ヴォレアス 土俵際から大逆転 創設10年目で初タイトル王手【天皇杯全日本バレーボール選手権】
フルセットで東京GBに勝利して初の決勝進出を決め、喜ぶヴォレアス北海道の選手たち=撮影・中本翔
■天皇杯・皇后杯全日本バレーボール選手権大会(12月20日、京王アリーナTOKYO)
▽男子準決勝 ヴォレアス北海道3-2東京GB
日本最北のSVチーム・ヴォレアス北海道が、劇的逆転勝利でチーム創設10年目にして初の決勝進出を果たした。14日の準々決勝でSVリーグ首位を走る強豪・サントリーを3-1で撃破。準決勝では東京GBに2セットを先取されるも、第3セットから投入されたOH中道優斗(23)やMB三好佳介(26)の活躍などで、2試合続けて格上から劇的勝利を飾った。21日の決勝では北海道勢として初の日本一を懸けて、WD名古屋と対戦する。
最後は三好がブロック決めた
フルセットで迎えた最終セット14-11のマッチポイント。三好がブロックを決めた瞬間、ベンチから選手が一気にコートになだれ込み、大きな歓喜の輪ができあがった。「あのラリーの前に、エドからブロックの指示があって、がむしゃらにやった結果、ハマったので、そこはすごくうれしかった」と勝利の味をかみしめた。
フルセットの激闘で東京GBに勝利し、初の決勝進出を決めて喜ぶヴォレアス北海道の三好(中央)
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会場には東京GBのユニホームを着たファンが集結。試合は完全アウェーの雰囲気の中、始まった。相手の強力なサーブにリズムを崩され、逆に自分たちはサーブを効果的に打つことができず、2セット連続で終盤に突き放されて落とした。
もう後がない第3セット。昨年12月に東海大から加入した中道が、ゲームチェンジャーの大役を果たした。「ヴォレアスは少数精鋭で戦っていて、誰がどうなっても試合に出られる準備は、リザーブのメンバー全員がしている。コートの外から見ることで、中とは全然違う視点で見れる。どこをレシーブで守ったら良いか、スパイクはどこに打ったら良いか。しっかり準備はできていたつもり」。土俵際まで追い込まれたピンチで、逆転を託されコートに向かった。
ゲームチェンジャー中道「プレーしていて幸せでした」
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第3セットが始まると、まずは1-0からスパイクで2-0。その後もブロックやレフトからの攻撃など、このセットだけで6得点。第3セットを奪って反撃ののろしを上げると、会場の雰囲気がガラッと変わった。続く第4セットには連続サービスエースを決め、最終セットにも2得点。中道は「サントリー戦からそうなんですけど、セットを重ねていくごとに、体育館の他の観客の人たちから『ヴォレアス、ガンバレ』って手拍子が増えていくのを感じた。どんどんファンが増えていっているのかなって、プレーしていて幸せでした」
第3セット、スパイクを決める中道(左)
格上を次々破ってきたワケは
常に挑戦者の気持ちで立ち向かってきた。SV初年度の昨季、10チーム中、最下位に沈んだ。中道は「相手チームは、自分たちを多少下に見たり、自分たちが弱いチームだと思って、ある程度戦ってくると思う。そこで自分たちが点差を詰めていけば相手が焦る、ときょうエド(監督)がタイム中やセット間に何回も言っていた。楽しむことに重点を置き、あまり勝ちを意識しすぎず、どんどんがむしゃらに向かっていく姿勢を見せていくと相手もテンパってきた。先週もそうだし、きょうの試合もそう」。格上を次々と打ち破ってきた最大の理由だ。
中道は東京出身。準決勝からの舞台となった京王アリーナTOKYOには、ある思い出が残っていた。「この体育館を春高で使ってたけど、良い思いが全然できなかった。(東海)大学の時も最後に良い思いをできてなかった。だからこうやって、多くのファンとか観客がいる前で試合したかった」。夢を追いかけ北の大地に渡り、大きく成長して、地元に凱旋を果たした。
第5セット、スパイクを決める中道(中央奥)
成長は一日でできるものではない
昨季はSVリーグで10チーム中最下位。今季はここまで7位と、少しずつ実力を伸ばしている。チーム創設から指揮するエド・クライン監督(44)は「良い形で前に進めている兆候かな。われわれは本当に近道せずに長期的な目線を持って、常にやってきました。謙虚に日々練習に取り組んできた。成長というのは一日でできるものではない。本当に多くの人が、短い期間でできることを過大評価して、長い期間取り組んでできることを過小評価している。我々がそういったところを2年間通してやって、見せることができたのではないか」。歩みはゆっくりだが、少しずつ力を蓄え、ついに国内最高峰のタイトルに王手をかけるまでに成長を遂げた。
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歴史に名を残す。道内の男女通じて、主要タイトルを手にしたチームはない。三好は「まず明日もしっかり楽しむということを大事にして、楽しんだ結果、良い結果がついてくると思う」。北海道勢初の偉業達成へ、残り1試合、死力を尽くす。
