《岩本勉のガン流F論》福島にとって思い出深い試合になったはず 記憶に残る、下柳さんの「焼き肉おごれよ」
■パ・リーグ23回戦 楽天1-0日本ハム(8月31日、エスコンフィールド北海道)
誰の責任でもない最後のダブルプレー
勝利の女神が楽天にほほ笑んだ。それだけのことだ。最後は仕方のないプレーだった。0-1の延長十一回1死二、三塁で五十幡の当たりは二直。三走の矢沢が戻れなかった。五十幡の当たりは鋭く地面スレスレだった。前進守備であの打球。ライナーバックできる走者などいないだろう。誰の責任でもない。
【ファイターズの最新記事はコチラ】ゃ
どんなプレーにも必要な反省
ただ、矢沢に言いたい。「あれじあ、誰も戻れないよ」で終わらせてもらいたくない。責任はない。その上で言う。「ほかに手段はなかったのだろうか」。本人だけは、そう反省し、頭を働かせてほしい。それが自身の成長につながっていく。
見事だった福島の投球 たった1つの反省点は…
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
さて、先発の福島。申し分ない投球だった。立ち上がりから、飛ばしに飛ばした。その分、球数以上の疲れがのしかかった。80球前後から、左打者へのライン出し(コース)が甘くなっていた。それでもプレーボールからカロリーを消費する試合で、七回途中まで無失点ピッチングを見せたのは立派だ。自分を褒めてもらいたい。
たった1つ、反省点を挙げるならば、投球後の守備だろう。七回のマウンド、渡辺佳の打球を取り損ね、降板したのだから。
一人の野球選手としても大きく成長
その七回だ。2死一、三塁でリリーフにマウンドを託した。斎藤がピンチをしのぎ、その後もリリーフ陣が踏ん張った。福島はブルペン陣への感謝の思いを、より強くしたことだろう。そういう意味では、彼にとって非常に意味のある試合だった。
人の心の痛みを知る。役割の違う人間の心を思いやる。そういう気持ちが芽生えた時にこそ、一人の野球選手としても大きく成長を遂げる。
八回無死満塁でリリーフ登板した下柳
現役時代、ほとんど先発としてプレーした私もブルペン陣への思い入れは強い。いや、今でも彼らに足を向けて寝ることはできない。頭に浮かぶのは1998年6月28日のオリックス戦(神戸)。七回まで無失点に抑えて迎えた八回、イチローらに3連打を食らい、無死満塁とされて降板した。ここでマウンドに上がった下柳剛さんは2連続三振と中飛でしのいでくれた。そのおかげでシーズン7勝目を挙げることができた。
試合後、「ありがとうございます」と頭を下げた私に一言。「今度、焼き肉おごれよ」
リリーバーとの思い出は宝物
またある時、完投を逃し、ふてくされていた私に島崎毅さんはカツを入れてくれた。「ガン、絶対に抑えてやるから。ふてくされるな!」と。150球以上を投げ、完投した時には逆に「ありがとう」と言葉をかけてくれた。ほかにも芝草宇宙さん、金石昭人さん。偉大なリリーバーたちとの間には忘れられないエピソードが多数、存在する。私にとっては宝物だ。
福島にとっても、この日の試合が思い出深いものになったに違いない。