《ハム番24時》稲葉監督の〝幻の登板〟9月10日
8日のソフトバンク戦で八回途中に進藤がマウンドに上がった。進藤の登板を受け、稲葉2軍監督が懐かしそうに口を開いた。「僕も現役時代にブルペンまで行ったんですよ」
2013年の栗山政権でのこと。投手温存のため、ブルペンに入ったという。「僕と(飯山)裕志しか残ってなくて。2人でブルペンで投げ合った」。もちろん、ただのキャッチボールではない。投手としてマウンドに立つことを想定し、宮西にも投げ方を教わり、真剣そのものだったそうだ。「ミヤが心配してくれてね。後ろで見守ってくれて。『カーブってどうやって投げるの?』、『スライダーってどうやって投げるの?』って真剣に聞きましたよ」と笑顔で振り返った。だが、実際にマウンドに立つ機会は訪れず、〝幻の登板〟に終わった。
だからこそ、突然、マウンドに立った進藤には〝あっぱれ〟を送りたい。「相手に当てるわけにいかないからね。ストライクを取ることに精いっぱいになりながらも、腕を振ってね。まさかのストライク。すごかったですね。最初、見逃しっていうのもなかなかね」と目を細めた。
マウンドでの勇姿を見て、眠っていた記憶がよみがえったのだろう。「『投げたかったな』と思って。せっかくなら。ちょっと、うらやましくもありますね。あそこで投げられてね」。10年以上前のブルペンでの出来事を楽しそうに語るその表情には、少年のような無邪気さがにじんでいた。
実は1度、「ザ・プレミアム・モルツ ドリームマッチ」で投手を務めた経験があるそうだ。「1イニング。ストライク入れるのにも本当に緊張しましたよ」。引退したレジェンドたちが集う夢の舞台でも、投手としてマウンドに立てば緊張する。野手として幾多の修羅場をくぐってきた名手でさえそうなのだから、投手というポジションには、やはり特別な何かがあるのだろう。
野球選手にとって、マウンドに立つことは特別なのかもしれない。野球経験のない記者には、その感覚を本当の意味で知ることはできない。それでも、初めて立ったマウンドでしっかりと役目を果たした進藤がすごかったことだけは、よく分かった。