矢沢宏太 突然の代打も指揮官の采配信じ同点タイムリー「ボスが打てると思って…」
九回2死二塁、郡司のサヨナラ打で生還した矢沢(左)がナインの祝福を受ける=撮影・松本奈央
■パ・リーグ9回戦 ロッテ3-4日本ハム(5月31日、エスコンフィールド北海道)
劇的勝利を呼び込む土壇場での同点打
日本ハムの矢沢宏太投手兼外野手(24)が2点ビハインドの九回2死二、三塁の場面で代打登場。カウント2-2からの5球目をセンター前にはじき返し、値千金の2点タイムリーで試合を振り出しに戻した。
続く郡司裕也捕手(27)の打席で二盗に成功。最後は郡司の右安打で、サヨナラのホームを踏んだ。けがによる離脱を乗り越えて1軍復帰を果たした背番号「12」が、レギュラー奪取に向けて、さらなるアピールを続けていく。

当初の予定は代走での起用
敗色ムードが色濃くなりつつあったエスコン内の重い空気を、一気に好転させた。だが、実はこの采配、本人にとっては全く想定外の出来事だった。
2点を追う九回、日本ハムは連打と送りバントで、1死二、三塁という絶好のチャンスをつくり出した。一打同点の場面で、ベンチは打席に代打・吉田を送り込み、そしてネクストバッターズサークルには矢沢を立たせた。だが、当初求められていた役割は、ここぞの場面での代走だった。
〝ぶっつけ本番〟で打席へ 「マジですか!」
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「前の前の回ぐらいから、ずっと代走で準備していて。(九回は)まずは代走で『同点のランナーとして行くよ』と言われていて。でも、2人目のランナーが(松本)剛さんだったので、出番がなくて。そうしたら『バット振って』と言われて、え!マジですか!みたいな。試合中、1回もバットを握っていなかったんです(苦笑)」
吉田の粘りが奏功
あわてて代打の準備をしようとするも、ダグアウトでは一度もバットを振ることができないまま、急いでネクストへ。だが、三振に倒れたものの、吉田が相手投手に8球を投じさせたこともあり、最低限の準備時間を確保することができた。
「吉田が結構、粘ってくれたので『ありがとう』って感じでしたね(笑)」。ジョーク混じりに〝好アシスト〟をしてくれた同学年へ感謝した。
九回2死二、三塁、同点打を放った矢沢が塁上で拳を上げる
新庄監督に寄せる全幅の信頼
想定外の起用でも結果を出せたのは、新庄監督への信頼があるからこそだ。
「ボスが打てると思って、出してくれていると思うので、僕は『ボスが出しているから、打てるでしょ』ぐらいの感じで打席に立っています。打てないと思ったら出さないと思うので、そこは信頼して、割り切って打席に立つというのが大事かなと思います」。指揮官の眼力を、そして自分自身を信じたことで生み出された大きな一打だった。
随所で見せる勝負強さ レギュラー奪取へ再出発
今月20日の1軍再昇格後、先発出場はわずか2試合のみで、代走や守備固めでの起用が主になっていた。だが、その中でも好走塁で決勝のホームを陥れた27日のソフトバンク戦など、チームの勝利に直結するプレーを見せ続けている。
「出場機会が少ない中で、良いプレーができたというのはいいですけど、スタメンで1試合を通して、そして1年を通して、というのが自分の中での目標なので。そのためにも、こういう小さなチャンスをちょっとずつ、ちょっとずつ、つかんでいきたいと思います」。けがによって一度は遠のいたレギュラー奪取のチャンス。その目標を今度こそ果たすべく、さらなる上昇を目指す。
