今川優馬 昇格即モイネロ撃ち 胸に秘める〝桜木花道魂〟「僕は、今なんですよ!」
三回2死、左前打を放ち、塁上で執念ポーズを見せる今川(右)=撮影・松本奈央
■2025 パーソル クライマックスシリーズ パ ファイナルS第1戦 日本ハム1-2ソフトバンク(10月15日、みずほペイペイドーム)
元気印が待望のカムバック!
日本ハムの今川優馬外野手(28)が無念の2軍落ちから執念ではい上がり、相手エースのモイネロから安打を放った。
「5番・左翼」で先発すると、三回の第2打席で快音を鳴らし、左前に運んだ。2打数1安打1死球で六回の守備から退き、試合は敗れたが、不屈の精神を敵地のグラウンドで体現して見せた。
三回2死、左前打を放つ今川(右)=撮影・井上浩明
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今が勝負時と見定めた
9月14日の西武戦で右太もも裏を負傷し、ゲーム復帰まで4週間の見込みと診断されたが、約2週間後の同27日、2軍ヤクルト戦で実戦復帰した。まだ、まともに走れない状態だったが、ためらいはなかった。
「僕はもともとプロに入るまで、肉離れの経験が何回もある。それに比べたら全然、できる範囲だと思っていました。だから、コーチの方とか、トレーナーとか、皆さんやっぱり、『無理すんな』と、すごく言ってくださったんですけど、でもやっぱり、僕からしたら本当に、こんなチャンス、二度とない。もう、ないかもしれないじゃないですか。もう僕の立場的にも。だから本当、無理してでも、一日でも早く1軍に復帰したい。 ファームの首脳陣とか、トレーナーの皆さんにだいぶ無理をしてもらって、だいぶ早めの調整をさせてもらいました。万全で走れない状態なのに、打席に立たせてもらっているので、すごく感謝してますね」
焦りを振り払うにはやはり…
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翌28日の同戦後、今川は焦っていた。すでに1軍ソフトバンク戦(同30日)での昇格が決まっていた。
「いや、本当に、まずいです。抹消されて、実戦間隔が空いたのが痛かった。今のままじゃ打てないです。でも痛いとか、コンディションは言い訳にならない。やっぱり、勝負する以上はやらなきゃいけない。自分で間に合わせるしかないんで。だから、今から打つしかないですね」。もう日は暮れて鎌ケ谷は真っ暗。そこから1人、バットを持って室内練習場にこもり、何球も何球もマシン打撃を繰り返した。
勇気をくれたあのシーン
けがが再発する怖さは、当然あった。ただ、胸に秘めていたのは、漫画「スラムダンク」の主人公、桜木花道と同じ気持ちだった。
「再発したら、そうなったらそうなったで、それまでの野球人生。僕は、今なんですよ!」。花道は全国大会の山王工業戦で背中を負傷した際、交代を拒否し、安西監督に向かって「オヤジの栄光時代はいつだよ…全日本の時か? 俺は……俺は今なんだよ!!」と言った。今川の心も、同じ言葉を叫んでいた。
「今を全力で生きたいんです。それでけがをしたらもう、悔いはないです。それで、無理しなきゃ良かったなとは思わないので。本当、そうですね。やるしかないです。見守ってください。いや、(太もも裏が)ちぎれてもやります。本当。もう、骨が折れてもやってる(24年に引退した)江越さんを見ているので。だから僕も、こんな、筋肉ちょっと損傷したぐらいで、全然、余裕です」
三回2死、左前打を放ち、ほえる今川
これこそが「執念」の真骨頂
結局、10月4日のロッテ戦後に再び登録を抹消され、目標だったエスコンフィールド北海道でのCSファーストステージ出場はかなわなかった。それでも、みやざきフェニックスリーグで腐らず結果を残し、晴れ舞台に戻って来た。
これから、どんな困難が訪れたとしても、何度も挫折を味わったとしても、背番号61はそのたびに強くなって、バッターボックスに戻ってくるはずだ。