北海が〝ラガーマン〟から学んだ肉弾戦で王座奪還 決勝点のFW野澤渓人「執着心が変わった」【全国高校選手権北海道大会】
2年ぶりに優勝して喜びを爆発させる北海の選手たち=撮影・西川薫
■全国高校サッカー選手権北海道大会(11月9日、札幌・大和ハウスプレミストドーム)
▽決勝 札幌大谷0-1北海
2年ぶり14度目の頂点
夏の北海道大会決勝と同カードとなった対戦は、北海が前半24分にFW野澤渓人(3年)が奪った虎の子の1点を最後まで守り切り、完封勝利。公式戦3連敗中の強豪にリベンジを果たして、2年ぶり14度目の頂点に輝いた。北海は12月28日に東京・国立競技場で開幕する全国大会へ出場する。
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仲間を信じる部分で他より上回った
北海が2年ぶりに王座を奪還した。終盤はピッチ上の至る所で足がつって倒れこむ選手が続発したが、最後まで攻め続けた。DF曳地優斗主将(3年)は「自分たちは、本当にヘボの代って言われてきて、それでも自分たちを信じて、声でつながったり、仲間を信じるっていう部分で他のチームよりも組織力で頑張ってこれたから、今この勝ちがあった」。敗戦の記憶を、最後の最後に勝利で塗り替えた。
胸トラップからの右足ハーフボレー
前半24分、北海のFW野澤(背番号11)が右足ボレーでゴールを決める
値千金のゴールは、得意のセットプレーから生まれた。前半24分、右サイドのロングスローからゴール前中央で味方がフリック。ファーに構えていた野澤が胸トラップから右足のハーフボレーで、相手GKの頭上を打ち抜いた。「ロングスローから良い形で自分のところにボールが来たので、最後冷静に決め切ろうっていう気持ちでシュートを打って入ったので良かった」と声を弾ませた。
2週間、口酸っぱく言われた言葉
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6月のインターハイ全道大会決勝と、9月のプリンスリーグ北海道第13節でともに札幌大谷に敗れ、目の前で相手の優勝を目の当たりにした。今季5度目の対戦が決まると、過去4度の対戦と札幌大谷の準決勝の試合を見返した。その結果、「プレーとか何よりも、メンタルのところで自分たちが弱気になったりミスを恐れる。覚悟がないからプレーも良くならない。恐れない覚悟とか、『ターン、フリー』という声をかける覚悟とか、苦しくなってもそういうことができるかっていう覚悟がずっと大事だって、2週間、口酸っぱく言われました」。
サッカーは点を取らないと勝てない
戦術も変更した。インターハイ札幌予選は4-4-2で勝利したが、プリンスリーグ1巡目は札幌大谷の圧力に屈した。そこで6月のインターハイ全道決勝は3-5-2で戦ったが、守備的になり0-1で敗戦。「準決勝が終わってから、4-4-2か3-5-2に自分たちで決めろって言われたんですけど、札幌大谷さんとやるなら3-5-2じゃないと守れないなって、まず守るっていうことが頭の中にあった」。そんな考えを見透かした島谷制勝監督(56)から「セットプレーを取らないと点は取れない」と指摘され、目が覚めた。「結局、サッカーは点を取らないと勝てない」。4-4-2で左のMF国分遥斗(2年)と右のMF藤原志宇(3年)、2人の攻撃から何度も好機をつくり出した。
前半24分、ゴールを決めた北海のFW野澤(中央手前)が喜びの表情を見せる
ルーズなボールは足ではなく頭から
球際では腰の高さほどのルーズボールの競り合いに、迷いなく頭から飛び込む。今年は例年以上に激しさが際立っていた。9月に同じ会場で行われた全国高校ラグビー南北海道大会決勝の札幌山の手対立命館慶祥戦を観戦。目の前で繰り広げられる激しいプレーを目に焼き付け、「同じチームメートですけど、本当に喧嘩になるんじゃないかっていうぐらい、とにかく戦う。それを見てからまた一段と、そのこだわりは出てきました。札幌大谷さんは今年すごいうまいのにフィジカルも強い、本当に北海道ナンバーワンのチームだったので、そこに少しでも負けないように、本当に肉弾戦っていうイメージでやってました」。
仲間がいてくれたから
中学時代に有名だった選手は不在。その雑草軍団の象徴が、決勝点を決めた2トップの一角、野澤だ。ベンチ入りただ一人の中体連出身。北海に入学直後は「聞いたことない単語ばっかりで、本当ついていけなくて。中学は土のグラウンドだったので、みんな芝にも慣れてて、そこですごい苦労する部分もあったけど、仲間がいてくれて、自分の分からないことをしっかり教えてくれて、馴染めてきた」。札幌手稲東中3年時には中体連札幌支部でも札幌大谷中に敗れており、決勝の前には「中学校で負けた分の悔しさをはらしてね」と当時のチームメートからエールが送られ、その思いも背負って決勝のピッチに立った。

フォア・ザ・チーム
2年前の全国出場時は1勝。予選の全道4試合でチームトップの4ゴールを挙げた野澤は「全国も一戦必勝で勝ちたいっていうチームの思いと、『得点が一番のフォア・ザ・チーム』っていう島谷先生の言葉があって、得点に対する考え方だったり、執着心が変わったと思うので、しっかりまたチームのために点を取りたい」。自身初となる全国大会でも、北海のエースとして大暴れする覚悟だ。
■直近5年で4度優勝に導いた北海の島谷制勝監督(56)
「勝てるかどうか不安だったんですけど、子供たちが作戦を考えて、覚悟を決めてた戦ってくれたので、奇跡が起こったんだと思う。セットプレーとか通用しなかったところを、ロングスローでちょっとクイックを入れたり、相手チームになんか違うぞっていうような状態をうまくつくってくれた。力の差をうまく出させないで。一発勝負って面白い」
2年ぶりの優勝を果たした北海の選手たち
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