【激戦の裏側】矢沢宏太 ファイナル切符をつかみ取った勝利へのベースランニング「鳥肌が立つようなワンプレー」
12日のオリックス戦、八回2死一、二塁、レイエスの一打で本塁へ突入する一走・矢沢(右)
ファーストステージ第2戦・オリックス戦
日本ハムの矢沢宏太投手兼外野手(25)が12日のクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦で劇的勝利につながる好走塁を披露した。
フランミル・レイエス外野手(30)の劇的な逆転打で2年連続のファイナル進出を決めたが、一塁から一気に決勝のホームを陥れて勝利の立役者となった。快足を生かして駆け抜けたベースランニングの裏側を、矢沢が振り返った。
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布石は前日の最終打席
「1番・中堅」で先発出場した第1戦は4打数ノーヒット。だが、4打席目に岩崎から放った右飛で、打撃への手応えを感じることができていたという。「角度を意識しながらバッティングしました。ライナーをイメージして、実際にライナーが飛んで行ったので、あまり嫌な感じはなかったです」
そして第2戦。試合途中から守備に就き、八回2死一塁で第1打席を迎えた。前日も対戦した岩崎が投じたフォークを左前へとはじき返し、今季CS初安打をマークした。「真っすぐを右中間ぐらいに打つつもりだったんですけど、なんかあっちに行っちゃった、という感じです(笑)」。イメージ通りの打撃ではなかったものの、逆転へチャンスを拡大させる貴重な一打となった。

長駆ホームインを想定したリード
ここでレイエス。5球目を空振りしてフルカウントとなった。走者が自動でスタートを切る場面で、矢沢はわずかにでも先へ進むことを強く意識していた。
「ファーストも下がっていたので、サインプレーでけん制が来ても戻れる距離の中で、最大限のリードをして」。岩崎がレイエスへの6球目を投じた瞬間、自身でも手応えを感じられた好スタートで、勝利へのベースランニングが始まった。
コーチャーのジェスチャーと歓声を頼りに
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レイエスが放った大飛球は右翼方向へ。矢沢は打球の行方には一切、目もくれず、ひたすら次の塁を目指して走り続けた。その走塁の助けとなったのが、三塁コーチャーを務めていた森本コーチ、そして日本ハムファンの歓声だった。
「打球は1秒も見ていなくて。歓声の沸き方と、稀哲さんのリアクションで『これホームあるな』と感じて。(打球の)角度は上がっていたので、フライを捕るか捕らないかを、球場が歓声なのか、ため息なのか(で判断して)、コーチャーも回していたので、そのリアクションがすごく走りやすくしてくれました」
間一髪の生還直前に起こったアクシデント
三塁を回っていよいよホームへ。だが、ここで思いがけないアクシデントが起こる。バックホームのカバーのために三塁ファウルグラウンドへ向かって背走してきた岩崎が、思いがけず矢沢に接近してきた。
「危なく当たりそうになって」。岩崎が寸前のところで矢沢に気付いて止まったため、激突は回避したが、当初は足からのスライディングでのホームインを考えていたが、走塁のタイミングがずれたことによって、とっさにヘッドスライディングを選択した。球場内が興奮のるつぼと化した逆転ホームイン。思いがけない危機回避の副産物として生まれたものだった。
12日のオリックス戦、八回2死一、二塁、レイエスの一打で生還した一走・矢沢(中央)
エスコンが揺れたハイライトシーン
ホームインの瞬間、耳に届いたのは、満員のファンが発した歓喜の大声援だ。
「ホームインした時も聞こえました。話しかけている選手も何を言っているか分からないぐらい、圧がガーンと来るような。映像を何回見返しても鳥肌が立つような、そんなワンプレーだったなと思います」
目指すは日本シリーズ
矢沢の好走塁で奪い取ったリードを守り切り、チームはファイナルステージ進出を決めた。「エスコンフィールドで野球をするのがめっちゃ楽しかったので、ここに戻って来られるように、福岡でも愉しんでやっていきたいと思います」
昨年のファイナルでは、第1戦で先発出場してタイムリーを放ったものの、同戦後に無念の登録抹消となった。今年こそ最後の瞬間までプレーし、日本シリーズ行きのチケットを手に北海道へ舞い戻る。
