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2021/11/09 10:23

【アーカイブ・2020年連載企画】逆境を乗り越えよう⑫  古田史郎 入れ替え戦中止も前向きに「強くなるチャンス」

 特別企画「逆境を乗り越えよう」の12回目は、男子バレーボールV2ヴォレアス北海道の古田史郎主将(32)が登場。昨季は2位以内を確定させながら、新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月中旬に行われる予定だったV1との入れ替え戦が中止となり、悔しさだけが残った。Vリーグ参入4年目となる新シーズンは、V1昇格は絶対条件。多くの逆境を乗り越えてきた北の大地の”銀狼”は今季、「もっと強くなります」と力強く誓った。(聞き手・中田愛沙美)
(本連載企画は2020年6月に掲載されたものです)

コロナウイルス感染拡大の影響で

 昨季は入れ替え戦を戦う前にV1昇格の夢が断たれ、逆境の真っただ中にいたヴォレアス北海道の古田主将が今季に向けて前を向いた。
 「悔しさや、もどかしさはありますが、強くなるチャンスだと前向きに捉えました。もっと強くなるし、もっとうまくなる。もっともっとできる。自分もチームも、そう強く思っています」

わずか3年で東レを退団「若かった」

 古田主将自身「逆境しかない」人生を歩んできた。函大有斗高卒業後、法大在学中に夢だった全日本入り。鳴り物入りでVリーグの強豪・東レに入団したが、わずか3シーズンで退団。生まれ故郷の北海道に帰省した時だった。
 「ケガもあったし、若かったなと思います。東レを離れて、引退やこの先何をしていくのか、考える時間もあった。近所の大学にお世話になって、体を動かしていると、学生たちがたくさん質問をしてきた。自分も昔は気になることがあれば、誰かに聞いていた。当たり前のことかもしれないけれど、当たり前でなくなっていた。そういう環境で気付かされました」

さあ、これからという矢先にケガ悪化

 札幌市内の自宅近くにある大学で練習参加するうち、バレーボールへの情熱は失っていないことに気付いた。新たな目標を見つけ、さあこれからという矢先だった。股関節痛が悪化してしまい、歩けなくなるほどの状態にまでなってしまった。
 「海外でプレーしてやりきったら、北海道でチームづくりに着手しようと思っていたのに…。手術するのも難しくなってしまった。海外挑戦を諦めて、チームを作ることを考えました」

引退を考えたものの…

 引退も頭をよぎる中、手を差し伸べてくれたのは東レ退団時から熱心に声を掛けてくれたV1・ジェイテクトだった。
 「ケガをしてもいいし、うちでやってくれないかと言ってくれた。最初は甘えてリハビリをさせてもらいました」

ヴォレアスでチームをけん引

 17年、旭川を本拠地とする新規参入のヴォレアスに加入。腰の椎間板ヘルニアにも苦しみながら、大黒柱としてチームをけん引した。初年度のVチャレンジリーグⅡで優勝し、翌年は新リーグのV3で優勝し、V2に昇格。昨季のリーグ戦は19勝1敗で2位だった。
 「V1に昇格できれば、(初優勝した)ジェイテクトと対戦できる。『よし』と思っていた矢先の入れ替え戦中止でした。自分たちはもっと強くならないといけない。強くなって損はない。今は突き進むだけです」

「さらなる成長した姿を届けたい」

 新型コロナウイルスの感染は拡大し、先行きが見えない中で入れ替え戦中止が決まった。その後も猛威を振るい、スポーツ界や芸能界にも広がっていった。
 「バレー界は健康被害が出ていないので、中止というVリーグ機構の判断は正しかったと僕自身は思う。ともに戦ってくれたみなさまからしたら、納得いかない部分もあるかもしれない。でも、こういうことがあったから『もっと強くなります』とお約束できる。さらなる成長をした姿をお届けしたいです」

 ヴォレアス北海道の日本一を目指すという挑戦は、これからが本当の勝負だ。

■古田 史郎(ふるた・しろう) 1988年1月29日、函館市生まれ。函大有斗高卒業後、法大在学中に全日本入り。09年のワールドグランドチャンピオンカップでは、銅メダル獲得に貢献した。大学卒業後はVリーグ・東レに入団。ジェイテクトを経て、17年に発足したばかりのヴォレアス北海道に加入し、主将兼エースとして、チームを引っ張っている。190センチ、84キロ。ポジションはオポジット。

(2020年6月17日掲載)
 

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