《岩本勉のガン流F論》大記録に迫った北山 大先輩のようなやり直しに期待
■セ・パ交流戦3回戦 日本ハム4-1巨人(6月19日、東京ドーム)
思い通りの投球をさせなかった打線
大記録を逃したものの、北山のピッチングに尽きる。投手戦も予想されたゲーム。まずは打線に触れたい。二回2死から先制点を奪った。三回には2本のタイムリーと犠飛で3点を追加した。打線は好投手の山崎に思い通りのピッチングをさせなかった。あっさり攻撃が終わったのは山崎がマウンドを降りた後の六回と九回のみだった。
十分すぎる援護 足技も披露
決まりはしなかったが、四回にはダブルスチールも仕掛けた。存分に、嫌らしい日本ハムの野球を見せつけた。打線は前日からクリーンアップがそっくり入れ替わるなど大幅に変更された。そんな中でもマルティネスが振れば当たる状態で、チームを盛り上げ、攻撃に〝ゆとり〟を持たせた。
となれば、この日の北山。序盤の4得点はほぼダメ押しと言ってもいいほどの援護となった。
大記録よりもチームの勝利を優先させたピッチング
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北山。実際にパーフェクトも見えていた。すべての球種は素晴らしく、インサイド、アウトサイドともに出し入れは完璧だった。七回2死から3番の泉口に四球を与えたのだが、このフォアボールも良かった。四球が良かったというのは変な言い方ではあるが、フルカウントからの7球目。しっかりと厳しいコースを狙えていた。パーフェクトという記録にこだわらず、勝つための投球を最優先させていた。
その後の4番・吉川を落ち着いて右飛に打ち取り、九回1死から大城に一発を食らった後も、動揺することなく2者を抑え込み、試合を終わらせた。
大記録をあと一歩で逃したトレンディーエース
大記録こそ逃したが、北山は大投手への道を確実に歩んでいる。あと一歩で快挙に手が届かなかった北山の姿に、日本ハムOBの西崎幸広さんが見せた意地を思い出した。私も公私ともにお世話になった大エースだ。
1995年4月22日の西武戦。舞台は東京ドームだった。西崎さんは七回を終えてノーヒットピッチング。迎えた八回、先頭のデストラーデの飛球を中堅手の大貝が見失い、三塁打にしてしまった。その後、西崎さんはリズムを乱し、3ランを浴びて八回途中3失点で降板。チームは延長十二回の末に3-3で引き分けた。
3カ月後に達成したノーヒットノーラン
ただ、西崎さんは、やり直しのノーヒットノーランを達成した。この年の7月5日。同じ西武を相手に、同じ東京ドームでノーヒットノーランを成し遂げたのだ。めちゃくちゃかっこいいやんか! センターを守っていた大貝はこの年、プロ2年目だった。若手野手をも救ったやり直しの無安打無得点ゲームだった。
この試合で、大いに刺激を受けた私も、7月14日にプロ初勝利を完投で飾らせてもらった。この日も相手は西武で、しかも東京ドームだった。
かっこいいピッチャーにならなアカンで!
北山よ、こんな高いレベルの試練は、なかなかないだろう。あなたなら、できる! かっこいいピッチャーにならなアカンで!