アマ野球
2023/08/24 05:00

【札幌6大学野球】高校時代は控えだった北海学園大・工藤&高谷150キロ超コンビが14年ぶり秋季リーグVへ導く 

北海学園大の工藤(右)と高谷の150キロ超コンビ(撮影・西川薫)

春季リーグ4位からの巻き返しへ 2年生コンビが急成長

 札幌6大学野球1部秋季リーグ戦が、8月25日から札幌円山で開幕する。春は4位に終わった北海学園大が、2人の豪腕コンビで巻き返しを図る。最速155キロの工藤泰己投手(2年、北海)と同153キロの高谷舟(2年、札幌日大高)の2人は、高校時代は共に控え投手で注目を集める存在ではなかったが、同大の島崎圭介監督(52)が2人の将来性を高く評価して1年時から積極的に起用。その期待に応える形で2人も1年間で急成長を遂げた。この夏は系列の北海高校が夏の甲子園で2勝。指揮官を含めて20人以上のOBが後輩の活躍にも刺激を受け、14年ぶりの秋優勝、さらには41年ぶりの明治神宮大会出場を目指している。

甲子園で奮闘した後輩の北海高から刺激

 工藤は母校・北海の健闘ぶりをしっかりとチェック。「甲子園で3回も試合できるなんて、すごい羨ましいなって思ってました。熊谷は1年生の時に一緒にプレーしてたので、すごい選手になったなと思います。この秋は最低3勝はしたい」。ユニホームは同じ「HOKKAI」。夏の興奮を、今度は大学が引き継ぐ。

工藤は4キロのダンベルで指先強化 MAX155キロ

 球速は1年間で7キロ増。8月7日のオープン戦で自己最速の155キロをマーク。平均球速も147.9キロと高い値を示したが、春は150キロ超もいわゆる棒球。0勝3敗で終わり、直球だけでは通用しないことを「思い知らされた」と、自身の投球を見つめ直した。「春はリリースが押し出す感じだった。回転を与えるんだったら、鍵爪みたいな感じで投げなきゃいけないんですけど、鍵爪で投げるためには、ホールド力をつけなきゃいけない」と、4キロのダンベルを指先で持つトレーニングでリリース力を鍛えた。
 

最速155キロの工藤(北海学園大硬式野球部提供)

 

回転数は2500弱 球速差70キロのスローカーブも習得

 加藤拓光アナリストによると、投球数値を計測するラプソードでは、春は2000回転に満たなかった回転数がプロ顔負けの2500回転に近づいたという。さらにホップ成分を示す投球効率も、限りなく100パーセントに近い数値。さらに緩急をつけるために85キロ前後のスローカーブを修得し、球速差はなんと70キロ。工藤は「球速もここまで上がってきて、実力もついてきてはいると思う。春先は全然ダメだったので、やり返したい」と、リベンジに燃えている。

高谷は瞬発系トレで体にキレ MAX153キロ

 一方、高谷も春のリーグ戦で入学時から7キロ増の153キロをマーク。主に後ろを任されたが1勝2敗。「1勝できたことは良かったんですけど、自分のせいで2回負けてる。そこを秋にもっと良くしたい」。瞬発系のトレーニングで体にキレを求め「全力で投げなくても、ある程度、出力が出せるようになった」と手応えをつかんでいる。「チームとして神宮ベスト8っていう目標があるので、任された場面をゼロに抑えて、チームに貢献できれば一番いい」と、先発、救援どこでも歓迎の姿勢だ。
 

最速153キロの高谷(北海学園大硬式野球部提供)

 

中学時代はチームメート 高校3年時は南大会決勝で対戦も…

 2人は中学時代、軟式のクラブチームでチームメート。当時は工藤が捕手、高谷は外野手。エースは前川佳央投手(日大2年、札幌日大高)で、全国大会で16強入りした。それが2人とも高校で投手に転向。2年秋は北海、3年春は札幌日大高が全道大会で優勝。最後の夏は、工藤が北海の背番号11、高谷は札幌日大高の背番号10を背負い、南北海道大会決勝で激突。最後は北海が制したが、北海は木村大成投手(19、現ソフトバンク)、札幌日大高は前川投手というエース対決の影に隠れ、2人に登板機会が訪れることはなかった。

「4年間で成長してドラフト1位でプロに行く」工藤

 工藤はその時の悔しさが今につながっているという。「自分が4年間で成長してドラフト1位でプロに行くという目標の原動力が、高校の時の悔しかった思い。木村っていう絶対的な投手がいたので、なかなか投げることもできませんでした。甲子園には2回行くことはできましたけど、僕はチームの力になれていなかった。その悔しい思いを忘れずに今も練習することができているので、今思えば良かったかな」と振り返る。

高校時代のエースと全国で対戦し「やるからには勝ちたい」高谷

 高谷も高校時代は忘れたくても忘れられない。入学時、野手では通用しないと感じ、自ら投手に名乗り出た。「高校3年の夏、2回投げたけど、準決勝の国際情報戦で、1アウトも取れずに交代したのが、すごい悔しかった」。大学在学中に全国大会に出場すれば、中学、高校時のエースだった前川投手との対決が実現する可能性がある。「全国大会でやってみたいですし、やるからには勝ちたい。お互い成長して、良い投球ができれば一番」と神宮球場で再会するのを楽しみにしている。

 投手王国をけん引する存在になる―。春と比べて秋は4、5人の投手が成長し、投手7人のベンチ入り枠を12、3人で争う状況だという。工藤は「差を縮められるのが嫌い。自分と同じ近くになられるのが嫌なので、もっと遠くの存在になりたい。誰にも負けたくない」とキッパリ。高谷は「どんな勝ち方でもいいんで、勝っていれば何でもいい。秋が終わった時に、一番高い順位でいられれば」。投手キャリアが浅く、まだまだ発展途上の2投手が、秋の大学野球界を湧かせてみせる。

あわせて読みたい