山県秀 またまたシビれる場面で送りバント成功 再昇格後の成功率100%「自分の自信に」
延長十一回無死二塁、代打で送りバントを決める山県=撮影・松本奈央
■パ・リーグ23回戦 楽天1-0日本ハム(8月31日、エスコンフィールド北海道)
プレッシャーのかかるシーンで任務遂行
日本ハムの山県秀内野手(23)が1点を追う延長十一回無死二塁の場面で代打出場。きっちりと送りバントを決めて同点のランナーを三塁まで進め、チャンスを拡大させるミッションを無事に遂行した。
これで1軍再昇格後は、3度、送りバントを試みて全てで走者を進めている。成功体験を積み重ねて、よりチームに貢献できる選手となっていく。
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万波の代打で登場 「え!?」
楽天に勝ち越しを許した直後。チームは当然、同点、そしてサヨナラ勝ちを目指した。重い空気が漂っていたエスコンの雰囲気が、先頭・石井の二塁打で好転した直後、万波に代わって山県が打席に送り込まれた。実は予期していなかった代打だという。
「後ろで守備の準備をしていて。帽子をかぶって、何も防具を着けずにベンチにいたんですけど、山田(コーチ)さんと目が合って『バント行くぞ』『え!?』みたいな。誰の打席かも見ていなかったので『誰(の代わり)だろう?万波さん!え!?』って感じでしたね」
森本コーチの言葉で重圧から解放
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急きょの打席となったが、「逆に急だったのが良かったと思います。ずっと準備していたら、本当に緊張で顔が変わるぐらいになっていたと思います。あとは打席に入る前に、(森本)稀哲さんにも『誰でも緊張するから。この場面は誰でもプレッシャーかかるから、もう失敗してもいいぐらい(の気持ちで)』という、その声かけですごい気が楽になりました」
森本コーチの声かけのおかげもあって、見事に三塁側に打球を転がして走者を三塁に進めた。任務を全うしたルーキーを、ベンチのチームメートたちも大きく歓迎した。「もうバントが決まったのもあまり記憶がなくて、気付いたらベンチにいて。バントが決まるか決まらないかで、チームの勢いも変わってきますし、そういう流れを変えるワンプレーだったと思うので、温かく迎えてくれて本当にうれしかったです」
十一回無死二塁、森本コーチ(左)からのサインを見つめる山県=撮影・岩崎勝
度重なる失敗で自信喪失
4月中旬、ルーキーの中で一番手で1軍昇格。堅実な守備を武器に出場機会を増やしていたが、その中で悩みとして抱えていたのがバントの成功率の低さだった。
「5月頃の自分はひどかったというか。自分の中では、もともと大学時代はバントができていた方だったので、5月にバントを(何度も)失敗して、なんでこんなにできないんだろと」
1軍でも2軍でも続けた努力
状況を改善するべく、バントコーチを務める森本コーチの下で練習を続けたほか、夏場からは奈良間とともに谷内コーチが見守る中で居残り練習を実施。さらに今月上旬に2軍へ降格した際には、佐藤コーチからも指導を受けるなど、努力を積み重ねてきた。
「自分の形でやるのが一番と、全員から同じことを言われるんですよね。やっぱりバントができる人は自分の形があって、タイミングをしっかり取れて、あとはもうメンタルでどれだけできるか、というのもいろいろな人から聞いて。結局、みんなたどり着くところは一緒だよね、という話を受けて、しっかり練習してきました」

練習はウソをつかない 「すごく良い練習期間だった」
練習の成果もあって、1軍再昇格後は3度のバント機会で全て成功させている。「一回、ファームに落ちてから1軍上がってきて、全部成功できているのは自分の自信にもなっています。バントは100%決まるものではないので、もし失敗した時に、自分に戻って来られるところがあるように、という練習をしてきた。もしこれから失敗したとかでも、自分の中でしっかりもう一回、戻るところがあるという意味では、すごく良い練習期間だったかなと思います」
失敗を糧にはい上がってきた背番号54。1点を守り切るための守備はもちろん、最終盤の戦いでは1点をもぎ取るための攻撃でも献身していく。