《岩本勉のガン流F論》見事だった山県のプロ初本塁打。目線がブレない打撃姿勢は右のイチロー
■セ・パ交流戦2回戦 阪神4-5日本ハム(6月4日、エスコンフィールド北海道)
最高の出来だった田中正義
好ゲームの中に多くのトピックスが存在した。まずは投手陣。2人のリリーバーに触れたい。ラスト九回のマウンドに上がった田中正義は文句の付けようのないピッチングを披露した。私がこれまで見てきた中で、最高の出来。田中正義史上で最高のクローザーがそこにいた。
1球で追い込んだ守護神
打者3人に対して、いずれもファーストピッチがファーストストライクで、1球で追い込んだ。1球で追い込むとはどういうことか。各バッターは初球を見て思っただろう。「これは、追い込まれたらやばい」と。その時点ですでに優位に立っている。気持ち的には打者を追い込んでいるということだ。それだけ一つ一つのボールは指にかかり、体重が乗っていた。「日本ハムの守護神=田中正義」をあらためて示した。
「あるべき姿」を見せつけた道産子右腕
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もう一人の投手は玉井。前日、最大の武器でもあるシュートを投げることなく、大山に勝ち越し弾を浴びていた。一夜明けての第2戦。5-2の六回1死一塁で加藤貴の後を受けてマウンドに上がった。
最初に向き合ったのは大山。女房役の伏見も分かっていたはずだ。初球からシュートの連投。この「あるべき姿」が新たな発見も呼び込んだ。カウント2-2からの5球目。サイン違いで玉井が投じたのは内角のスライダー。空振り三振に切って取った。大山の腰は引けていた。シュートでインコースを突き続けたからこその反応。右打者への内角スライダーでも勝負できる。そう再認識したことだろう。
キャンプ時から一変 増したミート力
さて、打者ではやはり山県。勝利打点にもなった勝ち越し2ランはプロ初本塁打となった。その姿に打者としての成長を見た。キャンプで目にしていた時から一変。右足体重で、しっかりとブレずにスウェーしながら力強く打ちにいく姿がそこにはあった。右のイチローとでも表現すべきか、目線がまったくブレることなく、ミート力が増している。
期待できる「1番・ショート山県」
前を打つ松本剛もことごとくヒットで出塁した。打席直前に目から入る情報もプラスに作用。バッティングのコツをつかみつつあるのではないか。あのミート力を見せられたら、「1番・ショート山県」も思い描きたくなる。
ただ、勘違いはしてもらいたくない。ヒット、ヒット、ヒットの延長が本塁打。それは本人も分かっているはずだ。
試合を左右した価値ある一発
一方、阪神ベンチでは、先発した門別とキャッチャーの梅野に厳しい言葉が飛び交っていただろう。阪神にしてみれば、同点に追い付いた直後。しかも2死から松本剛にヒットを許し、山県に勝ち越し2ランだ。それほど、試合を左右する価値ある一発だったということだ。