《岩本勉のガン流F論》宮西の力投で思い出した30年前のワンシーン。雨の倉敷で…
■パ・リーグ9回戦 日本ハム2-2オリックス(5月7日、京セラドーム大阪)
ここまでの今季ベストゲーム
これぞプロ野球。ここまでの今季ベストゲームと言ってもいい試合だった。互いに痛み分けとなったのだが、投手陣は皆、持ち味を発揮した。
特に日本ハムはベンチ入り全10人が登板。奈良間がアクシデントに備え、投球練習を開始したほどだ。スコアボードに「0」を刻んでいった頼れるリリーバーだち。河野も2点こそ奪われたが、良いボールを投げていた。
ファンを魅了した「しぶとい」守備
野手陣も見事だった。守備にも「しぶとい」というフレーズがピタリとハマるゲームだった。とっさの送球、挟殺プレー、次の塁を許さないフォーメーション。野球のだいご味が詰まっていた。ファンの方々も納得だろう。
一番シビれたベテラン左腕の火消し
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
総力戦となった一戦。ディフェンス面でいえば、一番シビれたのが十回の守り。無死一、二塁で宮西がマウンドに上がったシーンだ。迎えた先頭の代打・若月に左前打され、満塁となった。それでも5番の森を空振りの三振。頓宮を捕邪飛に打ち取って、勝ち越し点を与えなかった。
1995年8月3日のダイエー戦
森を空振りに仕留めたボールは外のスライダーだった。この瞬間、30年前のある記憶がよみがえった。1995年8月3日のダイエー戦。倉敷でのゲームだった。4-3の1点リードで九回のマウンドには抑えの金石昭人さんが上がっていた。1死満塁でフルカウント。ここで突然のスコール。試合は中断となった。
伝家の宝刀で秋山をダブルプレー
私はこの日、上がり(登板機会がない日)で、球場にいながら戦況を見つめていた。中断中、金石さんと捕手の山下和彦さんは一言も言葉を交わさなかった。監督やコーチもバッテリーに歩み寄ることはなかった。20分ほどだろうか。中断が明けてプレーボール。そこで投げ込んだのは金石さんの一番のストロングボールでもあったスライダー。強打者の秋山幸二さんを4-6-3のダブルプレーに切って取り、逃げ切った。
バッテリーに言葉はいらない
試合後、私は2人の先輩に聞いた。金石さんは「山下ならスライダーのサインを出すと思った」。山下さんも「スライダー以外なら首を振ると思った」。バッテリーの思い描くものは一緒だったのだ。
さすがはプロや! ナイスゲームやで!
さて宮西。彼はどのボールでここまでメシを食ってきただろうか。そう、スライダー。最も頼りになるボールであり、後悔しないボールがそれだ。さすがはプロや! タイプの違う10投手を巧みに操った伏見も実に見事だった。
ナイスゲームやで!両チームをたたえたい。