アマ野球
2022/08/30 23:55

北海高出身の仙台大・辻本 侍JAPAN大学代表でプロ入りアピールだ

社会人で活躍する兄・勇樹さん(左)から刺激を受ける仙台大の辻本倫太郎。プロへのアピールを誓った

31日「Uー18壮行試合 高校日本代表対大学日本代表」開催

 WBSC U―18ベースボールワールドカップへ向けた「侍ジャパン Uー18壮行試合 高校日本代表対大学日本代表」が31日、千葉・ZOZOマリンスタジアムで行われる。道内関係では、仙台大・辻本倫太郎内野手(3年、北海高出)と、専大・菊地吏玖投手(4年、札大谷高出)が選出された。中でも辻本は、7月にオランダで行われたハーレムベースボールウイークで、7試合中5試合に三塁で先発出場し、打率3割8厘。パンチ力のある打撃と自慢のフィールディングを武器に、将来のプロ入りへアピールする。

中学時代から「ジャパンに入ることが目標だった」

 7月に侍デビューを果たした辻本が、Uー18の壮行試合でも存在感を示す。8月中旬に4日間、母校の練習に参加。シートノックでは、1人だけ動きが飛び抜けていた。同期のメンバーとも再会しリフレッシュ。壮行試合へ向け、「友達も親も来てくれます。『自分らしく明るく全力で常にやる』のが持ち味。どういう結果であろうと、その姿勢を見せていきたい」と〝主役〟の座を奪う気満々だ。

 6月に野球人生で初めて世代別の日本代表に選出された。「中学の時から、ジャパンに入ることが野球選手としての目標だった。選んでいただけたのはうれしい。同時に大きなプレッシャーの中で野球をすることになるので、それも楽しみ」と、期待に胸を膨らませてオランダへ渡った。国内トップクラスの大学生が集まる中で、辻本は3年生ながら5試合に先発し、13打数4安打3打点。「守備のフットワークや、ボールを投げる強さ、そういうところはあのレベルの中でも上に立てる」と大きな自信をつかんで帰国した。

 現地では、思いもよらない歓迎を受けた。ベンチスタートの試合で「エルボーガードをコーチャーに取りに行くのに全力ダッシュしていたら、オランダの観客から褒めてもらって、『Most Popular Player』賞をもらった。試合にでていない選手がもらうのは、この大会で初めてらしくて。それはすごいいい思い出です」と、フィールド外での姿が異国の野球ファンの心をつかんだ。

課題はフィジカル強化「もう少し上を目指せる」

 一方、課題も浮き彫りになった。昨秋、強豪・東北福祉大との優勝争いを制して明治神宮大会に初出場。「打球の速さの違いを痛感した。アジリティやフットワークの部分を落とさないようにトレーニングしながら、この一冬で(体重を)8キロ増やしました」と65キロから73キロへ。さらに今は75キロまで増量。以前は、肩を痛めることが多かったが、「今年はスローイングがすごく落ち着いた。そこが一番大きい。けがをしない体が身についた」と、春季リーグでは初のベストナインも獲得した。それでも、日本代表クラスの中に交じると、物足りなさを感じたという。「単純に体の大きさ、フィジカル。筋肉量とか、体の大きさが違った。単純なパワーの部分では、もう少し上を目指せる」と、さらなる体づくりに取り組む。

 オランダ遠征前、仙台大の森本吉謙監督から「人としての日本代表にまずはなってほしい」と、諭された辻本。「てんぐになったりせず、自分の実力を自分で理解して、周りにどう見られるかとか、周りがどう視線を送っているかとか、考えながら生活していければ」。これからは、日本代表にふさわしい行動にも心を配る。

兄の背中を追いかけ成長

 6月に社会人の日本代表合宿に参加した兄・勇樹さん(26、NTT西日本、北海高出)と同じ道をたどってきた。勇樹さんは北海高1年までは遊撃手で、2年から捕手。3年夏の札幌支部初戦で札南高に敗退した。同期には現在、日本ハムの佐藤龍世内野手(25)、西武・戸川大輔外野手(26)らがおり選手層も厚かった。当時、スタンドで応援した辻本は、「甲子園に行けると思っていた。北海高校は甲子園が普通だと思っていた。ああいう形で負けてしまって、簡単じゃないんだなと。お兄ちゃんから『お母さんのこと、おまえが甲子園に連れて行ってやってくれ』って言われたことが忘れられなくて、そこから北海高校に入りたいと野球を頑張りました」。兄の悔しさを晴らすために名門へ進んだ。

 1年夏の甲子園はスタンドで応援、同年秋からベンチ入りした。2年時には副主将を任され、不動の遊撃手として秋からは主将も務めた。自身は甲子園でプレーすることはかなわなかったが、卒業後は兄と同じ仙台大へと進学した。

 入学直前、仙台大の遠征に帯同し、10試合にフル出場。30打席中安打は3本程度。いきなり壁にぶち当たった。「打撃理論とか、打ち方とか、(北海の)平川先生に教えてもらった事と、木製バットになって、初めて感じたモノを組み合わせて、自分で考えながら、めちゃめちゃ練習をやりましたね。北海って特異な打ち方なんです。バットでボールを切る様に、ゴロ、ライナー系を意識する。でも木製だと、芯にまず当てないと話にならない。そこで、どうアジャストできるか。バットの出し方だったり、軌道だったりを考えた。いまは少しだけフライを打つつもりで打席に入ってます。それで長打も出るようになった」と、試行錯誤しながら貪欲に成長へつなげた。

 今も頻繁に兄と連絡を取りあう。「お互いに高め合っている存在。僕がジャパンの選考に選ばれただけで『すごいね』って喜んでくれた。代表に選ばれた時は『おまえ、マジか-』って連絡をくれた。お兄ちゃんに認めてもらうのが、一つの目標なんで、そこに近づけているのは、すごいうれしい」。兄弟同時にカテゴリー別の日本代表。これからもハイレベルな環境で切磋琢磨する。

北海高出身者の活躍が刺激に

 来秋、野手として仙台大初となる支配下でのプロ入りを目指す。昨秋のドラフト会議では、北海高の2学年上の鈴木大和外野手(23、巨人育成1位―北海学園大)、川村友斗外野手(23、ソフトバンク育成2位―仙台大)、さらに2学年下の木村大成投手(18、ソフトバンク3位)、大津綾也捕手(19、巨人育成10位)が同時に指名を受けた。「上の先輩は憧れの存在で、2学年下にも僕らの代から助けてくれた木村がプロに行った。正直、下も上も遠い存在だったんですけど、僕も大学でたくさん成長して、そういう部分を狙える選手になってきた。負けていられない」。国内最高峰の舞台でプレーする決意はさらに強くなった。

 目標に掲げる選手はソフトバンク・今宮健太内野手(31)。「小柄でパンチがあって、肩が強い。まだまだ及ばないですけど、目標としている選手。自分も将来は、ゴールデングラブ賞をとれるような選手になりたい」と思い描く。

 9月3日には、仙台六大学の秋季リーグ戦も開幕する。「守備や攻撃、走塁、声。勝利に導けるような選手でありたい。タイトル獲得へ努力するんですけど、やっぱりいい場面でヒット、長打を打つ、ホームランを打つ。勝負強いって言われるような選手になりたい」。東北の地で成長を遂げる辻本の挑戦は、まだこれからだ。

■プロフィール
  辻本倫太郎(つじもと・りんたろう) 2001年8月11日、札幌市出身。兄・勇樹さん(26)の影響で、東札幌小3年の時に東札幌ジャイアンツに入る。同6年でファイターズジュニアに選出され、NPB12球団ジュニアトーナメントで3位。札日章中時代にプレーした札幌南リトルシニアでは2年秋の全道大会で優勝し、道選抜代表として「日台国際野球大会」に出場。翌春の全国選抜に出場した。北海高では、1年秋からベンチ入り。2年秋から主将を務めたが、甲子園出場はできなかった。仙台大では2年春のリーグ戦で「1番・遊撃」として出場。今春のリーグ戦では初めてベストナインを受賞。167センチ、75キロ。50メートル6秒2、遠投は100メートル。右投げ右打ち。好きな言葉は「一陽来復」。家族は両親と兄。

 

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