日本ハムの井川伸久オーナーが語り尽くす 新庄監督のここを評価 メジャー挑戦支援の真意 今季の目標は「アレ」ではなく…
ファイターズは「新しいことをやる球団、チャレンジし続ける球団でありたい」と語る井川伸久オーナー
プロ野球の開幕を前に、北海道日本ハムファイターズの井川伸久オーナー(64、日本ハム社長)が、道新スポーツデジタルの単独インタビューに答えた。5年目を迎えた新庄剛志監督(54)の評価や監督人事の哲学、選手の米大リーグ挑戦を応援する真意、6年ぶりに復帰した有原航平投手(33)にかけた言葉、開業4年目のエスコンフィールド北海道や、北海道移転を発表した2軍施設のこと、そして何より今季のチームへの期待などについて、経営者視点も交え、語ってもらいました。
インタビューは2月25日、日本ハム東京支社(東京・品川区)で実施
(聞き手・北海道新聞編集局道新スポーツ専任局次長 小林基秀)
いかわ・のぶひさ 1961年大阪府生まれ。関西大学法学部卒。1985年に日本ハムに入社し、加工事業本部営業本部フードサービス事業部長、加工事業本部長、副社長などを経て2023年に社長。4月に会長に就任する。23年からファイターズオーナー兼務。4月以降も続投する。
「厳格なオヤジ」ではなく
―新庄剛志監督5年目のシーズンを迎えます。これまでの4年をどう評価しますか
「オーナーとして新庄監督を非常に高く評価しています。監督に就任した4年前は選手層も薄かった中で若手を育成してくれたということ、これがまず1番です。次に、われわれのスローガンである『ファンサービス・ファースト』を実現していただいた。当初は選手よりも監督が目立ちすぎと言われたこともありましたが、ファンサービス・ファーストであったり、企業理念である「スポーツコミュニティー」という、スポーツで地域に貢献していくということに関して非常に前向きに取り組んでいただいたということ。この2つです」
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―ファンサービス・ファーストに関し、具体的に新庄監督のどのような振る舞いを特に評価しているのでしょうか
「分け隔てなくファンに笑顔を振りまいたり、いろいろ写真を撮ったりしていただけるっていうのは、なかなかいないと思います。昔の監督っていうのは、『厳格なオヤジ』というイメージでしたが、新庄監督はそういう形じゃない。(新庄監督の)お考えの中では、ファンあっての選手なんだと、野球なんだというのをすごく思われている。年に何回かお話しをするごとに、そういう話をさせていただいて、そこは非常に一致しているところです」
―確かにあれだけファンサービスする監督はなかなかいない。2024年の交流戦、阪神甲子園球場でタイガースのユニフォームで出てきた時はびっくりしました
「開幕戦の演出の仕方だとか、新庄監督のアイデアもかなり取り入れています。アイデアマンですし、ファンに喜んでいただくということに関してはベースとして持たれている方なんで、非常にありがたいですね」
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―新庄さんが監督を引き継いだ時、ちょうど世代の変わり目で選手層が薄かった。今は監督が2チームできると言うくらい、選手層が厚くなりました。これだけ選手が育ったことをオーナーはどう見ていますか
「選手とのコミュニケーションが優れているなと、客観的に見て感じます。全ての選手に対してその特徴を理解していて、そこに対して的確なアドバイスをして、そのアドバイスが非常に効果的に成果につながっていくと。いろんなマスコミを通して聞きますけれど、そういう監督って少ないんじゃないかなと思います。かつてはトップダウンの、昔のオヤジタイプの監督が多かった中で、今風のマネジメントかなって思います。一人一人の個性を引き出して、そこに対してアドバイスをして背中を押していくという、こういうマネジメントスタイルっていうのが、今の経営にもつながっていくような部分ではないかなと感じます」

栗山、新庄…監督起用の条件は
―5年前、新庄さんを監督に起用したことにファンや球界関係者が驚きました。振り返れば、その前の栗山英樹さん(現チーフ・ベースボール・オフィサー、2026年1月に野球殿堂入り)の監督起用もファイターズらしいというか、ファイターズにしかできない人事と言われました。そうした人事の「哲学」を教えてください
「先ほども申しましたように、われわれの企業理念はスポーツコミュニティーという、スポーツを通して地域社会とお互いに成長していき、コミュニケーションを高めていくと。その中でスローガンとしてファンサービス・ファースト、この2つのワードがベースになっています。われわれの球団ではこれが基本の哲学です。そういう中で、われわれがちょっと変わっているのは、野球界だけではなくて、人間力であったり、リーダーシップだとか、未来を切り開く部分だとか、そういうところも要素として挙げています。これは監督人事だけではなくて、プロ未経験の方や学校の教員、高校野球部の監督がスカウトに就任した実績があります。意外と野球界だけではなくて、いろんな多様性を持たれている方を球団の中に入れて、いろんな要素で多様性を維持しながら、現状の変化にどう対応していくのかっていうのを進めていると。こういうところがベースにあるんじゃないかなと思います」
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球団に「辞めさせろ」の声
―現役時代から新庄さんのファンサービスの姿勢は素晴らしかった。それでも、監督に起用するというのは、なかなか思い付かないことです
「リスクはありました。現に、くじで打順を決めたりだとか、ありましたよね。毎日、打順を変えるだとか。1年目、2年目の最下位の時は、球団に厳しい声も届きました。V9時代の巨人のように1番から9番までレギュラーがいると。1番柴田、2番高田、3番王、4番長嶋…。そういう世代の方々から見れば、(新庄監督は)とんでもないことをやっているわけです。そういう方々からはさまざまなご指摘を直接いただいたこともありました」
3年目に2位の躍進「助かった」
―オーナーに直接会って言えるということは、それなりの方なわけですね
「はい(笑) でも、『もう少し待ってほしい』と。『今、選手が育ってるんで、いずれ結果が出ますから』と、こういう話をして待っていただいて、3年目に2位になった。これは、われわれとして非常に『助かった』。言葉は悪いですが。2位になって、(否定的な意見を)言われる機会が少なくなった。マスコミも『新庄さんのマネジメントはすごい』という話にだんだんなっていきましたよね。新庄さんの良いところは、最下位でも明るいんです。チームも明るいんですよ。で、そういう(新庄監督に批判的な)人から見ると、なんなんだと。もし、あれで(監督が)暗かったら、もしかしたらっていうこともあったかも分からない。それをみんなが一緒になって、あえて明るくして前向きに行く姿を見て、これはやっぱり強くなるんじゃないかなと思った。3年目、やっと2位になって良かったなと思います」

―「もしかしたら」というのは、そこで新庄監督を諦めたかもしれないと
「プロ野球の世界では3年目も最下位だと厳しいですよね。まあ、あそこですよね」
―今だからこうやって話せますけど、2年連続最下位だった時、オーナーとしてはつらかったんじゃないですか
「つらかったです。(新庄監督)3年目、初めて貯金ができた時はめちゃくちゃ喜びましたね。(今思うと)レベルが低すぎますけどね(笑)」
選手の夢を後押し、その先は本人の…
―ファイターズはダルビッシュ有投手や大谷翔平選手をはじめ、メジャーリーグへ選手を多く送り出し、「メジャー挑戦を応援する球団」というイメージが定着しています。それは今後も不変でしょうか
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「これは不変です。選手の夢を応援するということが今のわれわれの合言葉です。『行きたい』という選手は全て話をしながら、いろいろな意見があったとしても最終的には後押しするというような流れになっています。それからの先っていうのはその本人の考え方なんで、そこに関しては何も、われわれは過去も言及はしていないですし、コメントも出していないです。われわれは夢を追うと。そういうことをやることで、例えば台湾のスン・イーレイ(孫易磊)くんだとか、グーリン(古林睿煬)くんだとか、こういう選手がファイターズに入るようになってきた。他球団のオファー内容は分かりませんが、われわれは全力で夢を後押しするんだという姿勢を出しているから、2人は来てくれたのではないかなと思います」
―ファイターズはメジャー挑戦を応援する。逆にFAを取るまでダメですよという球団もあります。これは企業の判断、チームの判断であり善しあしではないですが、ファイターズは夢を応援するという結論になったきっかけは
「一番大きいのは大谷さんじゃないですかね。二刀流という夢と大リーグ挑戦という夢。その2つの夢の両方を、一生懸命、一緒になってかなえたっていうのがきっかけじゃないかなと思います」
―そういう意味では、当時監督だった栗山さんの存在は大きかったのでしょうか
「栗山さんの存在も大きいですし、スタッフの存在も僕は大きいんじゃないかと思います。大リーグ挑戦までの道筋を示したレポートも大渕隆(CBO補佐兼)スカウト部長が作成しました。やっぱり全員がそういう空気になっているということです」
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エスコンのビール代、選手補強に
―ここ数年、選手の大型補強が相次いでいます。有原航平投手との大型契約には驚きました。ファンの間では「私たちがエスコンフィールドで飲んだビール代が、選手の年俸や契約に還元されている」と喜ぶ声があります。実際に「エスコン効果」なのでしょうか
「ボールパーク開業後、着実にお客さまに入っていただいていますし、飲食、グッズ等々も継続して今、伸長しているのは間違いないです。収益をチーム補強に使わなければ、これまた何を言われるか分からない(笑)。皆さんが気付いていないかもしれませんが、エレベーターを増設したり、バス乗り場に屋根を付けたりと。球場のいろんな設備の不備があれば毎年毎年、良くしているんです。今年はLEDビジョンの看板を増やします。演出効果も出てくると思いますし、広告を入れられている方々も、LEDビジョンになることでアピールしやすい。そういうような部分も踏まえて、どんどんアップデートしていることをご理解いただきたいと思います」

有原投手は「礼儀正しい好青年」
―有原投手への期待は
「先日、名護キャンプで彼が僕にあいさつに来ましてね、びっくりしました。非常に礼儀正しくてすごい好青年だと感じました。『(無理しなくていい)普通にしてていいからね』という話をしました。非常に僕は好印象を持ちました」
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―ファイターズは、有原投手が移籍した後も、良い関係を維持していたようですね。ファイターズよりも良い条件を出した球団もあったという報道もありましたが、ファイターズに来てくれました
「ありがたいですね。それが先ほどの、夢を後押しするという結果じゃないかなと思ったりするんです。瞬間的には、どちらかというと損したように思うけれども、時間がたつと結構、その後押ししたことが返ってくるような気がするんです。西川(遥輝)さんもそうなのかもしれません」
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エスコン建設費、ハムソーセージ工場3つ以上
―日本ハムは売上高が1兆3700億円(25年3月期)の巨大企業ですが、600億円といわれるエスコンフィールドの建設は大きな決断だったと思います。当時を振り返り、どういう思いがありますか
「僕いないんですよ。(建設を決めた2018年当時は)オーナーでもないし、(ファイターズ担当ではない)執行役員なので、決定の場には同席していないんです。その時は『すごいことになったな』、『これどうするの』と思いましたね。その後、ファイターズと絡むようになって、私が社長になったのが2023年4月1日です。エスコン開業の時、思ったのは『600億円をしっかり計画通りに遂行しないと』です。他の事業の部分をこっちに回しているわけです。ハムソーセージの工場やったら、3つぐらい建ったかな。もっと建つか(笑)。それぐらいの大きな投資なんです。既存事業をやっている人から見た時に、計画以上のことをやらないと投資した意味がないと、当時思いました。4月は(観客数が)2万人いくかいかないかぐらいでした。『北海道の4月はまだ寒いからお客さん、来ないんです』と言っているんだけど、(暖かくなれば)本当に来るのかな? と思いました。(新型コロナが感染症法上の)5類に移行後、徐々にお客さんが増えていって、当時、新庄監督がいろんな発信をしてくれて、お客さんに来ていただいた。で1年目、ふたを開けてみれば計画以上のものになったので、これは示しがついたなと思ったのを思い出します」
2軍施設建設地「早く決めたい」
―ファーム(2軍)が千葉県の鎌ケ谷から北海道内に移転することが発表され、道民の期待は高まっています。建設地の選定段階にあると思いますが、その施設をどう発展させていきたいか、オーナーの思いをお願いします
「地域貢献というのが一つですが、今(拠点が)鎌ケ谷と札幌、北広島で、非常に不便を感じている。他のチームは『きょうの昼の試合を見て良かったらすぐ来い』と、こういうことができますが、うちはできないっていうことが一つ。鎌ケ谷の施設は1997年に開業し、当時は最新でしたが、いろんな不備も出てきています。われわれとすれば、先ほどの話じゃないですけども、エスコンの収益で。そうしていかないとファンに失礼ですし、北海道に持ってくることで北海道のファンがエスコンだけではなくて、新しい2軍球場にも来ていただいて、身近に応援をいただけると。これがまた地域貢献にもなるし、ファンサービスになる。私は(建設地を)早く決めて早くはっきりさせたい。いろんな地域でお世話になっていますけども、地域貢献の中で野球教室をやるなど連携をしていろいろやらせてもらいたいなと思います。(エスコンフィールドがある)北広島市の12月の学校給食に、シャウエッセンを小学生には2本、中学生には3本(合計で約1万本を無償で)提供しています。やっぱり北広島市はファイターズ、北広島市はシャウエッセンということを根付かせていきながら、地域貢献とコマーシャルを両方やってきた。そういう地域を今より多くつくっていきたいと思っています。ファイターズは北海道で有名になりましたが、親会社はまだまだです。街頭インタビューで『北海道で有名な食品企業はどこですか』と聞かれた時、名前が出てくるようにしたい」

新しい挑戦をする球団、これからも
―ファイターズが北海道に移転して22年が経過しました。北海道日本ハムファイターズの現状をどう捉え、将来的にどう発展させていきたいか、オーナーとして聞かせてください
「北海道の地域球団、これがベースです。これをしっかり維持して、もっともっと認知を高めていく。それと、ファイターズは何か新しいことをしているチームであったり、新しいことをやる球団だという、チャレンジだとか、そういう挑戦の部分っていうのはずっと残していきたい。先ほどの話じゃないですけども、台湾から観光客が北海道に来た時に球場に来ていただいたり、逆に台湾で日本ハムの商品が売れたりとかですね。北海道イコール観光地であり、一つの大きな発信拠点だと思うのです。それを活用して事業にも生かしたいと思っています。台湾はわれわれの大きなマーケットで、われわれも台湾に行った時に台湾の拠点があるんです。そこと連携しながら、そこの拠点のお客さんを台湾の球場に連れて行って、ご満足いただくような形も取っています」
「アレ」ではなく「ビッグイヤー」に
―最後に、今季の新庄ファイターズに期待することは
「今、世間で『今年こそ1位だ』と言われているのを実現したいという思いです。ただ、(2023年当時の阪神)岡田監督じゃないけれど、『アレ』と言ってましたでしょ。やっぱり優勝っていうのはなかなか言いづらいですよね。そのまま露骨に言うと、逃げていくような気がしますので、僕は『ビッグイヤー』と言ってます。今年はビッグイヤーになるということを確信しておりますし、それを選手全員が目指してくれると思っております。ビッグイヤーという言葉で通していきたいと思います」
―お立場のある方が言うとプレッシャーにもなってしまうのですね
「そうなんです。彼ら(選手)自身で『DOMIれ!』とね、圧倒的に勝つという意味だと思うんですけども、それを継続して、ビッグイヤーにしていくと。これが私の思いでございます」
―2006年、2016年と日本一に輝いています。ファンは10年サイクルなので、今年こそと期待していますが、オーナーにとっては逆にプレッシャーでしょうか
「いやいや、実は去年、優勝するつもりだったんです。(7月下旬まで首位で)最後にわれわれが失速したというよりも、ソフトバンクの地力が非常にあったということだと思います。83勝して優勝できなかったっていうのは、ある意味、特異と言いますか、事実をしっかりと見つめ直して、どうしていくのかと。今年は有原くんなど新戦力も揃いました。ぜひともビッグイヤーを実現させていただきたいと思います」
【2000円おトクの道スポ年払いプランはコチラ】