来春のセンバツ甲子園21世紀枠候補に士別翔雲が初選出 悲願の名寄支部初聖地&日本最北出場へ弾み
昨秋の全道大会で8強入りし、21世紀枠候補に初選出された士別翔雲ナイン=撮影・西川薫
確率9分の2 来年1月30日に発表
日本高野連は12日、来春のセンバツ甲子園21世紀枠候補となる9校を発表。北海道からは昨秋の全道大会で8強入りした士別翔雲が初選出された。全道10支部の中で春夏通じてまだ甲子園に出場したことのない名寄支部の悲願はかなうのか。来年1月30日に一般選考とともに発表される。
【#高校野球 関連ニュース一覧】
士別翔雲が第1関門を突破した。2001年の第73回大会から始まった21世紀枠で名寄支部から候補入りしたのは、稚内大谷が03年と23年の2度、天塩が14年に選出。実際に出場できるのは9校中2校と狭き門だが、士別高出身でもある渡辺雄介監督(44)は「非常に光栄。新たな成長のきっかけにしたい。この地区の悲願なので、うちの高校が出たいのもありますけど、やはりこの名寄地区から甲子園の土を踏みたい思いも強い」と力を込めた。
放課後、21世紀枠候補に初選出されたことをナインに知らせる士別翔雲の渡辺監督(右)
これまでは北見支部の遠軽が最北代表
士別翔雲が選ばれれば、日本最北の称号も同時に手に入れる。これまでは13年に21世紀枠で初出場して1勝を挙げた、北見支部の遠軽が北緯44度3分で最北だったが、士別翔雲は北緯44度11分で上回る。秋の大会で主将兼学生コーチとしてチーム8強に貢献した本郷創士主将(2年)は「この結果は、自分たちだけじゃなく、翔雲の先輩方が築き上げてきた伝統だったり、色々な人の支えがあっての結果だと思ってます。嬉しいです」と声を弾ませた。
豪雪地帯で厳寒の地「凍傷とかすぐなっちゃう」
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
主な推薦理由の一つは環境面だ。昨冬の最低気温は氷点下26.8度。渡辺監督は「気を付けないと、凍傷とかすぐなっちゃう」。金属バットを素手で持つと、手のひらの皮が張り付くなど、注意が必要だ。豪雪地帯で冬は半年間グラウンドが使用できない。室内練習場はないが、敷地内にある50メートル×12メートルのビニールハウスで練習に励んでいる。例年は3月ころに地元業者に依頼してグラウンドを重機で踏み固めてもらっているが「3月に試合が控えている可能性もあるので、使える状態にしたい」。時期を前倒しして真冬も外でのキャッチボールや外野ノック、ボール回しなどで感覚が失われるのを防ぐ。さらに1月上旬には月形町へ2泊3日の短期合宿を敢行する予定だ。
小中学生ら対象に野球フェスを開催して少子化対策
地方の少子化の波は士別市も例外ではない。市内に中学は4校あるが、野球部は全て連合チーム。卒業後、近隣の旭川市内の強豪私立高へ進む生徒も多い。そんな中、昨夏の全国中学に士別南中と、朝日中・上士別中・士別中の3校連合の2チームが出場するなどレベルは高い。渡辺監督が赴任した12年前から、小中学生対象のベースボールフェスティバルを開催。また未就学児を対象にしたキッズフェスティバルも行い、地域の子供たちや指導者とのつながりを形成してきた。「(市外へ)抜ける子もいるんですが、残ってくれる子も出てきました」。その成果もあり、新チームは2年生が14人、1年生が13人。うち2年生マネジャーが3人。全員が上川管内の中学校出身だ。
士別と士別商が統合してできた07年4月の創立後、3季通じて道大会では2勝が壁になっていたが、22年秋に渡辺監督が、09年センバツ甲子園を長崎勢として初制覇した長崎清峰に「押しかけ視察」。同校名物のトレーニングを学び、オフの練習に導入した。短く切断した丸太を両手で抱え、スクワットやポール間走を導入し下半身強化に乗り出した。その際、長崎清峰の清水央彦監督から「やはり3点以内に抑えないと勝ち上がっていけないよ、という話をされた。私学と対抗できるのは、まずピッチャーだから、ピッチャーをちゃんと育てないと、勝負にならない。そこは、ぜひ頑張れ、と助言を受けた」という。
投手中心の守りに重点置き着実に強化
早速、23年春に投手中心のチーム作りに転換。「大西、高橋、大橋という投げれるピッチャーがいたので、ピッチャーを中心に、守りに力を入れたのがひとつ大きな要因」。同年夏の北大会で3季通じて初の4強入り。今春の全道で8強。夏は北大会4強。新チームになった秋は2勝で8強入り。3季連続で8強以上と、めざましい成績を残した。
【2000円お得! 道スポの年払いプラン】
〝本番〟まで残り1カ月半。本郷主将は「選ばれても選ばれなくても、成長の機会にしたい。まずは自分たちの最終目標は夏の選手権大会、全道大会で優勝して、必ず夏の甲子園に行って勝って校歌を歌うこと。そこに向かってやると同時に、この冬は春の甲子園に向けて照準を合わせて練習していきます」。いつもとは違う冬を、高い目標持って運命の日を待つ。
