《岩本勉のガン流F論》タクよ、北の大地の代打の神様になれ! 重ね合わせた大島康徳さんの姿
■セ・パ交流戦1回戦 広島6-2日本ハム(6月13日、エスコンフィールド北海道)
仕留めきれなかったエースのピッチング
仕留めきれずに困っていたエースの姿がそこにはあった。伊藤のことだ。顕著だった2つのシーンがある。まずば四回。2死を取った後に2本の三塁打と内野安打で2点を奪われた。もう一つは七回。直前の六回裏に0-3から水谷の一発で反撃ののろしを上げたのだが、こちらも2死から失点した。放送席から不用意な一球を危惧する発言をさせてもらった直後、大盛に一発を食らった。そこから連続四死球、2点タイムリーと一気に攻め立てられた。
積極的休養も必要
ボール自体も好調時には及ばなかった。ただ、相手のエース・森下は10安打を許し、3四死球を出した中でも133球の完投勝利。粘り負け、投げ負けと言わざるを得ない。
梅雨の時期に入り、疲れがたまる時期でもある。もし、目の前に伊藤がいたなら、言いたい。ジョギングとキャッチボールだけで1週間を過ごし、次のマウンドに備えてみては、と。積極的休養も長いシーズンを考えれば必要だろう。
大きな価値がある九回の1点
この記事は有料会員限定です。
登録すると続きをお読みいただけます。
さて、敗れはしたが、九回に1点を返した。3連戦を考えた上で大きな価値がある。しかもこの日、1軍に上がってきたばかりの野村ジェイ、中島のタク、田宮が打った。収穫と言えよう。
百戦錬磨の背番号9は適任
そして強く思ったことがある。タクよ、北の大地の代打の神様になってみないか! 今、誰がこのポジションを務められるだろうか。百戦錬磨のタクしかいない。彼は決して代走要員、守備固めだけで終わるプレーヤーではない。
なんと言っても三振が少ない。粘って粘って三遊間、またはセンター前に運ぶ姿が目に浮かぶ。この日も九回1死一塁で遊撃へ内野安打。ベンチの盛り上がりは相当だった。
忘れられない1994年の記憶
プロ5年目の1994年、私はまだ先発ローテーションに定着しておらず、中継ぎでの登板が多かった。その年、日本ハムの代打1番手は大島康徳さんだった。結果的にこのシーズンを最後にユニホームを脱いだ。
静まりかえるミラールームで見た光景、聞いた音
ある日の東京ドームでの試合。リリーフ登板していた私がミラールームで回またぎに備えて座っていた。そこにやってきたのが大島さん。ビハインドの試合で終盤に差しかかっていた。今でもその迫力ある光景が、静まりかえった室内に響く音が、脳裏に焼き付いている。
「ギュギュっ」。バットを握る。「ブンっブンっ」。鏡越しに素振りを繰り返す。大島さんの顔は熱気で赤らみ、首には汗がしたたる。当たり前のように球場へと出て行く。次の瞬間、監督が「代打・大島」を告げる。私によく言った。「ガン、辛抱しとけよ。絶対にどうにかしてやるからな」と。
タク、君ならできるで!
大好きな兄貴の姿を中島に重ね合わせる。タク、君ならできるで!