《鶴岡慎也のツルのひと声》感動しました! チームを引っ張る存在はファームにいた
■パ・リーグ23回戦 ソフトバンク4-7日本ハム(9月9日、エスコンフィールド北海道)
〝トラップ〟にハマったバッテリー
風向きを大きく変える試合となった。まずは先発マウンドに上がった伊藤に触れたい。二回に長短4安打を食らって3点を先制された。左バッターを並べたホークスに対して、直球とスプリットが切れていた。そこに落とし穴があった。
そういう時ほど、一辺倒の配球になりがちなのだ。トラップとでも言おうか、伊藤投手に限ったことではない。そこに来て、この2球種にアジャストできる打者が揃うソフトバンク打線。捉えられてしまった。
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立て直したエース右腕
ただ、何度もバッテリーを組んでいる伊藤と田宮。2巡目からはスライダーを中心に、カーブも含めた曲がり球を使って立て直した。力任せではなく、持ち球を活用しながら、自身の引き出しを空けてリズムを取り戻した。
試合を通じて2、3回、ギアを上げた伊藤。さすがの一言だ。チームにとって大きいのは当然だが、最多勝を狙う立場でも、価値ある1勝となった。
湿りがちだった打線をよみがえらせたのは…
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そして、この男だ。感動しました。オリックスに3連敗し、打線も元気がなくなっていた。そのタイミングで1軍に上がってきたのが今川。昇格のタイミング、2番での起用。新庄監督の采配がまたも的中した。ペナントレース最終盤に来て、ホークスを追う展開。誰かが爆発的に調子を上げ、チームを引っ張ってもらいたいと思っていた。その選手がファームにいたとは。
道産子スラッガーの躍動に「胸が熱くなった」
ハッキリ言って、もう若くはない。2軍で4割を打っていた。それでもなかなか声がかからなかった。落ち込むこともあっただろう。腐りそうになる瞬間もあったはずだ。精神的にきつかったに違いない。それでも自分ができることをやり続けた。そんな彼がチームに勢いを付けた。胸が熱くなった。
効果抜群だった新庄監督のゲキ
技術的にも素晴らしかった。二回無死二塁での適時二塁打。カウント3-1から、積極的にバットを出した。新庄監督から告げられていたらしい。「迷ったら、代えるよ」と。その言葉通り、迷いは見られなかった。
五回の勝ち越し弾もそう。初球から振る準備ができていた。モイネロにしては珍しく、アウトコースへの直球が近めに入ってきた。球速も普段の150キロ超えではなく、140キロ台後半。それを見逃さなかったのは大きい。
昨年オフから自費で渡米し、打撃を見直してきた。その努力が、9月の大事な大事な試合で実を結んだ。ファームにいるほかの選手にも大きな希望を与えたことだろう。
チーム力を向上させる山県のパフォーマンス
2本塁打の山県も見事だった。モイネロに対して、三振に終わった第1打席もしっかりとスイングできていた。彼のバッティングに関する成長スピードは実に速い。もともと守備には定評がある。今回の大活躍は水野ら、ほかの内野手にカツを入れる形にもなった。
若手の台頭はチーム力を向上させるもの。実に意味のあるパフォーマンスとなった。