《鶴岡慎也のツルのひと声》スケールの大きい達孝太 ダルビッシュや翔平とも違う先発完投型
■パ・リーグ8回戦 ロッテ1-4日本ハム(5月30日、エスコンフィールド北海道)
序盤の直球勝負に見た能力の高さ
誰が見てもいいピッチャーだ。達のことに他ならない。前回、ロッテとの対戦で7回無失点と好投していた。さて、今回は…。当然、相手打者は達を攻略するために対策を練ってくる。そこに来て初回の先頭打者。藤原が初球のストレートを打ってサードゴロに倒れた。
早いカウントから直球を狙っていく。そういう対策を講じてきたはずだ。それでも達は序盤の1回り目。真っすぐ多めのピッチングを繰り広げた。それは長いイニングを見据えてのことだろう。序盤から、「かわす投球」をしていては長いイニングは投げられない。何より、狙われていても差し込んだり、打ち取ったりできていた。先発完投型としての能力の高さを感じた。
「かわすリード」に逃げなかったベテラン捕手
ピッチングにはもちろん、リードが必要だ。かわしたくなるところを臆せず直球主体の組み立てでいった伏見もさすがだった。達の武器の一つにフォークボールがある。これが一定の変化にとどまらない。スプリット気味に落ちたり、大きく落差があったり。フォークでも3~4種類あった。
バッテリーに流れを感じた瞬間とは…
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キャッチャーが取りづらいということはバッターも打ちづらいということ。そのフォークを多投させられるのは、伏見の高いキャッチング技術とブロッキング技術があってこそだ。三回の守備。1死一塁で友杉の盗塁を阻止した。カウント2-2からの8球目。フォークがちょうど、取ってから送球しやすいところに抜けてきた。伏見のフットワークと送球能力は素晴らしいのだが、このバッテリーに流れを感じた瞬間でもあった。
組み立てやすいピッチャー
再び達に話を戻したい。私が受けてきた数々の投手の中でも、まれなタイプだ。ダルビッシュや翔平(大谷)とも違う。彼らはスライダーに代表される横変化を主体とする投手だった。達は194センチのスケールの大きい体格から直球とフォークを投げ下ろす。一方で、カーブやスライダーなどの曲がり球でもストライクが取れる。捕手にとっては組み立てやすいピッチャーと言える。
驚くべき成長スピード
そして目を見張るのが成長スピード。投げるたびに良くなってくる。この日も投球練習時から実に落ち着き、自信を持っているように見えた。ゲームを支配する雰囲気も漂っていた。プロの世界は当然、厳しい。常に順風満帆とはいかないだろう。それでも1イニングに大量失点するなど、ゲームを早々に壊してしまうイメージは湧かない。楽しみで仕方ない。
捕手にとって最高の試合
最後に一つ。先発ピッチャーに勝ちが付き、リリーフ陣も皆、ホールドとセーブが付いた。打っては先制点につながる二塁打を放った。そう伏見。キャッチャーとしてこんな最高な日はない。残る3打席の三振のことなど、すっかり忘れていることだろう(笑)。それでいい。