【ネクスト・ドラフト候補】①回転効率は驚異の100% 岩見沢教育大の146キロ右腕・矢花大聖
侍ジャパン大学日本代表候補合宿に選ばれた、岩見沢教育大の矢花投手=撮影・西川薫
道産子3選手が大学侍候補に選出
侍ジャパン大学日本代表候補選手強化合宿が12月5日から7日まで愛媛・松山ぼっちゃんスタジアムで行われ、岩見沢教育大の矢花大聖投手(3年、札幌光星)、仙台大の井尻琉斗捕手(3年、北海)、北海道文教大の西浦真平外野手(3年、北照)の道産子3人が選出された。今年のドラフトでは同代表経験者から、平川蓮外野手(仙台大-札幌国際情報)、秋山俊外野手(中京大、登別緑陽中出)、宮下朝陽内野手(東洋大-北海)の3人がプロ入りを果たした。「ネクスト・ドラフト候補」と題して登竜門に挑む3人の道産子を紹介する。
岩教大の矢花投手=岩教大野球部提供
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2部リーグ所属の国公立からは唯一
最初に紹介する1人は、岩見沢教育大の146キロ右腕・矢花投手だ。札幌6大学2部リーグで、この秋に通算10勝に到達。侍候補のメンバー中、わずか2人しかいない国公立大所属で、さらに2部リーグとなれば矢花ただ一人だ。異色の球歴を持つ右腕は「真っすぐの質とコントロールで合宿は勝負していきたい」と意気込んだ。
自己推薦型の動画審査に応募
岩教大の矢花投手=岩教大野球部提供
思いもよらない選出だった。今回は自己推薦型の動画審査に応募。「ずっと2部にいたので、もっとレベルの高いバッターとかピッチャーを生で見てみたい。自分のレベルが全国相手でどの辺にいるのかを知りたい。そして経験だけでは終わらせたくなくて、プロになるための通過点として考えられたら」と、自らの投球動画を撮影し、望みを託した。発表当日の10月23日はアルバイトが入っており、「全然、通るとも思ってなかったので、バイトが終わったら通知がめっちゃ来てて、なんだろう」と確認すると、〝合格〟の知らせだった。
ケガに泣いた高校時代 のちのドラ1右腕と九回まで0-0の投手戦が…
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高校時代は不完全燃焼で終わった。札幌光星2年時の夏の大会前、最後の練習試合の相手は苫小牧中央。翌年、広島にドラフト1位で入団した同じ年の斉藤優汰投手が相手。NPBのスカウト陣を前に「ちょっと調子の羽目を外しすぎたかな」。九回まで0-0で投げ合ったが、直後に右肩を痛めた。結局、3年になっても痛みは治まらず、最後の夏はエースナンバーを背負ったものの、札幌支部代表決定戦で敗れた。「高校野球人生最高のピッチングが練習試合で終わるっていう(笑)」と、当時を振り返った。
矢花投手の投球フォーム(本人提供)
斉藤マサさんのように
プロ入りした先輩と同じ道を歩んでいる。高校と大学の直系の先輩には、2017年に育成ドラフト2位で西武入りし、23年を最後に引退して現在は同球団のスタッフとなった斉藤誠人スカウト(30)がいる。札幌光星の合坂真吾監督(49)からも「斉藤マサさんのようになれよ、って言葉もいただきましたし、1個上に先輩もいたので。北海道で2部だけど最近、北海道の野球のレベルも上がってきているし、1部に上げたろうかなって」と、岩見沢教育大へ進学した。
体の使い方を改善すれば大台到達も
大学に入って1年春は肩が完治していなかったが、秋のリーグ戦には復帰。そこでいきなり3勝を挙げると、コンスタントに勝ち星を積み重ね、今秋のリーグ戦で通算10勝に到達した。「球速は140キロ前半なんですけど、回転効率が常に100%近くあるというのが自分の一番の強み。今年の秋リーグは特に真っすぐの質が良くて、真っすぐで空振りも多く取れました」。一方、課題は「テークバックの部分が一番ダメで。今も課題として取り組んでいるのが、右足の使い方。左足と上半身だけに頼って投げている部分があるので、そこをもうちょい改善できれば、まだまだ球速は上がっていくのかな。来年春で150キロは超えていきたい」と、大台到達も見据える。
学業でも野球に関わる研究
幼い頃からプロ野球選手になるのが夢だったため、教育大に進んだものの教員になるつもりは最初からなかった。大学では、家庭教師とガソリンスタンドのアルバイトをして札幌から岩見沢への移動やトレーニングに掛かる費用を捻出しながら、学業に励んだ。23年春にバイオメカニストとして西武入りした加藤拓光さん(25、北海学園大)を育てた小林育斗准教授の研究室で学んでいる。
まだスタートラインに立っていない
「プロに行きたいとずっと、小中高でずっと思ってはいたけど、自分のどこかにやっぱりなれないんだろうな、みたいな」と確固たる自信がないまま野球を続けていたが、2年時の冬にラプソード(弾道測定分析機器)で最速が146キロをマーク。「ここまで来たらやるしかない」と、その年の終わりには、就職活動をしないことを決めた。「自分の中ではスタートラインにも立っていないと思っているので、まず来年、上ばかりを見過ぎず、ドラフトで何位でもいいのでプロに入る、育成でもプロに入る、ということだけを目標に今やっています」。夢の実現のため、まずは候補合宿で全国の強打者たちをキリキリ舞いさせる。
■プロフィール 矢花 大聖(やばな・たいせい) 2004年10月7日、札幌市生まれ。181センチ、85キロ。八軒北小2年時に札幌ポルテで野球を始める。5年生までは捕手で6年から本格的に投手を始める。八軒中では硬式の札幌石狩ボーイズでプレー。札幌光星では1年秋にベンチ入り。3年夏はエースナンバーを背負ったが、札幌支部代表決定戦で敗退。岩見沢教育大1年春は外野手としてプレー。1年秋に3勝すると2年春から3季節連続で2勝。3年秋は1勝で通算10勝。最速は146キロ。変化球はカーブ、スライダー、スプリットチェンジ、カットボール、ツーシーム。右投げ右打ち。家族は両親と姉、妹。