矢沢宏太 好守連発の裏にあった伏見&松本剛の助言 新庄監督の「下手くそ」発言もプラスに
六回無死、右翼線への二塁打を放った矢沢(左)=撮影・松本奈央
■パ・リーグ25回戦 日本ハム8-5西武(9月26日、ベルーナドーム)
新庄監督の助言でマルチ安打
日本ハムの矢沢宏太投手兼外野手(25)が「1番・右翼」で先発し、華麗な守備と二塁打を含む2安打2得点で勝利に貢献した。
打撃は、試合前の新庄監督からの助言を生かした。
「『タイミングを早く取って、もう少し前で打って』と言われました。バッティング練習でも、きのうからすごい感じが良かったですし、(打撃コーチの)横尾さんにも『マジで良いと思うよ』と話をしてもらっていました。きょうは、ちょっとタイミングを取るのが難しくて、ベンチでもずっとタイミングを取りながらやっていたので、(結果が出て)良かったです」

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守ってはファインプレーを連発!
ただ、この日は打撃以上に、守備で魅せた。まずは二回2死。西武・西川の右翼線への飛球を、快足飛ばしてジャンピングキャッチ。五回1死では、再び西川が放った右翼後方への難しい打球を好捕し、先発の加藤貴を助けた。どちらも、捕球後にフェンスと接触するギリギリのファインプレーだった。
五回1死、西武・西川のフェンス際への飛球をキャッチする矢沢=撮影・岩崎勝
忘れられない〝あの日〟の恐怖
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けがの恐怖心は、簡単には消えない。4月16日のロッテ戦(ZOZOマリン)で左翼の守備に就き、七回に打球を追いかけ、フェンスに激突。左大腿骨内顆骨挫傷および左大腿四頭筋筋挫傷と診断され、負傷直後は「本当に歩けなかった。膝もすごい腫れました」。嫌な記憶が、脳裏にこびりついた。
復帰後のプレーにも当然、影響が出た。「最初は、恐怖心がありました。そうすると、体が固まってくる」
同じ外野手の選手会長からアドバイス
助けてくれたのは、新庄監督、森本外野守備走塁コーチ、そして信頼する2人の先輩だった。
「ボスとも、もちろん話しましたし、(森本)稀哲さんとも話しました。あとは、(松本)剛さんとか、(伏見)寅威さんもアドバイスをくれたりして、だんだんみんなに教えてもらいながら、良くなってきているかなと思います」と感謝した。
同じポジションの松本剛からは、ボールの追い方について、具体的な助言をもらった。
「剛さんは、ボールを最後まで追おうとしすぎると体が固まるから、ある程度のところまで見たら、雰囲気でというか、周辺視野で見たら良いよ、という話をしてもらいました」
9月18日、練習の合間に松本剛(右)と話す矢沢(中央)
ベテラン捕手からも
捕手の伏見からは、「グローブのはめ方」について、貴重なアドバイスがあった。
「寅威さんからは、『矢沢がファインプレーをしていた時も結構、あったじゃん』みたいな話をまずしてもらって、『その時は、試合にも結構、出ていたから、リラックスして守備にいけていたんだと思う』と。寅威さんも、たまに(試合に)出る時に、ちょっと固くなったりするから、グローブのはめ方も変わってくるよ、という話をしてもらいました。(伏見が)僕のグローブをはめた時に、『なんか、きつくない?』となって。グローブをはめる時に結構、ダラダラっと、半分はまっていないぐらいの方が柔らかく使えるよ、と話をしてもらって。確かに、めっちゃはめてたなって気付きました。途中、守備手(守備用の手袋)とかも着けて、ホールド感があるようにしようかなと思っていたんですけど、はめ方を逆にダラダラに、ユルユルにしてみたら、練習でも良い感じになりました。寅威さんのアドバイスのおかげで、ありがたいです」
ボスのダメ出しで肩の力が抜けた!?
新庄監督からは、8月27日の西武戦でネビンの左翼への打球を捕球できず、「あれはもう、下手くそですね」と厳しい指摘を受けた。それでも、矢沢は前向きに受け止めた。
「記事を見て、『下手くそ』って言われましたけど、下手くそって言われたから、次に守る時には気楽に守れました。そもそも、ちゃんと(外野守備を)やりはじめたのは、(昨年の)秋キャンプの守備練習からなので、そもそも自信がないのに、守備固めで試合に出て、変にうまくやろうと思っていた。そこでボスに下手くそと言われて、そうだよな、そもそも下手くそから始まっているんだよなって思えたので、それはそれで良かったです。別にうまく見せようとしなくていいんだって思えました」
㊧24年の秋季キャンプで森本コーチ(右)と居残り特守をした矢沢㊨開幕前には新庄監督(左)から守備のアドバイスを受ける
最後は割り切り 「フェンスに当たったら、それでいいや」
経験豊富な2人の先輩からもらった技術的なアドバイスや、指揮官からのゲキは、恐怖心を払拭する大きなきっかけをくれた。
そして最後はメンタル面。「もちろんメンタルも、『フェンスに当たったら、それでいいや』というぐらいでやっています。当たったら、そういう運命かなって、割り切っている部分もあるので」。チームの勝利のため、矢沢はこれからも全速力で白球を追いかける。