山県秀 「もう野球をやりたくないと思ったことがある」幼少期から言われ続けた母の言葉が支えに
七回、ソロ本塁打を放ち、ガッツポーズを見せる山県=撮影・松本奈央
■2025 パーソル クライマックスシリーズ パ ファイナルS第3戦 日本ハム6-0ソフトバンク(10月17日、みずほペイペイドーム)
追撃の一発にあどけない笑顔
日本ハムの山県秀内野手(23)が、負ければ今季終了となる大事な試合で、貴重なCS1号を放った。2点リードの七回に先頭で、相手先発の上沢から、左翼へ会心の一発だ。
勝利に大きく貢献し「真っすぐが(スピード)ガン以上に速いと聞いていたので、その真っすぐに差されないようにイメージはしていたんですけど、たまたまカーブに反応したなって感じですかね。1個前の打席で、真っすぐをしっかり捉えられたのが良かったかなと思います」と、にっこり笑った。
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自信は付けても慢心はなし
「7番・遊撃」で先発し、本塁打を含む2安打1打点に加え、持ち味の守備でも好プレーを連発した。
「ホームランを打った後、あんまり興奮しなかったというか、レギュラーシーズンの(本塁打の)方が興奮していました。しっかり次、抑えないと意味がないと思って、すぐ守備に切り替えられたのが、すごい良かったかなと思います。CSの舞台ですし、緊張することもあるんですけど、自分としては自信が少しずつ付いているのかなと思いますし、逆にそれに甘えることなく、しっかり自分のできることをやろうと思っている結果だと思うので、そこは変えずにやっていけたらいいかなと思います」
七回、ソロ本塁打を放つ山県=撮影・井上浩明
迷い悩んで立ち止まったことも
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今季、早大からドラフト5位で入団し、プロ1年目からチームに欠かせない戦力となった。84試合に出場し、3本塁打をマーク。もともと守備には定評があったが、意外性のある打撃で何度もファンを沸かせた。
ただ、順風満帆にここまで来たわけではない。アマチュア時代には、なんのために野球をやるのか、目的を見失いそうになったことがある。「野球が嫌になったり、本当に野球をもうやりたくない、と思ったこともあったんです」と、当時を振り返って打ち明けた。

ただただ野球が好き 気付かせてくれた母
それでもなぜ、野球を続けてこられたのか。幼少期からことあるごとに、母・ 眞美子さんから伝えられてきた言葉が、悩む山県の指針となった。
「物心付く前から野球をやっていたので、物心が付いた時には、もうずっと、母から『いつでもやめていいから、自分の好きなようにやりなさい。やめたくなったら、いつでもやめて良いよ。自分の好きなことをやっているんだから』という話を、してもらっていたんです。『でも、私は野球をしている秀を見たいし、野球をやってほしいけど、別に押しつけることはないし、やめたくなったらいつでもやめて良いよ』と、本当にずっと伝えてくれていました。自分は結局、野球が好きで、ここまできた。なので、その母からの言葉はずっと、大事にしています」
母は、決して野球を強制しなかった。だからこそ、続ける理由は、自分が好きだからなんだと気付くことができた。
「嫌になって、やめようかと思った時も、なんで野球をやっているんだっけ、と考えた時に、あ、やめたくなったらいつでもやめられるんだ、と思って続けられました。自分が好きでやっているし、なんなら、野球をやっていないと心が不健康だなと思ったんですよ。心の健康のために野球をやっているなって。例えば、野球で心が健康じゃなくなるまで追い込んだりとかは、自分の目的と本末転倒だなって思うようになりました。そこで、あんまり自分を追い込みすぎないようになりました。もちろん、練習で追い込む時は追い込むんですけど、それとは別で、気持ちの面で追い込まれた時に、自分でわざわざ追い込む必要はないなと」
七回、ソロ本塁打を放ち、万波(右)とハイタッチを交わす山県(手前左)
まだまだ今シーズンを愉しめる!
野球は、やめたくなったらいつでもやめられる。だから山県は、CSファイナル、負ければ終わりの大舞台でも、楽しそうにボールを追いかける。
五回2死、ソフトバンク・柳田の打球を捕り、倒れながら一塁に送球する山県=撮影・宮永春希