《岩本勉のガン流F論》続投発表に思う 来季は新庄体制の集大成
心から納得できる伊藤の沢村賞
うれしいニュースが飛び込んできた。1日前のことではあるが、伊藤が沢村賞に輝いた。完投数もさることながら、QS(クオリティースタート)率も含め、令和のプロ野球界で、堂々としたパフォーマンスを見せてくれた。受賞は心から納得できる。CS(クライマックスシリーズ)での好投も記憶に新しい。伊藤への個人的な注文は、もうない。今季、勝負どころでことごとくマウンドに立った。ライバル球団ソフトバンクのエース・モイネロとの6度のマッチアップは最たるもの。来季に向け、期待は膨らむばかりだ。
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選考委員の方々に感謝とリスペクト
沢村賞に関し、加えて言いたいのは選考委員会の先輩方について。起用法など、プロ野球を取り巻くあらゆるものがメジャー化していく中で、沢村賞の基準についても、これまで何度も話題に上ってきた。あくまで基準ではあるのだが、来季から完投数と投球回数が現行から引き下げられることになった。まさに時代の流れに沿った変更と言えよう。その決断には、野球人として感謝し、敬意を表したい。
新庄監督が来季5シーズン目の指揮
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さて、われらが日本ハム。来季も新庄監督が指揮を執る。ここまで4シーズン、右肩上がりで成果を見せ、結果を出してきた。喜ばしいことであり、続投を臨んだ球団の思いは当然である。あとは本人の気持ち次第であったのだろう。現役時代も、独創的なアイデアで周囲を驚かせ、それを行動に移し、結果を出してきた。ただ、指揮官としてはまだリーグ優勝に手が届いていない。このタイミングでの退任という選択はなかったはず。志半ばでは辞められなかったと想像する。同学年で、ソフトバンクを率いる小久保監督の存在も大きかったように思う。
来季は新庄体制の集大成となる。1年目、新庄監督は「優勝を目指しません」と言った。本音は「目指せません」だったに違いない。フロントはノンテンダーを含めて一度、チームを解体し、若手主体に切り替えた上で新指揮官に委ねた。そこからコツコツとチームをつくっていったのが新庄監督に他ならない。1年目、2年目はトライアウト。いわば準備期間で、選手に気付かせ、考えさせることに重きを置いた。作戦面ではフォースボークしかり、重盗しかり、ツーランスクイズしかり。野球のルールは実に幅広い。個々の力を見極めながら、選手にあらゆる可能性を示した。3年目。可能性の幅を広げた選手たちが躍動した。そして今季、下馬評通りのパフォーマンスで激しい優勝争いを演じた。
共感できる「愉しむ」
「愉しむ」という言葉にも共感できる。「楽しむ」は瞬間瞬間であり、勝負事や競技とはどこかかけ離れたイメージが先行する。「愉しむ」とは、鍛錬を積んだ上で、準備が整ってこそ用いられる文言で、瞬間瞬間に至るまでに費やされる時間は膨大である。その意図は選手にも伝わり、理解は深まった。
2021年オフ、ノンテンダーの対象となった選手にとっては、それがタフなジャッジだったと言える。だが、球団は改革に舵を切った。来季、勝つことでそれが正解だったと示すこともできる。
今後も忖度なく!
人を導き、操り、それぞれの心を動かしてきた野球人・新庄剛志。私も評論家として肯定すべきは肯定し、指摘すべきことは今後も忖度(そんたく)なく、本音で語っていきたい。1、2年目、石狩湾でテスト走行していた船は津軽海峡を越え、大海へと出て行った。世界一の球団を目指すファイターズ。行き着く先はゴールデンゲートブリッジか。OBとしての願いは球団の発展と選手の成長に尽きる。私も一本のオールを手にしていると思っている。