攻撃的サッカー実現へ、求められるパスの質《河合CRC竜の眼》
掲げる哲学の認識の違いによる決断
長崎戦の敗戦を受けて岩政監督の解任が決まった。初めてサッカークラブを運営する石水社長にとって、重大かつ勇気のいる決断だったと感じる。プレーする選手や見る人が楽しめる攻撃的サッカーをフィロソフィーに掲げるクラブと、岩政前監督の認識との間に生じたズレが、今回の監督交代の決定打となった。
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短期的に見れば、このタイミングでの交代に様々な意見が出ることは当然だ。しかし、中長期的な視点でクラブ強化を図るならば、現場とフロントの認識に違いがあってはいけない。時間が経つほど、方向性のズレは大きくなっていくものだから。今はクラブの判断を信じてJ1昇格のためにできること、柴田新監督のサポートに全力を注ぐ時だ。
監督交代がもたらすもの
私自身も現役時代にシーズン途中の監督交代を経験している。札幌では10年前にバルバリッチ監督から四方田監督へ体制が変わった。勝たせてあげられなかったのは選手の責任であると痛感し、その事実を重く受け止めたことを思い出す。初めての経験となった選手も数多くいる。あらためてプロの世界の厳しさを感じていることだろう。
ときに監督交代は起爆剤となり得る。今まで出番が少なかった選手には可能性が生まれ、このタイミングで結果を残せば一気にレギュラーを獲得することもできる。秋田戦では実際に荒野や田中宏らがチャンスを与えられた。ベテラン若手は関係なく、サッカー選手として1つの転機と捉えてもらいたい。
新任の柴田監督は、長くミシャさんの取り組みを見てきた人物だ。岩政監督時代も頻繁に練習場へ足を運んでいたと聞くから、2人の良いところを継いでくれると期待している。
確かな収穫があった秋田戦 ピッチを広く使うことで垣間見えたサッカー
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その初陣となった秋田戦は0-2の敗戦となったが、確かな収穫はあった。前半は相手の速いスライドに苦しめられながらも、後半はビルドアップで優位性を持ってボールを運び、必ずミドルサードまでいける雰囲気が漂っていた。選手同士の距離感、ボールをもらう角度は明らかに向上している。立ち位置など細かな部分に改善の余地はあるが、ピッチの幅を広く使うことでスペースを空け、縦や斜めのパスを入れるという目指すサッカーは垣間見えた。
ヒントとなるのは宮澤の動き
収穫と課題は表裏一体で、ミドルサードからの工夫は物足りなかった。ビルドアップの先のイメージを共有することは本当に難しい。課題解決のヒントとなるのは宮澤の動きだろう。彼はボールが出てこなくても、相手を縦に引っ張るフリーランを愚直に実行していた。西野も同様に、左サイドを駆け上がりPAまで走るシーンがあった。オフザボールの動き次第で相手DFは戸惑い、守備陣は間延びする。相手を崩すフリーランの回数を増やし、より多くのチャンスを創出したい。
感じてほしいワンプレーの重み
攻撃的サッカーを実現するためには、さらなるパス精度の向上が求められる。秋田戦で印象に残ったのは、田中宏が左サイドから抜けてスパチョークにパスを送ったシーンだ。右アウトからのパスは、スパチョークの逆足方向に送られ、1度相手に奪われてしまった。
最終的にシュートで終わってCKを獲得したが、スパチョークが欲しかった右足にパスを出せば、また違った未来があったはずだ。今の札幌は受け手の考えをくみ取り、イメージを具現化するためのパスが少ない。自分が出したいパスよりも、相手が欲しいパスを出す。その重要性を再認識してもらいたい。
たった1本のパスミスが失点に繋がり、次節はメンバー外になり、そのまま戦力外になる選手を何人も見てきた。ときに自分のサッカー人生を変えてしまうこともあるワンプレーの重みをしっかり感じながら、日々の練習に取り組むべきだ。質と精度を高めるための近道は存在せず、トレーニングだけが上達を促してくれる。とことんまでパスの質を追求してほしい。
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