高校時代の恩師・江崎悟さんが見たレバンガSG富永啓生の現在地「ゾーンに入ったら…」
10月4日に行われた名古屋Dとの開幕戦。恩師の江崎さんが見守る中でプレーしたSG富永(右から2人目)=撮影・宮永春希
開幕デビュー戦をコート横で観戦
今季、バスケットボールB1のレバンガ北海道に鳴り物入りで加入したパリ五輪代表のSG富永啓生(24)が、開幕3勝2敗と好スタートを切ったチームを支えている。昨季はNBA下部のGリーグに所属し、10月4日に地元の名古屋市で行われた名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの開幕戦でBリーグデビュー。コートサイドには母校の桜丘高(愛知県)時代の恩師・江崎悟さん(64)の姿があった。日本を代表するシューターに育ったまな弟子のプレーを、試合会場や動画配信で見続ける江崎さん。富永に対する評価とは―。【取材・構成=北海道新聞運動部・上田惟嵩】
コートサイドの客席から富永のプレーを見守った江崎さん(手前右)
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高校時代も試合中に僕を見る癖が…
初戦を見た席は、目の前がコートでレバンガのベンチの向かい側でした。啓生は緊張するような性格ではないのですが、気負っているような印象を受けました。私や両親の前で試合するのが久々だったからだと思います。試合中、僕の方をチラチラ見てきたので、思わず目をそらしてしまいました。啓生は高校時代も試合中に僕を見る癖があり、当時はアイコンタクトで励ましていましたが…。
(9月中旬の)けがもあり、コンディションが心配でした。本人は「万全」と言っていましたが、試合中は顔が紅潮して息が上がっているように見えました。調子が良い時の半分ぐらいだと感じました。
名古屋Dの身長190センチ台後半のヘンリー選手、マーフィー選手にうまく守られていました。この2人は身長が高いだけでなく、驚くほど腕が長い。普通は3点シュートをブロックされることはないはずですが、手が届いていました。
コートサイドから富永に熱視線を送る江崎さん(中央)
観覧席に突っ込んできた時にハッパ
3点シュートが第3クオーター(Q)に入ってもなかなか決まらなかったことから、シュートをためらっているように見えました。このクオーターの途中にボールが僕の席の方に飛び、啓生が突っ込んできました。そのとき「打てよ」とハッパをかけました。
それからは、入りませんでしたが良いシュートを打ち、迷いが消えていました。感覚をつかみ、速攻からフェイントでディフェンスをかわし、決めてくれました。コートレベルで観戦したこともあり、高校時代を思い出して懐かしくなりました。
母親に掛かってきた試合後の電話… 前日からの修正が見えた2戦目
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初戦の後、啓生の母・ひとみさんとの食事中、啓生からひとみさんに電話がかかってきました。電話を代わってもらい、「コンディションが良くなかっただろう」と尋ねると、認めていました。「明日は良くなる。頑張れ」とだけエールを送りました。
2戦目は現地に行けず、配信で見ました。3点シュートがダメだったら、2点で取ろうとする姿勢が見えました。速攻に参加し、サイズの小さい選手がマッチアップした際にはポストプレーもしてファウルももらっていた。賢く点を取れていました。
名古屋Dとの2戦目、第2Qの4分すぎにゴール下からシュートするSG富永(右)
力みや気負いがマイナスに働くことも
1度の攻撃権で3点シュートを3本放つ場面がありましたが、全て外していました。良いときはリラックスして狙っていますが、力みすぎて気持ちだけで打っているように見えました。
最後に大きなミスをしました。79-77と試合終了の残り5秒、攻撃時にマークマンを押してオフェンスファウルを献上。かっとする性格が出たのでしょう。高校時代からシュートを決めると叫ぶタイプでした。
名古屋Dとの2戦目、第4Qの4分すぎ、厳しいマークを受けながらシュートするSG富永(中央)
これから元の状態に戻していければ
昨季のGリーグでは出場機会が限られ、ほぼ1年のブランクがあるような状態だと思います。30分出場してなんぼの選手ですが、現状ではその体力はまだないと思います。今後、コンディションを上げ、高確率でシュートを決められるようになれば、チームの苦しい時間帯を救ってくれると思います。
11、12日の広島ドラゴンフライズ戦では、名古屋での試合よりもコンディションが良くなっていました。特に2戦目は「これぞ富永啓生」と知らしめる試合をしてくれました。第1Qで大差をつけられ厳しい試合展開でした。チームは点差を縮め、第4Qに啓生がセンターサークル付近からの3点シュートを入れて勢いづけました。
どんな時も啓生だけは勝利を信じて
高校時代の点差が大きく開いた試合中、私でも勝つのは無理だなと思っていても、啓生だけは違いました。「点を取るから俺にボール回せ」と言うんです。この日は第1Qから3点シュートを決めて調子が良かったです。ゾーンに入ったら常識を外れたプレーをしてくれます。
周囲は啓生にディープスリーなどの結果を求めますが、気負いすぎない方が良いと思います。体力がつけば、3点シュートのアベレージも上がると思います。
10月17日、ホーム開幕戦前日にリラックスした表情で3点シュートの練習をするSG富永=撮影・富田茂樹
富永一家とは家族ぐるみで交流
江崎さんは女子Wリーグの三菱電機のコーチ時代、富永の母・ひとみさんを指導していた縁もあり、富永一家と家族ぐるみで交流を続けていた。幼少期から富永を知っており、中学時代は無名選手だった富永は桜丘高に進学後、監督だった江崎さんの元で実力を伸ばした。高校3年時の全国高校選手権で3位に入り、世代別日本代表にも選ばれた。富永は江崎さんを恩師と仰いでいる。
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