冬季スポーツ
2022/02/16 19:20

女子団体追い抜き 菜那 号泣の銀

セレモニー後も涙があふれ出してきた高木菜(右)と佐藤(左)を優しく抱擁する高木美(撮影・野沢俊介)

北京(中国)15日=島山知房

 スピードスケートの女子団体追い抜きが行われ、日本は決勝でカナダに敗れて銀メダル。高木美帆(27、日体大職、帯南商高出)、高木菜那(29、日本電産サンキョー―帯南商高)、佐藤綾乃(25、ANA、釧北陽高出)の平昌大会金メダルメンバーで挑んだが、2連覇を逃した。高木美は通算6個目のメダルを獲得し、夏冬の五輪を通じて日本女子単独最多となった。

残り60メートルの悲劇

 手が届きかけていた金メダル。会場に響いた悲鳴とともに、ゴール目前で色が銀メダルに変わった。

 序盤から日本がリードするも、徐々に差が詰まり、ゴールまであと半周で0・32秒差をつけていた。佐藤が「追い上げてきているんだなというのを察した」と振り返るように、猛追してくる相手の“足音”を感じながら最終コーナーに入った。

 残り約60メートル。わずかにリードを保っていたが、最後の直線を迎えようとしたところで悲劇は起こった。最後尾を滑っていた高木菜が、一つ前にいた佐藤を後方から押した瞬間にバランスを崩して転倒。五輪レコードを更新して歓喜に沸くカナダを横目に、高木菜がうつむきながら11秒遅れでゴールした。

 待ち受けていたまさかの結末。涙が止まらない姉に駆け寄り、真っ先に抱きしめた高木美は「かける言葉が見つからなくて、側に行くことしかできなかった。3人とも金メダルを獲れなかった悔しさは抱えている。転倒という形で終わってしまって評価は難しくなるけど、やってきたことに悔いはない」と、言葉を慎重に選びながら静かに語った。

 世界記録を連発し、W杯4戦4勝で臨んだ平昌大会とは違い、今季はW杯2着2回で未勝利。カナダは前回大会で2・90秒差をつけて圧勝した相手だったが、今季はW杯で全勝していた。追われる立場だった日本は、今季追う立場に変わっていた。

 五輪での王座奪還を目指した日本は、より速い方法を模索した。ロスを少なくするために先頭交代の回数を減らしてみたり、間隔を詰めて一つ前の選手を後方から押す「プッシュ作戦」、3人が手をつなぐ「手つなぎ作戦」など、あらゆる作戦を試した。それぞれに長所も短所もあったが、最終的には3度先頭を交代する4年前の作戦に原点回帰した。

 高木美はこの種目の前にすでに二つのメダルを獲得。佐藤は1500メートルでメダルまで0・1秒差の4位、高木菜も同種目で五輪初入賞を果たした。それぞれが地力を上げ、自信を持って臨んだ一戦だっただけに敗戦のショックは計り知れない。

 それでも、あす17日の1000メートルと19日のマススタートで、それぞれが悔しさを晴らす機会が残されている。高木美は「1000メートルは、長い五輪で挑戦する最後の種目になる。全部を出し切りたい」と、必死に気持ちを切り替えていた。

押切寄り添い支えた
 1回戦から決勝まで、不動の3人で3レースを戦った。4人の登録メンバーに名を連ねていた押切美沙紀(29、富士急―駒大苫小牧高)に出番は訪れず、リンクそばで3人を支えた。8位だった10日の5000メートル後、団体追い抜きに向けて「チームが勝つために自分ができることがあれば、100パーセント貢献したい」と話していた。3人とタッチを交わして氷上に送り出し、レース後は転倒した高木菜を抱きしめ、自身も涙を拭った。(共同)

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