冬季スポーツ
2022/04/03 23:10

ノルディック複合女子 中村安寿「金メダル取る」 五輪初代女王狙う

札幌・大倉山ジャンプ競技場の前で、ショウワの藤村代表(右)と中村がW杯複合の金メダルを掲げた(撮影・西川薫)

 〝キング・オブ・スキー〟と言われる複合で世界のクイーンを目指す―。3月12日のノルディック複合女子W杯で、日本勢初優勝を果たした中村安寿(22、東海大札幌出)が1日から兵庫の大手洗浄機メーカー、ショウワに入社。春から拠点を長野・白馬村に移して活動を開始した。来年2月に行われる世界選手権(スロベニア・プラニツァ)、さらに女子複合の正式採用が期待される2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の初代女王を狙う。

白馬から〝クイーン〟・オブ・スキーの道歩む

 中村が拠点を移す白馬には、種目別のナショナルトレーニングセンターがある。「ジャンプ台とローラースキーがすごい近い距離でできる」と、環境面は申し分なく、本人も満足する。2022―23年シーズンの最大目標である世界選手権で「金メダルを取る」と、日本勢初の女王君臨に気合をみなぎらせた。

 選手生命の危機をも乗り越えた。昨年10月末に、卵巣腫瘍摘出手術を受けた。「おなかを切ったので、腹筋も体力も落ちた」。11月2日に退院すると、その2週間後には病み上がりのまま海外遠征に帯同。「まだ運動しちゃダメな期間で、ランニングもできなくて。体の状態はピークからしたら半分以下」。そんな状態で遠征に帯同するほど競技にかける思いは強い。

 元々は距離の選手で、東海大札幌高進学時から複合に転向。兄・直幹(25)は北京五輪ジャンプ代表。弟・正幹(東海大札幌高3年)は昨季のインターハイジャンプ優勝とスキー一家で育った。2季前はジャンプに比重を置き、体重を44キロに絞って臨んだが、距離のタイムが落ちた。昨季は4キロ増で距離に重きを置いたが、その逆パターンとなった。「まだバランスが定められていない。やっぱりジャンプが飛べないと話にならない」と、高い次元でベストなバランスを求めていく。

 ライバルの存在も心強い。中村は今季のW杯で日本勢最上位の種目別個人総合4位。中村の東海大札幌高の後輩で、今季W杯3位が2度の葛西優奈、同2位が2度の葛西春香(ともに早大1年)も今春から拠点を長野に移す。「あの子たちが東海の後輩にいたからこそ頑張れた」。これからも、さらに切磋琢磨して互いを高め合っていく。

 親元を離れ、アパートで初めての1人暮らし。「料理は好きなので心配ない。生活の不安はないですけど、ちょっと寂しい感じはします。練習ばっかりになってもダメなんで、オン、オフはしっかりもってやっていきいたい」と、屈託のない笑顔を見せる22歳。趣味はないというが、「本当にクロスカントリーが大好きで、オフもいろんなところに行っちゃう。自然が好きなので、悩んだりしたら山を登る。登山とかトレイルランが大好きです」と、根っからの山ガールっぷりを明かしてくれた。

「マエケンマスク」のショウワが全面サポート約束

 中村が所属するショウワの藤村俊秀代表(51)は「社員も(中村に)期待していますし、元気をもらえる。スポーツの一番良いところ」と全面サポートを誓った。同社はメジャーの前田健太投手(ツインズ)が画伯としてイラストを提供した「マエケンマスク」の販売も手がけた。これからは中村もマエケンのようなメジャー級の活躍を思い描く。

 女子複合は早ければ今夏にも4年後の五輪正式採用が決定する。「女子のレベルも上がってきている。一歩でも遅れればすぐに置いていかれる。ずっと最前線に立ち続けて、4年間、頑張らないといけない。自信はある」。おっとりとした表情の中に、しっかりとした信念を抱き、夢へ向かって突き進む。
 

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