伊藤大海 サヨナラ勝ちを呼んだ129球の熱投 「粘り強さは気迫から」頭に浮かんだ恩師の言葉
気迫のこもったピッチングでチームのサヨナラ勝ちを呼び込んだ伊藤=撮影・宮永春希
■パ・リーグ22回戦 ソフトバンク0-1日本ハム(8月24日、エスコンフィールド北海道)
これぞエースのピッチング!
これぞエースの投球だ! 日本ハムの伊藤大海投手(27)が2連勝で迎えたソフトバンクとの天王山第3ラウンドに先発し、9回129球を投げて7安打無失点。道産子右腕が気迫のこもったピッチングで、チームのサヨナラ勝ちを呼び込んだ。
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「自分の勝ち星以上にうれしい1勝」
「こういうヒリヒリするような展開で回してくれたことをすごくうれしく思いますし、チームとしても意味のある大きな1勝だと思いますし、自分の勝ち星以上にうれしい1勝だったかなと思います」
モイネロとの5度目のマッチアップ
一回、先頭打者・周東から三振を奪い、ほえる伊藤
相手エース・モイネロとは今季5度目の投げ合い。前回対戦の10日は、8回1失点で完投負けを喫していた。
「きょうは1人で投げ抜くつもりだった」。初回から飛ばした。一回、先頭の周東を見逃し三振に仕留めると、「もう自然と出てきた」と、ほえた。
アクシデントも乗り越えた
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しびれる投手戦を展開。八回途中、カーブを投げたところで右手中指がつり、いったんベンチに下がったが、再びマウンドへ。「ここまで来たら気持ちでいくしかないと」と腹をくくった。
八回1死、手当てのため、一時ベンチに引き揚げる伊藤
激闘のマウンドで思い出した言葉
脳裏に浮かんだのが、大学時代の恩師の言葉だった。「大学の監督の大滝さんの〝粘り強さは気迫から〟が、ポンと頭に出てきました」。伊藤の母校でもある北洋大は、今年度限りで休部することが決まっている。つい最近、北海道六大学野球秋季リーグ戦に向けた指揮官の記事を目にする機会があった。
大学時代、いつもその言葉をかけられていた。「それしか言われていなかったですね。技術のこととかはあまり言われなかった。〝粘り強さは気迫から〟って。大学の時は、なかなか点取ってもらえなかったので(笑)」と懐かしそうに振り返った。
両親の目の前で貫禄のパフォーマンス
七回2死二塁、海野から三振を奪い、感情を爆発させる伊藤
この日は、本拠地に集まった3万5874人の大歓声が背中を押してくれた。その中には、両親の姿もあった。故郷の鹿部町から、車で片道4時間ほどかけて応援へ駆け付けていた。
プロ1年目から、仕事の合間を縫って球場で声援を送ってくれている。日帰り弾丸スケジュールも多く、ナイターの日は自宅到着が深夜0時を過ぎる。父・清光さんは、たこつぼ漁師。帰宅が午前3時近くになり、少し仮眠を取って、海に出ることもあった。今季はまだ、両親の前で白星を見せられず、伊藤はもどかしい思いを抱えていた。
家族に見せることができた愉しむ姿
「間違いなく今までの野球人生でなかなかないくらいの愉しいゲームだった。試合前の雰囲気も含めて、しびれる愉しい一日でした」
自身に勝ち星はつかなかったが、マウンドで愉しんでいる姿を見せられたことが何よりの親孝行となったはずだ。
九回を無失点に抑えてベンチに戻る伊藤=撮影・小田岳史