達孝太がプロ初完投でNPB記録達成 心揺さぶられた2年前の夏「宮西さんも、金子コーチも…」
プロ初の完投勝利を収め、伏見(中央)と抱き合う達=撮影・岩崎勝
■パ・リーグ11回戦 日本ハム2-1西武(6月29日、ベルーナドーム)
デビューから先発のみで6連勝
やはり、最後は根性だ。日本ハムの達孝太投手(21)が、猛暑のベルーナドームでプロ初完投を果たし、無傷の5勝目を飾った。4安打1失点8奪三振、115球の熱投で西武打線を封じた。デビューから先発のみで6連勝となり、NPB新記録を樹立。「(プロ)4年目なので、デビューからはあれですけど、記録をつくれてうれしいです。 伸ばしていけたらなと思っています」と、甘いマスクをほころばせた。
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首脳陣に、投手交代の材料を与えなかった。二回、ネビンに先制ソロを許すも、直後に味方打線が2点を奪って逆転。この日の右腕に、リードは1点で十分だった。150キロを超える直球と落差のあるフォークを軸に、あっという間に試合を進めていった。
「ずっと完投したかった」
最大のピンチは九回。2死から四球と不運な内野安打などで一、三塁とされ、サヨナラの走者を背負った。球数は110球を超え「疲れていました」と疲労もピーク。それでも、「ずっと完投したかったので、気持ちで投げていました」と残りの力を振り絞り、ラストバッターの長谷川を遊ゴロに仕留めた。
新庄監督は暑さを警戒し「この球場は完投なし」と禁止令を出していたが、達は「そう言っていたので、やってやりました」とにやり。「最後、本当にどうなるか分からなかったので、抑えられて良かったです」と安堵した。
九回、最後の115球目を投じる達=撮影・桜田史宏
最先端を取り入れながら根性論信者
端正な顔立ちに似合わず、〝根性論信者〟で走り込み肯定派だ。もちろん、最先端の科学的なトレーニングやデータを重視はするが、「最後に大事なのは根性」と、常々口にしている。
熱中症ギリギリまでの追い込み 「…ちょっと異常でした」
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2年前の夏、心を揺さぶられる出来事があった。当時38歳だったベテラン左腕の宮西が2軍調整となり、酷暑の鎌ケ谷で連日、「熱中症ギリギリ」というところまで自分を追い込み、「えげつない量」の走り込みを行っている姿を目の当たりにした。
「宮西さんは本当にすごいなと、そこで思わされましたね。走る量、ちょっと異常でした」
九回のマウンドに向かう達
しっかり走る人がプロで長くできる
プロ1年目には、やはり黙々と走り込みを行う現役最終年だった金子千尋(現2軍投手コーチ)の姿も見ていた。「金子さんも、めちゃくちゃ走るんですよ。やっぱり、金子さんも、宮西さんも、しっかり走る人がプロで長くできるんだろうなって、そこで思いました」。もともとランニングを大切にしていたが、「宮西さんが真夏にめちゃくちゃ走っているのを見て、僕ももっと走らないとダメだなと思って、そこから走る量を増やしましたね」と大きな影響を受けた。
宮西の〝根性練習〟に刺激された達は、同じく2年前、沖縄・国頭の秋季キャンプで徹底的に自分を追い込んだ。投手陣に課せられた300メートルダッシュ6本のメニュー。他の選手が悲鳴を上げる中、「みんなと同じじゃダメなので」と、5、6本目を自ら400メートルに延長した。最後は顔をゆがめ、疲労困憊(こんぱい)になりながらも、「自分に負けたら終わり」と、死に物狂いで完走した。
完投勝利を決めた達(右)が新庄監督(同2人目)に迎えられる
心肺機能を上げるだけじゃない
達にとって、走り込みの最大の目的は、根性を鍛えることにある。「心肺機能を上げるだけだったら、他にも方法はあるんです。でも、走り込みは自分に甘くなったらできない。普段走るPP(ポール間走)も、(手を)抜こうと思ったらいつでも抜ける。そこで自分に負けたら、絶対バッターにも勝てない。根性が大事だと思います」。
大先輩の背中を見て、走り込みを続けてきた成果はこの日、プロ初完投勝利となって表れた。「次(の登板)も多分、早い段階で回ってくると思うので、次はしっかり完封したいなと思います」。異次元の成長スピードの裏には、他人にも自分にも絶対に負けない、熱い気持ちがある。
ヒーローインタビュー後、ファンの祝福に応える達
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