松本剛 驚きと感謝であわや涙腺決壊 胸に秘めていた新庄監督への恩返し
14日のCSファイナルステージ前日会見で新庄監督の言葉に涙をこらえる松本剛
とつとつと語り出した指揮官
不意を突かれた。14日に行われたCSファイナルステージの前日会見。選手会長の松本剛外野手(32)は3連敗した昨年を念頭に置いて、決意表明した。その直後、隣に座っていた新庄剛志監督(53)が唐突に口を開いた。
「剛は首位打者を取ってから、うまくいかなかった。でも本当に腐らず、毎日しっかり練習して。イニングが終わった後、剛が最初に(ベンチから)出て、さあ行くぞと。剛を代走で送った時のベースまで行ってくれるスピードとかもすごく感動するというか、偉いなと。本当は毎日試合に出たい。悔しさがあるのに、チームのために。剛の力は今年の2位につながった。それは間違いないですね」
9月9日ソフトバンク戦、イニングを終え松本剛(左)が伊藤を迎える
【ファイターズの最新記事はコチラ】
期待がゆえの厳しい言葉も
聞いていた松本剛は目を丸くしていた。ライブ中継もされていた2人だけの会見で、そんな言葉が飛び出すとは思っていなかった。
続いて、ベテランの存在意義について質問された指揮官は「剛がレギュラーを取っていなかったから、今年は2位で終わったなと思っています。バリバリレギュラーを取っていたら、優勝していました」と断言した。
苦しみ抜いたプロ14年目のシーズン
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
試行錯誤のシーズンだった。打撃で好感触をつかんでも、持続しない。もがいてもあがいても、結果が付いてこなかった。苦しんできた分、熱いメッセージは松本剛の胸に染みた。
「(涙が出そうで)危なかったです。本当に期待してもらっている中で結果を出せなかった悔しさが、あらためてこみ上げてきました。そう言ってもらえることがうれしかったですけど、すごく責任も感じました。でも、今は戦いの途中なので、ああやって声をかけてもらって、なんとか期待に応える。出たところで自分の仕事ができればと、あらためて思いました」
8月22日のソフトバンク戦、練習中に笑顔で会話する松本剛(左)と新庄監督
認められた自身のスタイル、信念
出場機会が激減しても、個人の感情は胸にしまって、リーダーとしてチームのために動いた。代打、代走、守備固めの準備だけでなく、出ている選手をサポートし、率先して声を出した。若手に示すように、妥協を許さないファイターズの野球を体現した。自己犠牲をいとわず、チームに尽くす選手の存在は大きい。地味でも大切な仕事を、新庄監督は誰よりも評価していた。
結果が求められるシビアな世界だが、縁の下の働きが認められた。選手会長は言葉の一つ一つをかみしめ「そういうところまで見てくれているんだなと。当たり前のことを当たり前にしているだけです。レギュラーとして出られない悔しさもありますけど、それでも僕がベンチにいる意味は何かと(考え)、自分の中でできる最大限を意識して今でもやっています。見てほしいと思ってやっているわけではなかったですけど、やってきたことは間違いではなかったなと思いました」と声を震わせた。
17日、松本剛(右から2人目)の声出しで円陣を組む日本ハムナイン
結果で返してこそプロ
会見中は、目を潤ませながらも必死に耐えて、平静を装っていたという。「本当に危なかった。自分の話はもうしたくないと思って(監督の言葉にアンサーできなかった)。申し訳なかったです。あそこで泣いたら意味が分からないから(笑)」
泣き顔をさらす〝惨事〟は、なんとか回避した。そして、愛情を注いでくれるボスへの恩返しを誓い、CSファイナルの舞台に立っていた。
