った落ちる球はストレートに見えるほど、落ちがない。これをボイトは見逃してくれなかった。
160キロの直球を持っていても、打者との駆け引きの中で痛打されてしまう時もある。「たら」、「れば」は禁物ではあるが、あのスプリットが真ん中低めに行っていたら、バットが空を切っていた可能性は高い。
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リバウンドメンタリティーに期待
たった1本のタイムリーがチームの負けに直結する。そんな立場がクローザー。その難しさを再認識したことだろう。決め球のスプリット。どこにターゲットを置くんですか? あらためて考え直す機会にもなった。斎藤のリバウンドメンタリティーに期待したい。
これまで何度もチームを救ってきた。柳川がいない今、八回=田中、九回=斎藤は変わらない。変えてはいけない。斎藤に言いたい。「今、クローザーはあなたしかいない!」「次も頼むよ!」
アクシデントを逆手に取ったピッチング
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さて、伊藤。15勝目を手にすることはできなかった。ただ、彼の危機回避能力の高さを目の当たりにした。四回、先頭・黒川の打球が左つま先付近に直撃した。この回、2点目を失ったが、五、六、七回は無失点に封じた。
アクシデントを生かすテクニック、強さを有している。左足を痛めている右ピッチャーは比重が右に寄ってしまう。この右比重。メリットもある。体をうまく折り畳むことができ、腕の巻き付きもスムーズになる。すると、高めのストレートに、よりスピンが加わる。腕の巻き付きが奏功し、曲がり球にもキレが出るのだ。意識してか、はたまた無意識か。五回以降、要所でスピンの利いた高めの直球を駆使していた。
左足痛を隠して上がったマウンドで
私にも経験がある。1995年7月14日の西武戦(東京ドーム)。1失点完投でプロ初勝利を飾ることができた。この試合の前日、実は左足を捻挫してしまった。そんなことは口が裂けても言えない。いや、言わない。プロ6年目で巡ってきた2度目の先発機会。ここで勝てなかったら後がないと覚悟を持ってマウンドに上がっていた。痛みに耐えながらの投球だったのだが、直球は走り、カーブはキレた。
大したもんや!伊藤。これぞエース。そんな姿に昔の記憶がよみがえった。