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2025/12/26 12:00 NEW

札幌発の5人組バンド・乙女絵画 見据える未来は「続けていくこと」

道新スポーツへ来社し、インタビューに答えた乙女絵画=撮影・小田岳史

北大の軽音サークルで出会った5人

 まさに、自然体。札幌を拠点にする5人組バンド・乙女絵画を表すのに、ピッタリの言葉だ。昨年、YouTubeで公開した「日が落ちた」のMVは47万回以上も再生されている。自分たちの個性を大事にしながら、歩みを進めてきた5人。その先に見据えるものとは―。

 メンバーの出会いは北海道大学の軽音サークルだった。新川高時代にバンドを組んでいた経験のある佐々木優人(Vo/Gt)を中心に結成された。現在は東京にも赴くなど、精力的にライブ活動をしているが、コロナ禍で活動が制限されていたこともあり「結成当初は今の状況は全然考えてなかったです」(佐々木)。

「生活費を削って」ライブ遠征費やレコーディング代に

 オリジナルを重視する軽音サークルだったこともあり、気付けば自然とバンド活動に没頭していた。ライブの遠征費やレコーディング代など、金銭面でも苦労した。佐々木は「生活費を削って。この2年ぐらいは、ないところから生み出していく、みたいな感じでした」。

 乙女絵画は独特のリズムから、繊細な音を奏でている。いかにして、今の音楽性に行き着いたのか。23年にリリースした1stアルバム「川」を制作する際に、時間を取って自分たちと向き合った。

〝不自然〟な成分を排除して残ったのは「ゆっくり」

 楽曲の土台を作っている佐々木は「自分の不自然なところが出てくる、頑張っちゃっているようなことはしたくない」と自らの〝無垢〟な部分を探し、「どういう音楽が自分にとって自然なのかを感じつつ、どんどん、どんどん(リズムが)ゆっくりになっていった」。

 佐藤嵩飛(Gt/Key) も「(佐々木の)自然な歌い方に合わせていたら、ゆっくりになるよね」。自分たちの個性に寄せていった結果が、今の乙女絵画だ。

 演奏にも繊細さが求められる。金城昂希(Gt)は「ギターは元々テンポが遅いと、五線譜の小節の縦線がなくなっている感じで、速くも遅くも詰め込んだり、散らかしたりもできるので、僕は遅いのは入れやすくもあります。ギターを弾く分に関しては結構好きな部分です」。拍に縛られない、余白のある感覚だという。

ドラム橋本は「全般苦しい」と苦笑い

 一方、リズム隊は難しさも感じている。まだ加入して半年ほどの橋本英知(Dr)は「全般苦しいのは、遅いせいかもしれません」と苦笑い。佐々木はメンバーの声を聞きながら「何で遅くなったんだろう」と笑った。「でも、遅い方がかっこいいという確信がある時もある」。

 昨年はしゃけ音楽会にも出演。野外での演奏、しゃけ音楽会に流れるゆったりとした雰囲気が、乙女絵画をさらに際立たせた。「のびのびできた」(佐々木)。佐藤舜紀(Ba)は「しゃけの鱗を模したような銀の装飾が、遅い曲をやっている時に、風が吹いてブワッとなっているのがハイライト。個人的にはめっちゃ覚えてる」。

 近年、テレビ大陸音頭がバズるなど、札幌のロックシーンは盛り上がりを見せている。佐々木は「テレ大(テレビ大陸音頭)とか、すごいなと思います。バンドをやるところが札幌で良かった」。札幌で出会う先輩や後輩の持つ純粋な音楽観に共感している。

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 RISING SUN ROCK FESTIVALやJOIN ALIVEなどの大型フェス出演は当然念頭にあるが、最優先事項ではない。究極の目標はバンドを続けていくこと。「何が一番、性に合うのかといったら、拡大し続けることではなくて、内向きに頑張って続けていくこと。70歳になってバンドをやっていたらすごい」(佐々木)。乙女絵画が紡ぐ物語は、まだプロローグだ。


■プロフィール 乙女絵画(おとめかいが)2022年、札幌にて結成。たとえ終わりがあるとしても、燃え続けること、見つめ続けること、失い続けること。心を揺れる碧色の炎と、うたの力を信じるバンドです。

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