≪2021F検証㊦≫ 大海の活躍が希望に
暗い話題ばかりではない。ドラフト1位で入団した鹿部町出身の道産子ルーキー・伊藤が、未来への希望を見せてくれた。開幕から先発ローテーションに入ると、パ・リーグの新人ではただ一人、10勝に到達。規定投球回をクリアする146回を投げ、防御率はリーグ4位の2・90をマークした。さらに東京五輪代表にも選ばれ、金メダル獲得に大きく貢献した。
伊藤が並みの新人と違うのは、1年目から“変化”を恐れなかったところだ。開幕当初はスライダーを武器に、歴代新人最多記録に並ぶ23イニング連続三振を奪うなど打者を翻弄した。しかし、後半戦は意図的に得意球の割合を減らした。
「スライダーだけに頼ってしまうと、引き出しが見えてこない」と、現状維持より進化を求めた。代わりに増えたのが、五輪期間中に同学年の森下(広島)を質問攻めにし、改良したチェンジアップ。「握りを教えてもらって、今までの握りからちょっとずらしただけで良くなった。本当に細かいところで変わる」。常に「探究心」を持ち、自らを変化させることで、1年間戦い抜いた。
10月14日の西武戦ではサイドスローを披露するなど、いいと思ったことはためらいなくトライする。厚沢投手コーチは「キャッチボールでは普通真っすぐの状態を確認するんだけど、伊藤は違う。新しい球種を投げて練習している。ブルペンで投げて、そのまま試合で投げられる感性はダルにそっくり」とダルビッシュ(パドレス)の名を挙げ絶賛していた。
2年目の来季は上沢、加藤らとともに、先発投手陣の柱となることが期待される。新庄新体制への変化も「普通にやっても面白くないという感じがあると思う。そういうのは好きなので、ついていく自信はある」とポジティブに捉える右腕に、死角は見当たらない。
(この連載は日本ハム取材班が担当しました)