【スマイルジャパン五輪最終予選へ】(後編) 攻撃の要・FW志賀紅音「他の人は持ってない力」
スウェーデンから苫小牧の日本代表合宿に合流したFW志賀紅=撮影・西川薫
姉との連続五輪出場を目指す志賀紅
女子アイスホッケー五輪最終予選グループGが2月6日に苫小牧・nepiaアイスアリーナで開幕する。4大会連続5度目の出場を狙う世界ランク7位の日本代表〝スマイルジャパン〟は、グループGで中国(同12位)、フランス(同13位)、ポーランド(同20位)の3カ国と対戦する。苫小牧市内で事前合宿を行ったスマイルジャパンの注目選手へのインタビュー後編は、帯広出身で攻撃の要・FW志賀紅音(23)。22年北京五輪代表では2大会連続出場となった姉のDF葵(25)と共に姉妹で初出場。五輪後、北米や欧州に渡って磨き抜いた得点力で、攻撃陣の中心を担う。
【スマイルジャパン五輪最終予選へ】(前編)
合宿中盤の1月28日、代表23人最後のピースがようやく合流した。昨年12月の4カ国トーナメントでは、デンマーク、ハンガリー、フランスとの3試合で志賀紅は2ゴール、2アシストで最多ポイント賞を獲得。8年前の最終予選はメンバーに入れず、スタンドから応援することしかできなかったが、今は違う。初めての最終予選も「(北京)オリンピックも経験して、海外でもプレーしてきているので、他の人は持ってない力をここで発揮して、日本のスコアに貢献できたら」。スマイルジャパンのエースとして4大会連続出場をけん引する。
初五輪2G1Aも力不足痛感し北米へ
初出場の北京大会では、グループリーグ初戦のスウェーデン戦で初アシストをマークすると、2戦目のデンマーク戦では五輪初ゴール。グループ首位で迎えた準々決勝のフィンランド戦では0-1から同点ゴールを挙げた。5試合で2ゴール1アシストも、自身は力不足を痛感していた。「オリンピックで全然、結果を残せなかったというか、海外の選手との差をすごく感じた。欧州か北米で迷ったけど、ホッケーが盛んな北米でやりたい」と海を渡り、23年11月に北米のプロリーグPWHL・オタワ(カナダ)に移籍した。
海外修行で大きく成長した日本のエース・志賀紅=JIHF photo by 永山礼二
北米のリーグで学んだもの
移籍当初は、プレースタイルに苦戦した。日本はパスホッケーが主体ということもあり、「パックを持ったらすぐシュートを打つだったり、ゴールに向かうのがすごい大事になってくるので、そこの対応が難しかった」。24年5月のシーズン終了後、契約は更新されなかったが、「自分の意見をもっと前面に出してプレーするのは北米の経験から学んだ」と収穫はあった。出場時間は少なかったが、世界最高峰のプレーヤーたちからシュート力を認められ、「いろんな選手からすごく褒められた。そこから自信にもつながりましたし、自分より上手な選手に言われると、モチベーションも上がった」という。
さらに欧州も経験したことで身につけたホッケーIQ
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出場機会を求め、今季からスウェーデンSDHLのルレオに移籍。北京大会までスマイルジャパンの主将を務めた大沢ちほ(32)が18年から3季プレーした強豪クラブだ。「日本よりもレベルの高いホッケーなので、そこでプレーすることによって、体の強さやプレーの判断は上がってきた。北米ではパスよりシュートホッケーが大きくて、そこで1年間プレーしてシュートの大切さや、体の強さも学ぶことができている。スウェーデンは、日本に近いパスホッケーをする国なので、パスのレベルも上がったと思うし、変わらず体の強さを求められてくるので、いろんな国でプレーすることによって、ホッケーIQを身につけられた」。外国籍選手にも互角に戦えるような体つきとなって、日本に帰ってきた。
環境や文化の違う土地で支えられた
ルレオは北緯65度に位置するスウェーデン北部の町。「オーロラが結構、見られます。本当に寒いときはマイナス20度ぐらい。顔だけ出してても、顔だけ寒い」。極寒の町だが、ホッケー熱は驚くほど高い。「街の中でも男子の試合だと毎試合満席になるくらい。5000人、6000人くらい。町のどこに行ってもルレオのマークはありますし、声を掛けていただいたり、環境的にもすごい良いところ」。近隣の町には日本人も20~30人ほど在住しており、「試合にも見に来てくれたりしますし、その方の家に行ってご飯をいただいたりとか、すごい優しくて、いろんなことをサポートしていただけているので、そこはすごいありがたい環境」。遠くの地で同じ日本人に支えられ、寂しさに襲われることもなくホッケーに集中できている。
スマイルジャパンの攻撃の要となる志賀紅=JIHF photo by 永山礼二
姉とはあうんの呼吸
次こそ氷上のホットラインで結果を出す。スマイルジャパンには、志賀姉妹のほかにも、山下光&栞、野呂里桜&莉里ツインズと3組の姉妹がメンバー入りしている。姉妹それぞれのホットラインがあるが、志賀の姉妹同士が絡んでゴールにつなげたことはまだない。だが、姉のプレーは誰よりも熟知している。「姉のプレーは見てなくてもどこにいるのとか、パスくれるんだろうなあって感じるので、そこはあうんの呼吸じゃないけど、良いプレーにつながっている」と手応えを感じている。
さらに「(姉との)仲は良い。離れているけど悪いプレーとか自分が困ったこととかあればすぐ相談できて、良いアドバイスをもらえている。ポジションも違うので試合中にそんなに話すことはないけど、ピリオド間だったり、一緒に出てて困ったことがあればすぐ相談できる」と一番の理解者でもある。次こそ姉からのアシストでゴールに叩き込み、勝利に貢献するつもりだ。
連続出場のバトンをつなぐ
最終予選は独特の雰囲気だ。初戦のフランス戦(6日)を落とすと、状況的に追い込まれ、挽回するのも難しくなってくる。それでも「私は緊張するタイプでもないので、今はもう本当に楽しみな気持ちでいっぱい。4年に一度の大舞台ということで、特別な大会でもありますし、女子は先輩がソチからずっと出場してきて、ずっとオリンピックに出場し続けないといけない。絶対に出場権を獲得したい」と、一戦一戦に集中していく。連続出場のバトンを、ここで絶やすわけにはいかない。
リンクで笑顔を見せる志賀紅=JIHF photo by 永山礼二