士別翔雲2年ぶり4強でエスコン一番乗り エース大橋広翔148球完投&V打【北北海道大会】
2試合連続完投を果たし、感極まって号泣した士別翔雲エース・大橋広(右から2人目)=撮影・西川薫
■全国高校野球選手権北北海道大会第3日(7月14日、旭川スタルヒン)
▽準々決勝 士別翔雲5-4旭川龍谷
エースが投打に大車輪
士別翔雲が、エース大橋広翔(3年)の投打に渡る大車輪の活躍で、旭川龍谷との激しいシーソーゲームを制した。2年ぶりの4強入りを決め、準決勝と決勝が行われる北広島・エスコンフィールド北海道行きの切符をつかみ取った。大橋広は1点ビハインドの八回1死一、三塁で、決勝の右越え逆転2点二塁打を放ち、投げても2試合連続完投。名寄支部悲願の甲子園に、また一歩近づいた。
最後の打者打ち取りその場で号泣
マウンドのエースは、すでに限界を超えていた。渾身の力を振り絞った148球目で最後の打者を打ち取ると、その場に崩れ落ちて号泣した。「本当に苦しかったので、本当に良かったなっていう気持ちが一番」。試合後のあいさつでは、喜ぶ仲間と対照的に、号泣する姿にこの試合にかけていた思いがあふれ出ていた。
旭川龍谷に勝利し、喜ぶ士別翔雲ナイン。中央は先発完投した大橋広=撮影・小川泰弘
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中2日での登板。1回戦の釧路江南戦の反省を生かし、より安定した投球をするために、ノーワインドアップからセットポジションに変更した。しかし初回に先制点を奪われるなど、満足のいく投球ではなかったが「どうにか変化球と真っすぐをうまく使いながら、高めに浮かないようにだけを気をつけて投げました」。最少失点差で食らいついた。
主導権が何度も入れ替わる、非常にメンタルが揺さぶられる展開だったが、エース右腕に動揺はなかった。「こういう展開になるのは分かっていたけど、取られてもみんなが打ってくれると信じていたので、一人一人抑えていこう」と、バックを信じて、打者を打ち取ることに集中した。
足がつらないように ベンチもアシスト
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ベンチの〝アシスト〟もあった。1点リードの六回2死一塁。渡辺雄介監督(43)は、疲労度の濃かったマウンドの大橋広へ、ベンチから水分補給に走らせた。それは八回、九回にも。「足がつったらもう投げられなくなるので、それだけはないように。試合進行上、ちょっと迷惑をかけてしまいましたが、そういう工夫をさせてもらいました。こういう展開になったら、勝っても負けても大橋で、ってことで。ちょっと彼には酷だったと思いますけど」。追いついても、勝ち越しても、粘る旭川龍谷打線に対して、七回辺りから右足ふくらはぎは悲鳴を上げたが、勝利への強い思いが体を突き動かした。
力投する士別翔雲の大橋広=撮影・熊谷洸太
気負いすぎずリラックスして打席へ
最後は、自らのバットで、苦しい戦いに終止符を打った。「ずっと三振、三振で、タイミングが合ってない、と思ったので、足を上げずに、タイミングをしっかり合わせた。野手も前に来ていたので、しっかり芯を食えば間を抜けていくかなって。後ろにもバッターがいる、と思って、気負いすぎずリラックスして入りました」。二塁に到達すると、三走に続き、勝ち越しの一走が一気に生還。「『頼む』っていう気持ちでずっと見てたんですけど、ホーム踏んだ瞬間、本当に喜びが大きかった」。二塁塁上で何度もガッツポーズを繰り出した。
八回1死一、三塁、逆転の2点適時二塁打を放つ士別翔雲の大橋広(右)
2年前は旭川明成戦でエスコン初アーチ献上
昨年の北大会は決勝まで全試合が旭川スタルヒンで開催されたが、今年は2年ぶりに準決勝と決勝がエスコンで行われる。大橋広は1年生ながら、準決勝の旭川明成戦に登板し、エスコン初アーチを献上した。この日の旭川市内の最高気温は34度。「緊張していたので、記憶はあまりないんですけど、きょうがだいぶ暑かったので、これよりは涼しいのかな。どちらが上がってきても、まずはあそこ(エスコン)にある忘れ物をしっかり取り返したい」。未熟だった1年生投手は2年を経て、絶対的なエースへと成長した。まずは初の決勝進出、そして悲願達成のその時まで、大橋広がマウンドに立ち続ける。