１９日にバンテリンドームで行われた中田の引退試合。翌日に試合を控えていたため、会いに行くことができなかった松本剛は映像で見届けた。自然とこみ上げてくる感情があったという。「寂しいというか、やっぱり大将、引退しちゃうんだなというのが正直な気持ちで。能力がハンパない人を僕は間近で見させてもらった。心技体が揃っていないと活躍できないという言葉がスピーチで出ていたと思うんですけど、その通りなんだなというのをすごく感じましたね」

　プロ入り当初、４歳上の中田を見て圧倒された。現実離れした能力を目の当たりにしたそうで「もう何をやってもうまいじゃないですか。守備もうまいし、器用だし、肩も強いし、スローイングも良いし、バッティングなんてね。当てるのも上手ですけど、あんなに飛ばせる人がいるのかとびっくりして。すげーなという感想しかなかった。大将って体も柔らかいんですよ。それもすごい才能」と尊敬の念を込めた。

　引退セレモニーでは栗山ＣＢＯと稲葉２軍監督が登場し、花束を贈呈した。強くて大きな存在だった中田が人目をはばからず、涙した。「中田さんのああいう姿を僕は見たことなかった。感じるものがありました」とグッときた。

　誰にでもいつかは訪れる引退の時。「引退試合をやってもらえる選手は数少ない。本当に愛されていた選手。僕はあんな選手にはなれないですけど、大将の終わり方はかっこいい、すごいなと思います」。３２歳の松本剛は先輩の勇姿をしっかりと目に焼き付けていた。