《ハム番24時》12月29日 拡大版①
来年、高卒5年目となる松浦が1軍で活躍した際に、書こうと思っていた話がある。今年の春季キャンプ中に入ったブルペンでの経験談だ。左腕は「一番、プロを感じた」と衝撃を受けたという。現役ドラフトでの巨人移籍が決まり、掲載する機会がなくなりそうなので、この場を借りて記事にしたい。
キャンプ中盤に1軍昇格を勝ち取り、沖縄・名護でブルペン入りした松浦は、初めて伏見を相手に投球練習を行った。「これまでは、試合の時しか受けてもらったことがなかったんです。(伏見)寅威さんとのピッチング(投球練習)は、もう本当に試合のためのピッチングでした。試合に向けて仕上げていくための本当のピッチングというのを、プロに入って、今年の春のキャンプで初めて感じました」
伏見とのブルペンは、ラプソードなどのデータを確認しながら球質を上げていくような練習方とは、一線を画すものだった。「例えば、きょうはフォークを投げるという課題で、ラプソードを使いながら、数値を見ながら投げるピッチングもあるんですけど、寅威さんとは本当に試合に近いピッチングができた。『ここに投げきってほしい』ということが伝わったり、『そのスライダーは絶対にストライク入れろ』と言われたり。試合でスリーボールになったり、絶対にストライクを入れるしかない場面が来ると思うんですけど、そういう感覚、雰囲気をつくってくれる。30球ぐらい投げたんですけど、めっちゃ疲れました。それが、寅威さんとの一番の、プロを感じた思い出です」。話してくれた言葉には、感謝の思いが強く込められていた。
この時のブルペンで、技術面の助言も受けたという。「僕はパワーピッチャーなんですけど、でも『とにかく(コースの)分割はしっかりしてほしい』と言われました。『高め低めか、内か外か、どっちかで良いから、2分割にできていれば抑えられるから』と言われて。目指す方向性が分かりました」と、伏見の言葉を指針に練習を続けてきた。
松浦にとって伏見は当初、テレビ画面の中の存在だった。「最初はゲームの人、テレビで見ていた人がオリックスから来て、うわーって思いました(笑)」。ただ、関われば関わるほどに、心を引かれていった。「ピッチャーのことを思ってくれるキャッチャー。本当にキャッチャーっぽいキャッチャーだなと思っています。初ホールドは寅威さんと組んだ時だったんですけど、あとでヴィトンのローファーを買ってもらいましたね」
松浦は宮城出身で、小学生の頃に旭川へと引っ越した。正確には道産子とは言えないが、伏見は他の北海道出身選手と同様に可愛がってくれたそうだ。「キャンプで〝道産子会〟にも呼んでもらいましたし、結構、気にしてくれていたかなと思います。2年前に、ネクストサークルの野球教室に寅威さんが誘ってくれて、初めて絡んだのはその時ですね。寅威さんを見ていると、初めて会う選手とか、1年目の高卒の選手だったりにも、逆に積極的にめちゃくちゃ声をかけて、コミュニケーションを取っていくスタイルでした。ピッチャーは普段からコミュニケーションを取っている方が投げやすい。そのへんはすごく感じました」と、優しい先輩の背中を見続けてきたという。
ご存じの通り、伏見はトレードで阪神に移籍した。来季は伝統の一戦で、二人の対決が実現したら良いなと、遠くから期待している。