祝・沢村賞! 伊藤大海 14年に受賞した金子千尋2軍投手コーチが語る そのすごさとは
沢村賞を受賞した伊藤を祝福する金子2軍投手コーチ=撮影・松本奈央
受賞者だからこそ知る価値
日本ハムの伊藤大海投手(28)が沢村賞を初受賞した。オリックス時代の2014年、同賞に輝いた金子千尋2軍投手コーチ(41)が道産子右腕のすごさを語った。
沢村賞の選考基準は15勝、150奪三振、10完投、防御率2.50、200投球回、25試合登板、勝率6割の7項目。伊藤はそのうち、登板数(27試合)、勝率(.636)、奪三振(195個)の3項目をクリア。勝利数(14勝)、投球回数(196回⅔)、防御率(2・52)でも選考基準に近い数字を残したことが評価された。同コーチは「まずは本当におめでとう。今の時代、すごいと思います。僕の時代とは違うので。完投6もすごいですし、イニングも196くらい。同じことを言って申し訳ないですけど、すごいです」と手放しで褒めたたえた。

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その背中を追った道産子右腕
金子コーチと伊藤は21年から2年間ともにプレー。入団したばかりの道産子右腕にとって、実績も経験も豊富なベテラン右腕は憧れの的だった。自分のやるべきことを効率良く、かつ一つ一つ丁寧にこなす姿勢を間近で見て「あれだけ(長く現役で)できているのはそれだけの理由がある。すごく勉強させてもらっています。ああいう立場になりたいなと思いますね」と語っていたこともあった。
22年に現役引退した金子コーチは、翌23年から特命コーチとして米国へコーチ留学を経験。24年から2軍コーチに就任し、伊藤と顔を合わせる機会は減ったが、エースとして成長する姿を頼もしく感じていたという。
21年の春季キャンプ(名護)で共に汗を流した伊藤(左)と現役時代の金子コーチ
評価すべき項目は多数
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プロ5年目の今季は開幕からローテーションを守り、シーズン終盤は中4、5日と短い間隔で登板を重ね、クライマックスシリーズ(CS)でもフル回転した。
「1試合の中で見ても初回と九回で球が変わることなく、スタミナもしっかりあるし、それが先発ピッチャーとしてはいいことだと思います。1年を通して見ても、もしかしたら後半の方がストレートの質とか、そういう意味では良かった。コンディショニングもしっかりできている証拠だと思うので、けがもないですし、しっかりCSまで投げられたのは本当すごいと思います」
13年に選考基準全7項目をクリアするも…
自身は現役時代、オリックスの絶対的エースとして君臨した。13年には沢村賞の選考基準の全7項目をクリアしたが、楽天・田中将が24勝0敗と歴史的な成績を残したことで受賞ならず。翌14年は、チームがソフトバンクと熾烈(しれつ)な優勝争いをしている中だった。
「僕の場合、(14年は)全部の項目をクリアしたわけではないので。(13年は)チームは5位でCSはなかったので、シーズンで出し切ることができた。次の年はCSも考えながらのシーズン後半だったので、イニングも190くらい(191回)で終わりました。(伊藤は)それをしていない中で、シーズンもCSも投げたのは体力あるし、すごいところだと思います。今の時代は分業制と言われています。でも、チームの中で1人か2人でも完投できるピッチャーがいると、中継ぎ陣の負担も減るし、すごく大事な存在。ピッチャーは完投できた時の方がより、うれしさは増すと思うので」

積み重ねた実績が生む説得力
伊藤は新人だった21年から5年連続で規定投球回に到達。主力選手として立ち振る舞いも評価されているが、エースとしても申し分ない成績を残している。
「ここ2、3年は一緒にいることがないので、シーズン中の振る舞いは分からないですけど、成績でなんとでもなるというか。逆じゃダメだと思うので。すごく振る舞いがしっかりしていても、成績が残っていなかったら説得力はない。極端に言えば、成績さえ残してくれれば、何やってもいいとは言わないですけど、成績を残せているところがまず、すごいと思います」
必要なのはあくなき向上心と探究心
レギュラーシーズン終了後、伊藤はリーグ優勝を逃したこともあり「やりきれていないシーズン」と振り返った。その言葉に金子コーチは大きくうなずく。
「正直、納得できるシーズンってないと思います。マー君くらい24勝0敗とかだったら、そういうのだったら納得できると思いますけど、今年の成績、14勝とか納得していないと思う。防御率2.50くらいも納得していないと思う。イニングももうちょっと行きたかったと思う。正直、満足できるシーズンは僕もなかったので。終わってみて、まあまあ良かったな、はありますけど、これでいいやというシーズンはないので。その気持ちは大事ですね」。後輩右腕のさらなる飛躍を期待していた。
