■8月12日、札幌・宮の沢白い恋人サッカー場
岩政大樹監督(43)との契約解除と、柴田慎吾氏(40)の新監督就任を発表した北海道コンサドーレ札幌の石水創社長(43)は12日、取材に応じ監督交代について語った。一問一答は以下の通り。
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ー監督交代の経緯は
「ここまで終わっての結果です。今の11位、勝ち点34という結果。あとは戦術的な部分です。岩政監督が当初、掲げていたミシャサッカーからの継承と前進、攻守において圧倒する攻撃的サッカーが表現されなかった。長崎戦の結果も大きな要因に挙げられます」
ー急な方針転換。このタイミングになった理由と決定打は
「シーズン開幕に4連敗して、その後は1勝1敗1分けという状況が続いた。当初はケガ人など戦力として難しさがあった。後半戦は3連勝して結果が出始めたとはいえ磐田戦で大敗した。そこも1つ交代のタイミングではあった。その磐田戦が終わった後に岩政監督と竹林強化部長と3人で話をした中で、岩政さんから『これからは攻撃的に行く。今の戦力であれば戦術、システムを変えて攻撃的アプローチができる。練習も変えていく』という話があった。ここは信じて、3週間の中断が明けてから全力でサポートしようと決めた。再開した8月2日の鳥栖戦は1-0で勝ったが、中身は守備的になっていた。内容は上回れた。さらにもう1つ。6月から1週間に1度、試合後に選手、スタッフ、コーチにコンディションサーべイ(心身の健康状態を把握する調査)というものに取り組んでもらった。8月2日のコンディションサーべイが一番悪かった。何人かの選手は、私の方に直接、面談がしたいとなった。今コンサドーレにいる選手は、ミシャさんの攻撃的サッカーに惹かれて入った人が多い。今のサッカーは、そこからかけ離れている。クラブとしてどう考えているのか?という質問が出て、クラブとしても攻撃的で見ている人、やっている人が楽しいサッカーを目指しているという話をした。その中で鳥栖戦は結果が出て、岩政さんから『これがコンサドーレの目指しているサッカー。理想のサッカーに近づきつつある』という言葉があった。それに対して、それは違うと私も思った。そういう経緯があります」
7月12日の磐田戦で試合の行方を見守る岩政監督
ー鳥栖戦の時点で向かう方向にズレが出た。長崎戦は最後のテストだったか
「長崎戦は結果いかんで、と考えていた。それは私だけでなく強化部、取締役、社外取締役、小野伸二さんの意見も聞きました。あとはコンディションサーべイですね。スタッフ、選手の気持ち的なところも加味して、長崎戦で結果が出なければ解任しようと思って臨みました」
ー監督にはいつ、どこで伝えたのか
「私からコミュニケーションは取れていないです。試合が終わって札幌に戻って、クラブハウスに着いたタイミングで竹林部長から岩政さんに伝えました」
ー反応は返ってきたか
「そうですね。竹林さんからは驚いた様子だったと返ってきました」
ー意思決定のプロセスはどうだったか
「強化部とは毎日のようにコミュニケーション、連絡を取りながらチームの様子、試合後のコンディションを聞いています。社外取締役も含めて情報共有して、随時コミュニケーションを取っています」
ー後任は柴田監督。たくさん候補がいたのか一本化していたのか
「この世界は監督候補のリストはある。その中で実際に接触した人、話をした人もいる。柴田さんが適任と感じたのはコンサドーレのフットボールフィロソフィー、『走る、戦う、規律を守る、その笑顔のために。ミシャさんからの継承、コンサドーレのパーパス(目標、存在意義)である赤黒の輪で北海道の夢をつなぐ』を一番体現できる人だから。柴田さんはアカデミーで指導者としてやってきたし、人柄の部分も含めて今のコンサドーレに必要な監督と思って決めました」
初練習で声をかけながら選手の動きを見る柴田慎吾新監督(右)
ー柴田監督には社長やフロントの考えを提示するのか、それとも元々持っている考え方を進めてほしいか
「両方あります。ミッションとして、今年はJ1に昇格する。そこは必ず達成したいとクラブから提示してます」
ー岩政監督時代に中長期的なビジョンを持って育成、チーム作りを進めてきた。一方で残り13試合を戦う。先ほどの話では、今季の目標達成を優先するという理解で良いか
「両方です。短期的な部分もあります。一番大きいのはサッカー観のズレです。岩政監督の中ではこの数試合、コンサドーレのサッカーが表現できている。ミシャサッカーからの脱却というような話があった。当初は継承と前進を掲げながらも、ミシャサッカーからの脱却となった。そこを私は看過できなかった。全員ではないですが、選手からも同様の意見があった。賛成反対いろいろあるが、今の選手たちは攻撃的サッカー、ミシャさんが残してくれたもの、見ている人もやっている選手も楽しいサッカーを表現したいと言って残ってくれている。認識のズレが大きかった」
ーU-18からの昇格。今後のアカデミーは
「これはアカデミー強化にもつながると考えている。柴田さんはアカデミーを見てきたので、これからどの選手がプロとしてできるのか。その成長も含めて、トップチームとアカデミーの交流が増えると思う。柴田さん自身がアカデミーに落とし込むコミュニケーションも増える。結果的にアカデミー強化につながると思っている」
ーこのタイミングでの交代に驚いているファンは多い
「私たちはJ1昇格を諦めていないです。そこが絶対的な目標です。あと13試合。PO含めて諦める数字ではない。秋田戦以降が勝負。今朝も選手、コーチ、スタッフに向けて同じ船に乗ってチームとして戦っていこうと話した。ある意味、同じ船に乗れないのであれば去ってもらっても構わないという強い覚悟を持っています。サポーターの皆さんも是非、ついてきてほしいと思っています」
ー若い監督。期待は
「Jの監督の中で40歳は一番若い。ただ世界的に見ると決して若くない。初めてのトップチームになるが、どんな名監督にも初めてがある。コンサドーレの目指すサッカーを一番体現できる監督だと思う。人間的にも本当に素晴らしい方。楽しみにしていただきたい」
ーOB監督
「選手時代の柴田さんがCBとして活躍する姿を見てきた。闘莉王選手にヘディングで勝ってゴールを決める姿も見た。すごく感慨深いです。宮澤選手と同期なので、そこも感慨深い。全力でサポートしたい」
2008年4月29日のJ1浦和戦でヘディングシュートを決めるDF柴田(右)
ー残り13試合での交代。迷いはなかったか
「迷いはすごくありました。ジュビロ戦や開幕4連敗とタイミングはいろいろあった。岩政監督は熱く、選手思いというのも伝わっていた。情と結果、今の結果と将来のコンサドーレが目指すサッカーを比べて、葛藤はありました。ただ未来を見据えて、今決断しようとなりました」
ー残り試合での勝ち点勘定は
「具体的な勝ち点は挙げられない。J2上位は拮抗していて、どこが上位に行くか分からない。一試合一試合勝ち点を積み重ねていきたい。柴田監督からは今朝、マイケルジョーダンのステップバイステップという名言があった。一歩ずつ進んでいくことが大事だと。今回はその一歩を大きくしようという話があった。私たちもそれを全力でサポートしたい」
ー来季は秋春制以降。その先も見据えての交代か
「そうですね。柴田さんを全力でサポートしたい。ミッションはJ1昇格。シーズン途中で難しい状況からのスタートになる。来季も見据えて、今回ミッションが達成できなかった場合も柴田さんは本当に素晴らしい人間性なので、これからの経験がクラブにとっても非常に大きな財産になる。どんな結果になっても、なんらかの形で一緒にコンサドーレのためにやっていきたい」
ーユースの監督は
「今回は倉持チーフが監督兼チーフに昇格します」

ー岩政監督に声を掛けられたコーチもいる
「現段階ではコーチ陣を変えずにやっていきたい。柴田さんのスタートは現体制でやっていきます」
ーサッカー観の違いが交代の理由と強調した。今のサッカーは攻撃的にはなってないか
「攻撃的、守備的というところでなく、一番大きいのは我々が目指すサッカーや選手がやりたいサッカーができていない。その中で岩政さんはコンサドーレのサッカーができつつあると言うことに対してクエスチョンマークが付いた。そこにサッカー観の違いが表れている」
ー柴田監督にお願いしたことは
「コンサドーレ歴が長いので思いは伝わっている。今季のミッションであるJ1昇格も言わずもがな分かっている」
ー鳥栖戦後の岩政監督の発言にクラブとのギャップがあったのか
「そうですね。選手も感じる部分があった。コンディションサーべイの結果も、勝っているにも関わらず、よろしくなかった。マネジメントでも岩政さんは調子が良い選手を褒めてくれて、次の試合は出すからと言ってくれるのに、蓋を開けたら控えだったりする。言っていることとやっていることのズレがあった。それも散見された。これも勝っていれば表面化しなかったけど、結果が出ないと小さなマネジメントが表面化してしまう」
ー鳥栖戦を見た段階で、長崎戦次第という考えがあったか
「もし結果が出なければ、そういう判断をしようと思っていた。最終的な決断は私だが、強化部や役員、コンディションサーべイの意見を含めて決めました」
ー長崎戦は逆転負け。勝っていても内容次第では
「その可能性もありました。引き分けでも今回の決断をしたと思います」
8月12日の長崎戦で逆転負けを喫した札幌
ー小野伸二さんからのアドバイスは
「私も強化の人間も、密に連絡を取り合っています。小野さんは岩政さんどうこうよりも知見や経験、人脈を持っているので、フェイエノールト時代はこんな話がありました。というのを助言としてもらった。柴田さんになったときは、こんなメリットがあり、経験値としてはデメリットになるかもしれません、とアドバイスされました」
ーコンディションサーべイとは
「選手が個人、チームのコンディション、戦術理解度などを5段階で評価します。そして直接話したいことがあれば監督、強化部、社長、あるいはコンプライアンス案件などを選んでコメントを残せるものです」
ー体だけでなくモチベーションなどを伝える機能か
「モチベーションもそうですし、戦術理解度であればサッカーの部分になります。これは石屋でも導入しています。QRコードから入力してもらう。試合が終わったオフ明けの朝に必ず選手、スタッフ、コーチに出してもらっています。きょうは変わったばかりなので明日実施します。コメントが楽しみです」
ーいつから始まった
「6月からです。石屋では1カ月に1回、パートさんを含めた全従業員でやっている。声に出ないような心の部分、内省の意味も含めて客観的な意見を知りたい。個人ではなく選手、コーチ、スタッフで傾向を出すようにしてます。私や取締役の近藤、竹林強化部長など見られる人は限られています」

ー選手との面談は8月か
「鳥栖戦の後です。選手からは一度も意見がなかったが鳥栖戦後に何人かの選手から直接、社長に話したいことがあります、となった。社長が目指しているスタイルはどういうものですか?という質問でした」
ー今季はフォーメーションが変わった。そのような話もあったか
「戦術的な部分は、僕がサッカーの素人なので強化部に任せています」
ー監督選定に当たって外部との接触があったと話した。長崎戦後に岩政さんに伝えたことを加味すると、いずれ別れる形になると考えていたのか
「これは迷いです。外部との接触があったのはジュビロ戦の後です。その後に岩政さんと話をして、目指しているサッカーの確認と、今後はもっと攻撃的な戦術を練習でも取り入れるという決意を聞いたので、そのときは信じて任せようと決断しました」
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