旭川実業が延長戦制して8強入り 背番号1・加藤千聖が父に見せた〝恩返し〟の6回無失点【秋季全道大会】

■秋季全道高校野球第4日(10月15日、札幌・大和ハウスプレミストドーム)
▽2回戦 旭川実業6-1東海大札幌高
延長十一回を戦い抜き昨秋王者に土
2度のタイブレークをしのいで、昨秋王者を振り払った。5点リードの延長十一回2死一、三塁、マウンド上には旭川実業の背番号1・加藤千聖(ゆきや)投手(2年)。最後の打者を二ゴロに打ち取ると、左拳を強く握った。
七回からは毎回走者を背負いながら
序盤から1点を争う展開が続いた。「6番・一塁」でスタメン出場の加藤は六回から2番手で登場。直球は120キロ台だが、スライダーやカーブを織り交ぜながら、バットの芯をことごとく外していく。七回からは毎回走者を背負いながらの投球だったが、動じることなく腕を振った。
「きょうはしっかりコントロールを意識して投げられたことが良かったです。七回の時はゲッツーで切り抜けようと思っていて、想定通りゲッツーを取れた」。
タイブレークに突入した延長十回無死一、二塁。先攻で得点を奪えず、絶体絶命の状況に陥った。「強気に投げるしかない」。腹はくくった。先頭打者を併殺で2死三塁とすると、次打者を遊ゴロに仕留めて難を逃れた。
先発の小池全内野手(2年)からの継投は、旭川実業の鉄板リレー。自身を「リリーフの方が向いている」と分析する左腕。見事な6回無失点の快投で強敵を退けた。

支部予選の代表決定戦では大逆転劇
全道を決めた旭川志峯戦では、大逆転劇を演じた。先発の小池が乱れたこともあり、加藤は三回途中から登板。日差しも強く、体力を削られる中で腕を振り続けた。途中、左足ふくらはぎがつったものの、治療を施しながら最後までマウンドは譲らなかった。141球を投げ抜き、13-12で勝利して何とか全道に駒を進めた。
坂口監督も精神面の成長に太鼓判
この精神力の強さが背番号1の理由だ。坂口新(あらた)監督(41)は「チームを背負って立っているという意識はかなり持ってくれている。精神的にかなり成長してきた、一番勝ちたいと思っているのは伝わってきます」。
実業OBの父からボールの握り伝授 「最後はお父さんに憧れて…」
また、春が訪れる前に試みたことが成長にもつながった。これまでは親指を伸ばしてボールを握っていたが、親指を曲げて握ると直球の質が改善し、伸びが向上した。背景には、旭川実業野球部OBの父・孝典さんの助言があった。
江別出身の加藤だが、そんな父を追いかけて旭川実業に進学。「最後はお父さんに憧れて(旭川)実業に決めました」。この日、スタンドから見守る父の前で〝恩返し〟の快投を見せた。

優勝を目指してあと3つ
これでベスト8に進出。全道制覇まであと3つとなった。「自分たちは本当に弱いチームなので、1個1個しっかり勝って、優勝を目指して頑張りたいです」。粘り強い旭川実業を支えるのは、不屈の左腕エースだ。