立命館慶祥が五回コールド発進 難病と闘う吉川慎之助が公式戦初アーチ【秋季全道大会】

■秋季全道高校野球第2日(10月13日、札幌・大和ハウスプレミストドーム)
▽2回戦 苫小牧東3-13立命館慶祥
吉川の大会1号など先発全員14安打
3年ぶり出場の立命館慶祥が、先発全員の14安打の猛攻で、苫小牧東を五回コールドで下して4度目の8強入りを果たした。指定難病のもやもや病を抱える3番・吉川慎之助右翼手(2年)が、1点差に追い上げられていた四回に公式戦初、大会第1号となる2点アーチで苫小牧東を突き放した。
打った瞬間「行ったかな」
四回1死一塁、フルカウントからの6球目。左打席のインコース高めに浮いてきたカーブを吉川がフルスイングすると、打球はぐんぐんと伸びてプレドの100メートルのフェンスを越えて右翼席最前部に飛び込んだ。「その打席の前までちょっと(体の)開き癖があって、できるだけ開かないようにカーブも待って打ったんですけど、打った瞬間、弾道的にもいい弾道で上がったんで、行ったかなっていう感触はありました」。公式戦では人生初、通算6本目のアーチに笑みを浮かべた。
投手としても左の本格派
メンバー最長身の183センチ、84キロ。投手としても最速140キロを越える左の本格派だ。昨秋の札幌支部代表決定戦の北海戦では2番手で登板して3回⅓を無失点に抑えるなど非凡な才能の持ち主だが、この秋は肉離れなど小さなケガが重なり打者に専念している。憧れの選手は、伝説の打者・ベーブ・ルース。「投打どっちも活躍できる選手をずっと目指しているので。将来的に投手もやりたい」。滝本圭史監督(44)も「投手の練習も兼ねて外野をやらせている。最後は投手に戻しますよ。スケールも大きいし、楽しみ」と潜在能力に期待を込める。
小学生の頃から強豪を渡り歩くも… 中学1年時に難病を発症
駒大岩見沢出身の父・秀叙さん(50)に幼い頃から指導を受けてきた。札幌本町小6年時には、少年野球の強豪・東16丁目フリッパーズでプレー。日本ハムファイターズジュニアにも選ばれ、札幌東栄中に進んだ中学時代は硬式の強豪・札幌新琴似リトルシニアに入団した。
ところが中学1年秋、将来有望な野球人生に、いきなり試練が訪れた。病院の診断結果は、脳の血管が詰まる難病「もやもや病」。2度の大手術を乗り越えたが、「練習についていけなかったりだとかを考えて」と、知り合いの選手がいる苫小牧ボーイズに移籍した。
恩返しは自分が一番活躍すること
幸いにしてリハビリは順調に進み、約1年後にはグラウンドに戻った。毎日の練習は父が車で約1時間かけて送迎してくれた。「本当に絶望していたけど、お医者さんに言われていたより歩いたり走ったりできるのが早くて。体自体も野球したがっているのかなと思って、リハビリをしながらすぐ野球を始めて。野球が一番、病気を治す原動力にもなった。一番活躍することが恩返しだと思う。まだ初戦なんで、これからいっぱい恩返しできれば」。今も服薬は不可欠だが、思う存分プレーできる喜びを全身で感じながら、これからも快音を響かせる。