宮西尚生 投げ抜いて到達した今年で最後の覚悟― ベテランの逆襲は〝最後の悪あがき〟
七回2死三塁から登板した宮西が無失点に抑える=撮影・桜田史宏
■パ・リーグ12回戦 オリックス0-7日本ハム(5月15日、エスコンフィールド北海道)
日本新の880試合連続救援登板
日本ハムの宮西尚生投手(39)が15日、エスコンフィールド北海道で行われたオリックス戦の七回に救援し、元中日の岩瀬仁紀氏(50)を抜く880試合連続リリーフ登板の日本記録を樹立した。プロ18年目のベテランは、引退の覚悟を携えながら、腕を振り続けている。
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通算登板数は日本歴代4位。昨季は前人未到の400ホールドをクリアした。14年連続の50試合登板もやり遂げている。現代では追随する投手が見当たらないほど、抜きんでた数字を残す。すでに日本球界のレジェンドだ。
七回2死三塁、オリックス・西川を二ゴロに打ち取った宮西
現役引退は自分で決める
近年、球団幹部とは、頻繁に対話を重ねている。吉村チーム統括本部長から「続けるか、続けないか、自分で決めていい」と伝えられているそうで「クビになっていく選手もおる中で、こんな年までやらせてもらえるのはありがたい。自分で引退を決めさせてもらえるとなったら、そんな幸せなことはない」と深く感謝する。
実際、30代半ばを過ぎてから、ユニホームを脱ぐ時期を考え始めていた。2024年2月の沖縄キャンプでは、この年限りの引退を覚悟し、国頭と名護の球場に向かって「ありがとうございました」と頭を下げた。
2月23日、名護で行われた楽天とのオープン戦に登板した宮西
1年後、今年の春季キャンプ。同じように別れを告げようと考えていたが「それどころじゃなくて。台湾遠征の荷物出しに追われて忘れていた」とおどけた。ただ、本音は違う。「これが最後やと思っているよ。その気持ちは常に持っとかんといかんから。名護での登板(2月23日のオープン戦)は、沖縄のみんなの前で最後かなと思って投げた」と静かに言葉をつないだ。
ファイターズに育ててもらったから
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ドラフトで指名を受け、入団した球団に恩義を感じている。「ファイターズに育ててもらったから、長く続けられた」と断言。だからこそ、チームに貢献できなくなったら、潔く現実を受け入れようと思っている。「自分で決めていいよと言ってもらっているけど、吉村さんに一刀両断してほしいところもある。どこかで引き際は決めないといけないと思っていたけど、中途半端に結果が出たから、どうしようもなくなっちゃったんよ」と、胸の内を笑って明かした。
22年は左肘痛に悩まされ、肉体的にも精神的にも追い込まれた。新人の年から続いていた50試合登板も14年で途切れた。左肘関節のクリーニング手術を経て臨んだ23年、春先から飛ばしたが、夏場に失速した。
24年は大胆に思考と投球スタイルを転換した。チェンジアップの習得に時間を割き、勝負を懸けた。開幕は2軍も6月中旬に1軍昇格すると、19ホールドをマークして、2位躍進に貢献。今季は開幕1軍入りし、重要な場面でマウンドを託されている。40歳を目前にして、若手に負けない輝きを放っている。
24年8月4日のソフトバンク戦で史上初の400ホールドを達成した宮西(中央)
個人目標はもうないよ
痛みと共存し、あがき続けてきたプロ野球人生。「もう俺、モデルチェンジはできん。チェンジアップが最後の悪あがきやから。もう、これでダメだったら納得できる。400ホールドを達成してから、個人目標はもうないよ」。いつまでやれるか、自分でも分からない。今、ほしいものは、リーグ優勝、日本一。もう、それしかない。
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