スケート高木美帆 現役引退へ 世界選手権で「一区切り」 女子最多五輪メダル10個
現役引退の意向を示した高木美=共同
インスタグラムで意向を表明
夏季を含めて日本女子最多の五輪メダル通算10個を誇るスピードスケートの高木美帆(31)=TOKIOインカラミ、帯広南商高出=が4日、ヘーレンフェイン(オランダ)で5~8日に開催される世界選手権終了後に現役を退く意向を示した。インスタグラムに、この大会を「私のスケート人生の一区切りにしようと思っている」とつづった。(共同)
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五輪のメダル数は、男子を含めても日本勢歴代3位。複数種目で世界トップレベルの力を誇り、一時代を築いた名選手がリンクを去る。
高木は世界選手権で、短距離から長距離の4種目総合で競うオールラウンド部門にエントリー。このタイミングで進退を公表した理由について「一区切りとなる瞬間をここまで応援してくださった皆さんとともに迎えたい」との思いがあると記した。詳細については帰国後に説明する考え。
「スーパー中学生」と話題に
十勝管内幕別町出身。15歳で2010年バンクーバー五輪に初出場し「スーパー中学生」と話題になった。オランダ人の指導を受けて世界レベルに成長し、18年平昌五輪では姉の菜那と滑った団体追い抜きの金に加え、銀、銅のメダルを一つずつ獲得。日本選手団主将を務めた22年北京五輪は1000メートルの金メダルの他、銀3個を手にした。
2010年のバンクーバー五輪で初出場した高木美
2月のミラノ・コルティナ五輪は、本命種目の1500メートルで悲願の金メダルに届かず6位だったが、銅メダル三つを加えた。進退については、シーズン終了後に検討するとしていた。
高木美帆のコメント全文
高木美帆がインスタグラムに投稿したコメントは次の通り。
今週末にオランダで開催される世界オールラウンド選手権を私のスケート人生の一区切りにしようと思っていることをご報告いたします。
これからのことや細かいことは、帰国してから改めて公式の場をお借りしてお話しできたらなと思っています。
このタイミングでのご報告の理由…もし最後になるならば、私のスケート人生の一区切りとなる瞬間をここまで応援してくださった皆さんとともに迎えたい。と考えたからです。たとえ現地にいなくても、画面の向こうからでも、皆さんの応援はいつも私の支えです。
このスケート大国オランダで、スケート史上最古の大会、世界オールラウンド選手権が開催されることを心から嬉しく思いますし、あの大歓声の中滑れることをとても楽しみにしています。
残りの期間も変わらずに、スケートに向き合い続け、高みへ挑みにいきます。
▼▼ここから有料記事(姉・菜那さんのコメントも)▼▼
本場オランダからも称賛
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引退を表明したスピードスケート女子の高木美帆について、本場オランダからも功績を称賛するコメントが寄せられた。ジュニア時代からのライバルで、ミラノ・コルティナ冬季五輪の女子1500メートルを制したアントワネット・ライプマデヨングはインスタグラムに「あなたと競い合えたことは光栄だった」と感謝した。
同五輪で女子500メートル金メダルのフェムケ・コクも「鼓舞してくれる存在だった。これからの未来が素晴らしいものになるよう祈る」とつづった。オランダ連盟の公式ニュースサイトでは「輝かしいキャリアに幕を下ろす」として、世界選手権に向けた抱負などとともに紹介された。
恩師ら「レジェンド」の偉業たたえ今後の活躍も期待
「素晴らしいキャリア」「レジェンド」。スピードスケートの高木美帆が引退する意向を示したことを受け、かつて指導した恩師らは、五輪で「金」含むメダルを通算10個獲得したことなどの偉業をたたえた。「今後が楽しみ」と次のステージでの活躍にも期待を寄せた。
「スケート王国」として知られる北海道十勝地方の幕別町出身の高木は中学時代、「十勝中体連スピードスケートクラブ」に所属。指導した勝見了さん(55)は「日本スケート界に大きな貢献をしたレジェンド。美帆のことだから次を考えているはずで、何をしていくのかがすごく楽しみ」と話した。
高木が行きつけにしており、2022年北京大会で獲得した金メダルなどを持参したこともある北海道帯広市のカフェのブラジル人店主ブルーノ・ダネジさん(37)は「子どもの頃から素晴らしいキャリアを築いてきた。選手だからこその我慢もあったと思うが、これからは好きなことをやってほしい」と気遣った。
高木が幼い頃から通う同市の「高橋まんじゅう屋」を営む高橋道明さん(62)は「小学生の時に『五輪に行けたらいいね』と言っていたが、10個もメダルを獲得した。残念だけど、本当にお疲れさまでしたと伝えたい」と語った。
22年の北京五輪では銀メダル3個と金メダル1個を獲得
姉の菜那さん「魅了し続けてきた」
スピードスケート女子の高木美帆が世界選手権(5~8日・オランダ)後に現役を退く意向を示したことを受け、五輪金メダリストで姉の菜那さん(33)が4日、インスタグラムに「兄の影響で始めたスピードスケート。いつの間にか私たち兄妹にとって、すごく大切なものになっていたなとしみじみ」などと思いをつづった。
菜那さんは2022年北京冬季五輪後に引退。ミラノ・コルティナ五輪はテレビ解説の仕事で現地を訪れ、妹の奮闘を見守った。「世界のトップを走り続け、魅了し続けてきた」と功績をたたえ、世界選手権も応援に駆け付けると明かした。
18年の平昌五輪では姉妹で計5個のメダルを獲得した高木菜那(左)と高木美
スピード一時代の終わり メダル依存、大きな損失
高木の引退により、スピードスケート界は一時代の終わりを迎える。ミラノ・コルティナ冬季五輪では、日本が獲得した3個の銅メダルに高木が全て絡んだ。大黒柱への依存と選手層の薄さが浮き彫りとなり、あまりに大きな損失となる。
高木と共に女子団体追い抜きを支えた佐藤綾乃(ANA)はミラノ・コルティナ大会が最後の五輪と明言。今後の主軸候補とされる22歳の堀川桃香(富士急)は個人種目で振るわず、ワールドカップ(W杯)通算3勝の23歳、吉田雪乃(寿広)は500メートル13位と経験不足を露呈した。
次世代の台頭が乏しいのは男子も同じだ。500メートルで6位の新濱立也(高崎健康福祉大職)は既に29歳。10位の森重航(オカモトグループ)も25歳で4年後にはベテランの域に入る。20代前半が席巻する世界の波に、日本は乗り遅れている。
女子短距離をリードした小平奈緒は22年に引退。万能選手として長年けん引してきた高木も去れば「当面は冬の時代かもしれない」(関係者)と懸念する声は以前からあった。その試練の時が近づきつつある。
ミラノ・コルティナ冬季五輪のスピードスケート女子1500メートルのレースを終え、観客席に向かい手を振る高木美=共同