コンサドーレ
2022/12/29 18:00

上位に勝てる力を見せた22年 年末特別インタビュー連載《ミシャイズム再考》①

今季を振り返るペトロヴィッチ監督

■年末特別インタビュー
 北海道コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督(65)が、2年連続10位に終わった2022シーズンを振り返り、来季の戦い方についても語った。「ミシャイズム再考」と題し、3回に分けて連載する。インタビューの中で、今季の結果に対して不満は漏らしたが、試合内容としては指揮を執った5シーズンの中で最高だったと評価した指揮官。来季は「ポリバレント性」を重要視すると明言し、さらなる成長のためにキャンプから新たな戦術にも取り組んでいく事も明かした。20年から取り組む「オールコートマンツーマン」の戦術はどう変化するのか、攻撃的なサッカーの根底には何があるのか、インタビューの中から哲学の神髄を紐解いていく。

総失点55も完封試合は最多10試合「大量失点を除けば守備も堅かったのでは」

 ペトロヴィッチ監督は22年シーズンの自身の仕事ぶりについて「今シーズンの出来を不満に思っている。もっと自分自身、良い仕事ができなかったか、何がダメだったのか、どうしたら良い結果を得られたのかを自らに問う。もっとこういう仕事ができたんじゃないか、もっとこういうことをチームに指導すれば良かったんじゃないか」と自問自答する素直な気持ちを吐露した。

 22年の札幌の総失点は55。リーグ戦の試合数が4試合多かった21年の総失点が50であり、守備面で苦しんだシーズンという印象が残るが、「いくつかの試合での大量失点が、総失点の多さ。退場者を出して失点を重ねた試合もあれば、何かが噛み合わない中で不運な失点を重ねた試合も4、5試合あったのではないか。その数が多いから最終的な失点数の多さにつながっている」と話し、反対に「相手を0点に抑えた試合は過去のシーズンより多く、その大量失点した何試合かを除けば失点数は少ないと思うし、守備も堅かったのではないか。そういう意味では、安定的な試合を見せられたシーズンでもあった」と振り返った。

終盤僅差の駆け引き「攻撃を受ける中で〝刺し〟にいくことを考える」

 札幌が現在採用している「オールコートマンツーマン」の戦術は、その運動量の多さゆえ、終盤に足が止まってしまうことが少なくない。リードしている試合では自陣で守備ブロックをつくる考え方もあるが、「試合の流れの中で自分たちがしっかりと自陣で守る試合もあったはずだ」とした上で、「チームの戦い方として、あるいは選手の特長として、後ろにリトリートして相手の攻撃をはね返すような選手がいるチームではないことは確かだ。そういう選手たちの特長を考えたら、自分たちの戦い方を継続していく方がうまく守ることができる」と話す。

 終盤に1-0でリードしている場面を例に挙げ、「疲れが見えてきた中で相手が攻撃的なカードを切ってきた時に2トップの選手をDFの選手に代えて守りを固める監督もいるが、攻撃的な選手が前にいなくなると相手の圧力を受け続けることになる。そうなると、いつかはやられるかもしれないし、事故が起こりがちになる。ペナルティーエリアにボールがある回数が増えれば増えるほど、何が起こるか分からない。守備をする中でも、必ず攻撃を考えなければならないと指導している。相手の隙を突いて攻撃を仕掛けて点を取りに行くという部分があれば、相手も『怖さ』があるはずだ。そういう駆け引きを試合の終盤でもやっていかなければならない。相手がリスクを負って仕掛けてくれば、背後には大きなスペースがある。相手の攻撃を受ける中で、相手を〝刺し〟にいくことを考えるのが私の戦い方だ。前に速い選手を置いておけば、相手がリスクを負えば負うほど、得点というのは我々にとって生まれやすい状況になる」と説明した。実際に、試合終盤には次々と攻撃的な選手を投入することが多かった。リードを守るために守るのではなく、攻めることによって相手に圧力をかけ続ける。それが僅差のリードの場面で指揮官が導き出す戦術というわけだ。

残留争いは想定外だが「5年間で一番素晴らしい内容のゲームができた」

 終盤の駆け引きがどう転ぶかは、ギャンブル的な要素もあるが、その中で魅力あるサッカーを選ぶというのは指揮官らしい。「残留争いに巻き込まれたという意味では、私が思い描いていた5年目とは違う」としながらも、「試合内容を振り返ると、この5年間の中で一番素晴らしい内容のゲームができたと評価している」と、チームの成熟度には満足しているようだ。

 失点が多かったが、「数字だけを追ってしまうと、本当の意味での内容は見えてこない。今シーズンは上位に対しても十分に勝てるだけの力を見せたというのも成長の現れ」と話す。

 特にシーズン中盤以降に訪れた残留争いの中で、クラブから異例の「ミシャ続投」宣言(8月28日)を出した後の終盤8試合は5勝2分け1敗。優勝した横浜Mに引き分け、2位・川崎、3位・広島、5位・C大阪に勝利という上位陣との戦いで結果を残した。

上位5チーム相手に今季は10戦2敗「チームとしての力は十分についてきている」

 「我々のチームはどこと対戦しても互角以上の戦いができる力を持っている。22年はケガ人が多く、なかなか選手が揃わなかったが、交代選手も含めて選手が揃った試合では、しっかりと結果に結びつけられたゲームが多かったと思う。そういう意味ではチームとしての力は十分についてきている」と自信を見せた。

 6年連続のJ1残留を果たすことができたミシャ5年目のシーズン。上位5チームとの勝率を比べると、18~21年の過去4年間は10試合中5~9敗していたのが、今季は2敗のみ。チームは確実に前に進んでいることを証明した。

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