山県秀 ルーキーが忘れられないあの試合 V逸直前のミス… その涙、悔しさが糧になる
ルーキーながら、貴重な戦力となった山県
1年目から戦力となったドラ5内野手
日本ハムのルーキー・山県秀内野手(23)には、レギュラーシーズンで忘れられない試合がある。
「印象に残っているのは、5月9日の楽天戦か、この前のベルーナですね。悔しい気持ちの方が残ります。性格上なのかもしれないですけど…どれだけ謙虚に過ごせるかだと思っている。自分のいいプレーとか、いい結果が出たのを忘れているわけではないですけど、それよりも悔しい思いをしていた方が今はいいのかなって」
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プロ初失策にスクイズ失敗
最初に挙げたのが、エスコンフィールド北海道で行われた5月9日の楽天戦。チームは2―1で勝利したものの、山県は五回の守備でプロ初失策を犯し、その裏にスクイズ失敗。試合後、ベンチで谷内内野守備走塁コーチと試合を振り返りながら、涙をこらえきれなかった。
「自分にとって、何がいい試合だったかって考えたら、楽天戦は勝っているし、いい試合だった。あれがなかったら、そのままダラッと行っていたのかなって」。気を引き締めるきっかけになった。
5月9日の楽天戦、五回1死一、三塁で山県がスクイズを失敗する
逆転負けの責任を背負う背番号54
もう1つが、9月25日の西武戦(ベルーナドーム)。4点リードの七回から二塁の守備固めで入り、2死一塁の場面でゴロをファンブル。そこからピンチが広がり、一挙5点を奪われ、チームは逆転負け。優勝への望みが、ほぼ消滅した。
「優勝をそれで逃した印象が強い。自分のせいで試合に負けたっていうのが一番、印象に残っています」
今でも先輩右腕に〝謝罪〟
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ワンプレーの重みを身をもって知った。
「あの試合、北山さんの2桁勝利が懸かっていましたし。もちろん優勝もそうですし、自分のミスがほかの人の人生に迷惑をかける。守備に対して、どれだけ練習しても足りないものだと思いましたし、そういうことにあらためて気付いた試合でした。北山さんには『すみません、申し訳ないです』とマウンドで伝えて、それからは毎回、会うたびに(頭を下げて)」
9月25日の西武戦、七回2死一塁で西川の打球をファンブルする山県
積極性を失ったプレー 「恥ずかしい限り」
試合後、恒例となっている谷内内野守備走塁コーチとの反省会では、失策ではなく、その次の回の消極的なプレーについて指摘された。八回、セカンドへ飛んできたフライに、一歩引いてしまい、一塁の清宮がキャッチ。同コーチから「二遊間を守る選手なら引いちゃいけない」と助言された。
「初めてミスでメンタル来たかも知れないです。その時は次、アウトにすることしか考えていなかったですけど、逆転されたという事実が重すぎて、自分の中でどうやったら切り替えられるのか分からなくて。いつもだったらセカンドフライだったんですけど、だいぶ引き気味になっていたので、自分の中でもメンタル来ていたんだなと思いました。自分の自信のなさが出たプレーだと思います。大学3年の時の早慶戦を思い出しましたね。捕球ミスがあって。めっちゃ泣いたっすけど。どんだけミスしても、その後の方が大事。その後のプレーで引いてしまったのが、自分として恥ずかしい限り。入団した時に守備でご飯を食べていきたいと言っている選手ではないなって」
ベンチで谷内コーチ(右)と話す山県
流した涙の分だけさらに成長
その日、宿舎に戻ると、球場で我慢していた涙がどっとあふれてきた。
「ホテル帰ってめっちゃ泣いたんですけど。親からも、泣いた後、その時に自分の一番の力が出せると。その次の試合、ショートで途中から出て、いいプレーを出たのは自分としては成長したなと思いますし、ずっとうまくいく人はいない。その次のプレーとか、その次の試合、どうやってプレーできるか、そこは大学時代と変わっているなと思います」
CSへ心機一転
涙の日々を乗り越えて、今はしっかり前を向いている。「どうやって取り返すしか考えていないです。これだけ自分のせいで負けた試合があるんだっていう1年目の経験をこれからのCS(クライマックス・シリーズ)、来年以降にどうやって返せるかだと思う。本当、愉しませていただいているんですけど、そういうところを忘れずに。愉しい試合もありました。自分、全く活躍していないですけど、(6月15日の)広島戦の0―7からの逆転。(中島)卓さんが2アウトから(四球)出て。(自身は)ショートでスタメンだったんですけど、4タコで何もしていないです。野球やっていて一番、感動して震えました」
ルーキーにとって、悔しさも愉しさも全ての経験が財産。これからも感謝の気持ちを忘れずに、真摯に野球と向き合っていく。
6月15日の広島戦、延長十回にサヨナラ弾を放った田宮(中央)を迎える山県(右から2人目)