《鶴岡慎也のツルのひと声》本塁打されたスライダーで奪った三振 エースの意地を見た伊藤の投球
■パ・リーグ6回戦 ソフトバンク5-2日本ハム(5月20日、エスコンフィールド北海道)
反撃ムードがしぼんだ盗塁死
野球にはアウトになってはいけない場面が存在する。この試合でいえば、2-3の七回。2死から1番の郡司がヒットで出て、代走に五十幡が送られた。打席には万波。ここで五十幡がスタートを切り、盗塁失敗。反撃への流れがストップしてしまった。
万波に勝負させるべき場面
難攻不落のモイネロに対し、一番タイミングが合っていたのが万波だった。1点を追うこのシーン。 ベンチから、グリーンライトのサインが出ていたのだろうが、絶対にアウトになってはいけない。むしろ、一塁にいた方が万波と勝負しやすくなる。あのシーンは万波にモイネロと勝負させる場面であって、五十幡が相手バッテリーと勝負する場面ではなかった。勝敗を左右するキーポイントとなった。
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なぜかタイミングが合う好投手
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相性も存在する。伊藤からすれば、川瀬(昨季は19打数7安打で打率.368)。この試合では2-2の六回、右翼ポール際に勝ち越しソロを浴びた。
川瀬と言葉を交わしたことがある。なぜ伊藤から打てるのか聞いてみた。答えは、「なんでなんですかね? タイミングが合うんですよ」。そうなのだ。タイミングが合うのだ。
誰もが打ちあぐねる好投手でも、なぜかタイミングが合うバッターがいるものだ。スライダーがいいコースに決まっても、詰まってヒットにしたり、切れ、コントロールともに抜群のストレートをファウルにできたり。チェンジアップが浮こうものなら、長打にするなど。
次回につながるエースの意地
私も現役時代、ロッテやヤクルトで活躍した成瀬善久投手にタイミングが合った。ユニホームを脱いだ後、顔を合わせると言われたものだ。「僕の時、めっちゃ打ちましたよね」と。それに対し私は「おまえの顔を見たら、調子が上がるんだよね」と冗談めかしたものだ。
ただ、伊藤。八回の第4打席でその川瀬から空振り三振を奪った。しかも六回に一発を食らっていたスライダーで仕留めた。これぞエースの意地。伊藤は結果、5失点したのだが、9回を投げきった。必ず次の登板につなげてくれるだろう。
存在感を示したベテランの伏見
あとは伏見。二回の先制2点打は見事だった。チェンジアップにカーブ、インコースへの直球とすべてのボールがハイレベルなモイネロ。甘くなったスライダーを強引に引っ張らず、基本通りセンターへ打ち返した。
もともとバッティングはいい。五回の第2打席ではきっちり送りバントも決めた。投手陣を巧みにリードし、守備面での貢献も大きいベテラン。まだまだ存在感は光る。